[0001]本発明は、セラミックシート及びその製造方法に関する。
[0002]セラミックは、耐熱性、耐摩耗性等の機械的性質に加えて電気的、磁気的特性、さらには生体適合性等にも優れたものであることから、多くの分野で広く活用されている。中でもジルコニアを主体とするセラミックは、優れた酸素イオン伝導性を有しているので、固体酸化物形燃料電池の固体電解質として有効に活用することができる。
[0003]セラミックシートの製造方法として一般的に実施されている方法は、例えば以下の通りである。まず、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを、ドクターブレード法等によってシート状に成形する。次に、シート状成形物を乾燥して長尺のグリーンシートを得る。次に、この長尺のグリーンシートを切断して所定のサイズを有するグリーンシートを作製する。そして、このグリーンシートを焼成する方法である。
[0004]グリーンシートを焼成する際には、炉を効率よく使用し、かつ電力コストを抑えて量産化するために、一般に、棚板(セッター)の上に複数のグリーンシートを重ねて配置し、その状態でグリーンシートを焼成する方法が用いられている。
[0005]複数のグリーンシートが互いに接した状態で重ね合わされ、その状態で焼成されると、焼成後にシート同士が強固に付着して剥がれない、又は剥がそうとすると割れてしまうという問題が発生する。特に、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを基材フィルムとして用い、その基材フィルム上に原料スラリーを塗工して成形する方法によって得られたグリーンシートにおいては、その基材フィルムに接していた表面が平滑となる。したがって、グリーンシート同士を、基材フィルムに接していた表面を介して重ね合わせる場合には特に、焼成後のシート同士が強固に付着してしまう。
[0006]そこで、例えば特許文献1には、グリーンシート同士を重ね合わせる際に、グリーンシート同士が直接接触しないように、グリーンシート間に離型粉末として無機粉末を散布して、介在させるセラミックシートの製造方法が開示されている。
[0007]特開平3-60469号公報
[0008]しかし、特許文献1に記載の従来の方法のように、離型粉末としての無機粉末をグリーンシート間に介在させる場合、焼成後に、無機粉末を除去するためにシートを1枚ずつ洗浄する必要がある。一般的には、付着している粉末を機械的に取り除き、超音波等を用いて水で洗い流したのちに乾燥させる必要があり、そのための装置を用意しなければならない。したがって、このような作業は、手間がかかると同時に、製造するセラミックシートが薄膜シートの場合には当該作業中にシートが割れて歩留りを低下させる要因となっている。
[0009]そこで、本発明は、工程の簡略化及びコスト低減が可能であり、且つ十分な曲げ強度を有するセラミックシートを得ることができるセラミックシートの製造方法、並びに当該製造方法により製造可能なセラミックシートを提供することを目的とする。
[0010]上記事情に鑑み、本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、以下の[1]~[9]に示す発明を完成させた。 [1] 複数の粒子を有する主面を備えるセラミックシートであって、 複数の粒子痕の平均幅が0.2~50μmであり、且つ、シート厚さ方向に沿った平均深さが0.1~25μmであり、 複数の粒子痕の幅の変動係数は、0.23以上である、セラミックシート。 [2] 複数の粒子痕のうち一部の粒子痕の内面が湾曲面であり、 複数の粒子痕のうち別の一部の粒子痕の内面の少なくとも一部には、凹凸が設けられる、[1]に記載のセラミックシート。 [3] 複数の粒子痕のうち少なくとも一部の粒子痕の最大幅は、シート厚さ方向において主面よりもその底側に位置する、[1]又は[2]に記載のセラミックシート。 [4] 複数の粒子痕の一部は、互いに重なり合うもしくは互いに接する、[1]~[3]のいずれか一に記載のセラミックシート。 [5] 複数の粒子痕の深さの変動係数は、0.25以上である、[1]~[4]のいずれか一に記載のセラミックシート。 [6]複数の粒子痕のうち一部の粒子痕の深さは、0.05~0.4μmであり、 複数の粒子痕のうち別の一部の粒子痕の深さは、0.8~6μmである、[1]~[5]のいずれか一に記載のセラミックシート。 [7] グリーンシートの少なくとも一方の面に、平均粒径0.1~50μmの有機粒子を付着させる工程と、 有機粒子を付着させたグリーンシートを複数用意し、複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする工程と、 該積層体の状態でグリーンシートを焼成する工程と、 を有する、セラミックシートの製造方法。 [8] 基材フィルムの一方の面に、平均粒径0.1~50μmの粒子を付着させる工程と、 基材フィルムにおける粒子を付着させた面に、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを塗工し、得られた塗膜を乾燥及び剥離し、グリーンシートを得る工程と、 当該グリーンシートを複数準備し、複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする工程と、 当該積層体の状態でグリーンシートを焼成する工程と、 を有する、セラミックシートの製造方法。 [9] 有機粒子又は粒子の形状が球状である、[7]又は[8]に記載のセラミックシートの製造方法。
[0011]本発明によれば、工程の簡略化及びコスト低減が可能であり、且つ十分な曲げ強度を有するセラミックシートを得ることができるセラミックシートの製造方法、並びに当該製造方法により製造可能なセラミックシートを提供できる。
[0012]図1は、グリーンシートの一態様を示す模式断面図である。 図2(a)は、第1の実施形態に係るグリーンシートに有機粒子が付着している状態を示す概略拡大端面図であり、図2(b)は、図2(a)にて破線で示された領域の拡大図であり、図2(c)は、図2(a)にて一点鎖線で示された領域の拡大図である。 図3は、第2の実施形態に係るグリーンシートに粒子が付着している状態を示す概略拡大端面図である。 図4(a)は、第1の実施形態に係るセラミックシートの一部を示す概略拡大端面図であり、図4(b)は、図4(a)にて破線で示された領域の拡大図であり、図4(c)は、図4(a)にて一点鎖線で示された領域の拡大図である。 図5は、第2の実施形態に係るセラミックシートの一部を示す概略拡大端面図である。 図6(a),(b)は、セラミックシートの一部を示すSEM画像である。 図7(a),(b)は、セラミックシートの一部を示す断面SEM画像である。 図8は、印刷されたグリーンシートの一部を示す断面SEM画像である。
[0013]以下、本発明の一実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[0014]<第1の実施形態のセラミックシートの製造方法> 第1の実施形態のセラミックシートの製造方法は、 グリーンシートの少なくとも一方の面に、平均粒径0.1~50μmの有機粒子を付着させる工程と、 有機粒子を付着させたグリーンシートを複数用意し、複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする工程と、 該積層体の状態でグリーンシートを焼成する工程と、 を有する。
[0015]かかる製造方法によれば、グリーンシートの少なくとも一方の面に有機粒子由来の粒子痕が形成される。このため、複数のグリーンシートを直接重ね合わせた積層体の状態で焼成されても、焼成後にシート同士を比較的容易に剥がすことができる。また、有機粒子は、グリーンシートを焼成する際に焼失するため、焼成後に粒子を除く手間を省くことができる。さらに、本実施形態の製造方法は、グリーンシートに有機粒子を付着させるという、非常に簡単な処理を実施するだけであり、この処理によって得られるセラミックシートの特性が大きく変化することもない。したがって、本実施形態の製造方法は、従来の製造方法で得られるセラミックシートの特性を大きく変化させることなく、工程の簡略化及びコスト低減を実現できる。
[0016]以下、第1の実施形態のセラミックシートの製造方法について詳細に説明する。
[0017](グリーンシートの準備) 本工程では、グリーンシートを準備する。準備するグリーンシートは、特に限定されないが、例えば、以下の方法で得られるものを使用できる。すなわち、グリーンシートは、基材フィルムの一方の面に、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを塗工し、得られた塗膜を乾燥及び剥離することにより得ることができる。
[0018]図1は、上記の方法で得られるグリーンシートの一態様を示す模式断面図である。図1におけるグリーンシート1は、基材フィルムと接していた第1表面1aと、基材フィルムと接していた表面とは反対側の第2表面1bとを有する。これらの表面のうち、基材フィルムと接していた第1表面1aは、その反対側の第2表面1bよりも、平滑な表面である。
[0019]原料スラリーは、例えば、セラミック原料粉末及びバインダーを、溶剤と混合することによって調製できる。
[0020]原料スラリーは、通常の方法、例えばドクターブレード法、押出成形法又はカレンダーロール法等により、基材フィルム上に塗工することができる。
[0021]基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。基材フィルムとして長尺のものを用いると、長尺のグリーンシートを得ることもできる。長尺のグリーンシートは、所定のサイズに切断した後に次の工程に供してもよく、長尺のグリーンシートを切断することなく、次の工程に供し、その後所定のサイズに切断してもよい。
[0022]グリーンシートのサイズ及び厚さは、製造目的のセラミックシートのサイズ及び厚さと、焼成による収縮率とを考慮して決定され得る。本実施形態の製造方法で用いられるグリーンシートは、例えば、最終的に得られるセラミックシートが5~200cm 2 の面積を有し、かつ50~300μmの厚さを有するように、その大きさ及び厚さを決定してもよい。
[0023]セラミック原料粉末は、製造目的のセラミックシートに応じて適宜選択することができる。例えば、ジルコニア、アルミナ、セリア、チタニア、シリカ、ムライト、コージェライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルシアン、エンスタタイト、窒化アルミニウム及び窒化珪素等の種々のセラミックが使用できる。
[0024]製造目的のセラミックシートが、例えば固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と記載する。)の固体電解質として用いられる電解質シートである場合は、セラミック原料粉末には、電解質シートを構成する固体電解質材料の原料が用いられる。この場合、例えば、ジルコニア系セラミックを原料として用いることが好ましい。具体的には、MgO、CaO、SrO及びBaO等のアルカリ土類金属酸化物;Sc 2 O 3 、Y 2 O 3 、La 2 O 3 、CeO 2 、Pr 2 O 3 、Nd 2 O 3 、Sm 2 O 3 、Eu 2 O 3 、Gd 2 O 3 、Tb 2 O 3 、Dy 2 O 3 、Ho 2 O 3 、Er 2 O 3 及びYb 2 O 3 等の希土類元素酸化物;並びに、Bi 2 O 3 及びIn 2 O 3 等の酸化物、から選択される少なくともいずれか1種を安定化剤として含有するジルコニアが例示できる。さらに、その他の添加剤として、SiO 2 、Ge 2 O 3 、B 2 O 3 、SnO 2 、Ta 2 O 5 及びNb 2 O 5 から選択されるいずれかの酸化物が含まれていてもよい。これらの中でも、より高レベルの酸素イオン伝導性、強度及び靭性を確保する上で好ましいのは、スカンジウム、イットリウム、セリウム、ガドリニウム及びイッテルビウムからなる群より選ばれる少なくともいずれか1種の希土類元素を、酸化物換算の合計量で8~15モル%の割合で含む安定化ジルコニアである。
[0025]この他、固体電解質材料の原料として、CeO 2 又はBi 2 O 3 に、CaO、SrO、BaO、Y 2 O 3 、La 2 O 3 、Ce 2 O 3 、Pr 2 O 3 、Nd 2 O 3 、Sm 2 O 3 、Eu 2 O 3 、Gd 2 O 3 、Tb 2 O 3 、Dr 2 O 3 、Ho 2 O 3 、Er 2 O 3 、Yb 2 O 3 、PbO、WO 3 、MoO 3 、V 2 O 5 、Ta 2 O 5 及びNb 2 O 5 等から選択される少なくともいずれか1種を添加した、セリア系又はビスマス系の酸化物を用いることもできる。また、LaGaO 3 等のガレート系の酸化物を用いることもできる。
[0026]グリーンシートの作製に用いられるバインダーの種類には制限がなく、従来のセラミックシートの製造方法で公知となっている有機バインダー及び無機バインダーの中から適宜選択できる。
[0027]有機バインダーとしては、エチレン系共重合体、スチレン系共重合体、アクリレート系及びメタクリレート系共重合体、酢酸ビニル系共重合体、マレイン酸系共重合体、ビニルアセタール系樹脂、ビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルアルコール系樹脂、エチルセルロース等のセルロース類及びワックス類等が例示される。これらの中でもグリーンシートの成形性及び/又は強度、特に量産のために大量焼成するときの熱分解性などの点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等の炭素数10以下のアルキル基を有するアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の炭素数20以下のアルキル基を有するアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するヒドロキシアルキルアクリレート又はヒドロキシアルキルメタクリレート類;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアミノアルキルアクリレート又はアミノアルキルメタクリレート類;アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、モノイソプロピルマレート等のマレイン酸半エステル等のカルボキシル基含有モノマー等の中から少なくとも1種を重合又は共重合させることによって得られる、数平均分子量が20,000~200,000、より好ましくは50,000~100,000のアクリレート系及びメタクリレート系共重合体が好ましい。これらの有機バインダーは、単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。特に好ましいのは、イソブチルメタクリレート及び/又は2-エチルヘキシルメタクリレートを60質量%以上含むモノマーの共重合体である。
[0028]無機バインダーとしては、例えば、ジルコニアゾル、シリカゾル、アルミナゾル及びチタニアゾル等から選択される少なくともいずれか1種を使用することができる。
[0029]原料スラリーにおけるセラミック原料粉末とバインダーとの質量比は、特には限定されない。セラミック原料粉末100質量部に対して、例えばバインダーは5~30質量部であってよく、10~20質量部であってもよい。バインダー量は、原料粉末の粒子径、製造目的のセラミックシートに要求される強度及び柔軟性等を考慮して、適宜選択することができる。
[0030]原料スラリーに用いられる溶剤の種類には制限がなく、従来のセラミックシートの製造方法で公知となっている溶剤の中から適宜選択できる。例えば、水;エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、1-ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、等の中から適宜選択した溶剤を、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜混合して使用してもよい。溶剤の使用量は、グリーンシート成形時における原料スラリーの粘度を考慮して適宜調節すればよく、例えばスラリー粘度が1~20Pa・s(10~200ポイズ)、好ましくは1~5Pa・s(10~50ポイズ)の範囲となるように調整するのがよい。
[0031]原料スラリーには、必要に応じて、分散剤、可塑剤、潤滑剤、界面活性剤及び/又は消泡剤等がさらに添加されてもよい。例えば分散剤は、セラミック原料粉末の解膠及び/又は分散を促進するために添加される。分散剤としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アンモニウム等の高分子電解質;クエン酸、酒石酸等の有機酸;イソブチレン又はスチレンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩あるいはアミン塩;ブタジエンと無水マレイン酸との共重合体及びそのアンモニウム塩、等が例示される。例えば可塑剤は、グリーンシートに柔軟性を付与するために添加される。可塑剤としては、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル類;フタル酸ポリエステル類;プロピレングリコール等のグリコール類;グリコールエーテル類、等が例示される。
[0032](有機粒子の付着) 本工程では、グリーンシートの少なくとも一方の面に、有機粒子を付着させる。有機粒子を付着させるグリーンシートの面は、第1表面であってもよく、第2表面であってもよく、両面であってもよい。これらの中で、焼成後のセラミックシートをより剥がれやすくする観点から、より平滑な第1表面に有機粒子を付着させることが好ましい。本実施形態では、グリーンシートの少なくとも一方の面に、有機粒子を、粒子痕が残るように付着させる。
[0033]グリーンシートに有機粒子を、粒子痕が残るように付着させる方法としては、特には限定されないが、例えば、有機粒子をバインダー及び溶剤と混合してスラリーを調製し、これをグリーンシート上に塗工(印刷)する方法、有機粒子をグリーンシート上に配置した後に、プレスシート等を用いて押圧し押し込む方法、グリーンシートの表面を溶剤等で湿潤させた状態の上に有機粉を散布する方法、溶剤に分散させた有機粉を、スプレー等でグリーンシート表面に散布する方法等が挙げられる。
[0034]スラリーをグリーンシート上に塗工する方法としては、通常の方法、例えばスクリーン印刷法、スロットダイコーター、リップコーター、グラビアコーター等を適用することができる。
[0035]スラリーに用いるバインダーとしては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの中で、エチルセルロース又はブチラール樹脂が好ましい。 スラリーに用いる溶剤としては、特に限定されないが、例えば、α-テルピネオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート(ブチルカルビトールアセテート)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、イソボルニルアセテート等が挙げられる。 スラリーには、その他、分散剤、レベリング剤、粘性調整剤等が加えられてもよい。
[0036]有機粒子の材質は、特に限定されないが、より効率的にグリーンシートに粒子痕を残すことができる観点から、高い硬度を示す有機粒子が好ましい。好適な有機粒子の具体例としては、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。なお、ポリ(メタ)アクリレート樹脂としては、例えば日本触媒社製エポスター、綜研化学株式会社製MX80H3wT等を用いることができる。これらの粒子は、単独の品種で、あるいは複数の品種を混合して用いることができる。
[0037]有機粒子の平均粒径は、0.1~50μmである。これにより、得られるセラミックシートの曲げ強度を低下させることなく、且つ焼成後にシート同士を比較的容易に剥がすことができる。有機粒子の平均粒径の下限は、0.5μm以上であると好ましく、1μm以上であるとより好ましく、1.5μm以上であると更に好ましい。有機粒子の平均粒径の上限は、30μm以下であると好ましく、20μm以下であるとより好ましく、10μm以下であると更に好ましい。なお、本明細書中、粒子の平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定により得られた粒度分布から求められる、体積累積が50%に相当する粒径(d50)のことである。粒子の平均粒径は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920(株式会社堀場製作所製)を用いて測定することができる。
[0038]有機粒子の形状は、特に限定されないが、球状であると好ましい。グリーンシートに付着する有機粒子の少なくとも一部は、凝集されてもよい。すなわち、グリーンシートの少なくとも一方の面には、複数の有機粒子から構成されるクラスタが付着してもよい。
[0039](積層体の形成) 本工程では、上述の方法で有機粒子を付着させたグリーンシートを複数用意し、それら複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする。
[0040]グリーンシート同士を重ね合わせる際のグリーンシートの向きは特に限定されないが、有機粒子を付着させた面と有機粒子を付着させていない面が互いに隣接するように重ね合わせることが好ましい。すなわち、有機粒子を付着させた面が第1表面である場合には第2表面と隣接するように重ね合わせることが好ましく、有機粒子を付着させた面が第2表面である場合には第1表面と隣接するように重ね合わせることが好ましい。特に本実施形態の製造方法によれば、平滑な第1表面を処理しない場合であっても、有機粒子を付着させた第2表面と隣接させることにより、焼成後のセラミックシートを剥がれやすくすることができる。
[0041]なお、グリーンシート同士の付着をより高度に防止するために、グリーンシート上に更に有機粉末を散布して、重ね合わせたグリーンシート間に介在させることが好ましい。なお、有機粉末としては、例えば、天然有機質粉末、もしくは、メラミンシアヌレート等の昇華性樹脂粉末などの合成有機樹脂粉末等を使用できる。中でも特に好ましいのは、小麦粉、トウモロコシ澱粉(コーンスターチ)、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉質粉末である。好ましい有機粉末の使用量は、グリーンシート面積に対して、0.005~2mg/cm 2 程度である。
[0042]積層体は、例えばセッター上に、グリーンシートの第1表面及び第2表面がセッターの表面に沿う向きに配置される。積層体において重ね合わされるグリーンシートの枚数は、特に限定されないが、例えば2~40枚であり、好ましくは3~20枚である。セッターには、セラミックシートを作製する際に用いられる公知のセラミックセッターが使用できる。
[0043](グリーンシートの焼成) 本工程では、積層体の状態で、グリーンシートを焼成する。具体的な焼成の条件は特には制限されず、グリーンシートを焼成する公知の方法を用いることが可能である。すなわち、グリーンシートに用いられている原料に応じて適切な温度条件及び時間条件を選択して、目的とする結晶構造を有する焼結体が得られるように加熱焼成すればよい。一例として、グリーンシートからバインダー及び溶剤等の有機成分を除去するために、まず、150~600℃、好ましくは250~500℃で5~80時間程度、グリーンシートを熱処理する。次いで、空気雰囲気下もしくは低酸素濃度雰囲気下で1000~1800℃、好ましくは1200~1600℃で2~10時間程度グリーンシートを焼成してもよい。
[0044]焼成後の積層体からセラミックシートを1枚ずつ剥がすことにより、セラミックシートが得られる。本実施形態の製造方法によれば、セラミックシートを破損させることなく、1枚ずつのシートに分けることが可能である。
[0045]<第2の実施形態のセラミックシートの製造方法> 第2の実施形態のセラミックシートの製造方法は、 基材フィルムの一方の面に、平均粒径0.1~50μmの粒子を付着させる工程と、 基材フィルムにおける粒子を付着させた面に、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを塗工し、得られた塗膜を乾燥及び剥離し、グリーンシートを得る工程と、 当該グリーンシートを複数準備し、複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする工程と、 当該積層体の状態でグリーンシートを焼成する工程と、 を有する。
[0046]かかる製造方法によれば、基材フィルムに付着させた粒子由来の粒子痕がグリーンフィルムの表面に形成される。このため、複数のグリーンシートを直接重ね合わせた積層体の状態で焼成されても、焼成後にシート同士を比較的容易に剥がすことができる。さらに、本実施形態の製造方法は、基材フィルムに粒子を付着させるという、非常に簡単な処理を実施するだけであり、この処理によって得られるセラミックシートの特性が大きく変化することもない。したがって、本実施形態の製造方法は、従来の製造方法で得られるセラミックシートの特性を大きく変化させることなく、工程の簡略化及びコスト低減を実現できる。
[0047]以下、第2の実施形態のセラミックシートの製造方法について詳細に説明する。
[0048](粒子の付着) 本工程では、基材フィルムの一方の面に、粒子を付着させる。粒子は、無機粒子であっても有機粒子であってもよいが、有機粒子であると好ましい。有機粒子としては、上述の平均粒径0.1~50μmの有機粒子を好適に用いることができる。無機粒子としては、例えば、平均粒径0.1~50μmのアルミナ粒子、シリカ粒子、カーボン粒子等を用いることができる。粒子の形状は、特に限定されないが、球状であると好ましい。基材フィルム上の粒子の少なくとも一部は、凝集されてもよい。すなわち、基材フィルムの一方の面上には、複数の粒子から構成されるクラスタが付着してもよい。また、これらの粒子は単独の品種で、あるいは複数の品種を混合して用いることができる。
[0049]基材フィルムに粒子を付着させる方法としては、特に限定されないが、例えば、粒子をバインダー及び溶剤と混合してスラリーもしくは希薄な懸濁液を調製し、これを基材フィルム上に塗工(印刷)する方法、コーティングする方法、散布する方法等が挙げられる。バインダー、溶剤等としては、第1の実施形態における有機粒子の付着において例示したもの等を用いることができる。なお、本実施形態の製造方法においては、必ずしも基材フィルムに粒子痕が残るように付着させる必要はなく、次の工程において原料スラリーを塗工する際に、付着した粒子が基材フィルム上に残っていればよい。
[0050]粒子として有機粒子を適用した場合は、次の工程で塗膜を剥離する際に、有機粒子は基材フィルム上に残っていても、グリーンシート上に転写されてもよい。有機粒子がグリーンシート上に存在しても、焼成の際に消失して、これを除く手間が発生しないためである。一方、粒子として無機粒子を適用した場合は、次の工程で塗膜を剥離する際に、無機粒子が基材フィルム上に残るように、無機粒子を基材フィルム上に付着させる必要がある。
[0051](グリーンシートの作製) 本工程では、基材フィルムにおける粒子を付着させた面に、セラミック原料粉末及びバインダーを含む原料スラリーを塗工し、得られた塗膜を乾燥及び剥離し、グリーンシートを得る。本工程は、原料スラリーを基材フィルムにおける粒子を付着させた面に塗工する以外は、第1の実施形態におけるグリーンシートの準備と同様の方法を適用することができる。
[0052](積層体の形成) 本工程では、上述の方法で作製したグリーンシートを複数用意し、それら複数のグリーンシートを直接重ね合わせて積層体とする。
[0053]グリーンシート同士を重ね合わせる際のグリーンシートの向きは特に限定されず、基材と接していた面同士が隣接しても、基材と接していた面とは反対側の面同士が隣接しても、基材が接していた面と基材と接していた面とは反対側の面とが隣接してもよい。これらの中で、基材が接していた面と基材と接していた面とは反対側の面とが隣接するように全てのグリーンシートを重ね合わせる態様、すなわち基材が接していた面、又は基材と接していた面とは反対側の面のいずれか一方のみを上面としてグリーンシートを積層する態様が好ましい。それ以外の条件は、上述の第1の実施形態の積層体の形成と同様の条件を適用することができる。
[0054](グリーンシートの焼成) 本工程では、積層体の状態で、グリーンシートを焼成する。焼成の条件は、第1の実施形態のグリーンシートの焼成と同様の条件とすることができる。
[0055]焼成後の積層体からセラミックシートを1枚ずつ剥がすことにより、セラミックシートが得られる。本実施形態の製造方法によれば、セラミックシートを破損させることなく、1枚ずつのシートに分けることが可能である。
[0056]<グリーンシート> 本実施形態のグリーンシートは、少なくとも一方の表面に、平均粒径0.1~50μmの粒子(有機粒子)由来の粒子痕を有する。本実施形態のグリーンシートは、少なくとも一方の表面に、幅が0.5μm以上50μm以下であり、深さが0.2μm以上25μm以下である凹部が形成されたものであってもよい。このような凹部はグリーンシート全体に形成されていることが好ましい。
[0057]これらのグリーンシートは、例えば、上述の第1の実施形態における有機粒子の付着又は第2の実施形態におけるグリーンシートの作製の工程で作製できる。かかるグリーンシートによれば、適切なサイズの粒子痕又は凹部が形成されているので、当該グリーンシートを直接重ね合わせた積層体を焼成しても、焼成後にシート同士を比較的容易に剥がすことができる。
[0058]次に、図2(a)~(c)を参照しながら、第1の実施形態における製造方法にて製造されるグリーンシートの構造例を説明する。図2(a)は、第1の実施形態に係るグリーンシートに有機粒子が付着している状態を示す概略拡大端面図である。図2(b)は、図2(a)にて破線で示された領域の拡大図である。図2(c)は、図2(a)にて一点鎖線で示された領域の拡大図である。図2(a)~(c)に示されるように、グリーンシート1の第1表面1aには、複数の有機粒子10が付着している。複数の有機粒子10は、第1表面1a上において不規則に配置されている。第1の実施形態では、各有機粒子10の一部は、グリーンシート1に埋め込まれるが、これに限られない。
[0059]図2(b)に示されるように、複数の有機粒子10は、単独の品種からなる、あるいは複数の品種を混合したものである。いずれの場合であっても、複数の有機粒子10は、例えば互いに異なる大きさ(粒径)の有機粒子を含む。また、複数の有機粒子10は、互いに同じ大きさ(粒径)の有機粒子も含み得る(図2(a)を参照)。複数の有機粒子10のうち最小の有機粒子の粒径は、例えば0.2~1μmであり、複数の有機粒子10のうち最大の有機粒子の粒径は、例えば50~100μmである。また、複数の有機粒子10のうち比較的小さい有機粒子の粒径は、例えば2~5μmであり、複数の有機粒子10のうち比較的大きい有機粒子の粒径は、例えば10~15μmである。複数の有機粒子10の平均粒径は、上述した通りである。例えば、グリーンシート1の第1表面1aを溶解等によって柔化させることによって、有機粒子10の質量にかかわらず、有機粒子10がグリーンシート1に埋め込まれやすくなる。これにより、後に説明するセラミックシートの表面積を良好に向上できる。
[0060]図2(c)に示されるように、複数の有機粒子10のクラスタ11も、第1表面1aに付着している。クラスタ11の少なくとも一部は、グリーンシート1に埋め込まれている。クラスタ11がグリーンシート1に埋め込まれる場合、後に説明するセラミックシートの表面積を良好に向上できる。加えて、一部の有機粒子10においては、その大半がグリーンシート1に埋め込まれてもよい。後に有機粒子10を除去する観点から、各有機粒子10の一部は、グリーンシート1から露出することが好ましい。グリーンシート1に対する有機粒子10の埋没度合いは、互いに異なってもよい。例えば、互いに同じ大きさ(粒径)を有する2つの有機粒子10の埋没度合いもまた、互いに異なってもよい(図2(a)を参照。)
[0061]次に、図3を参照しながら、第2の実施形態における製造方法にて製造されるグリーンシートの構造例を説明する。図3は、第2の実施形態に係るグリーンシートに粒子が付着している状態を示す概略拡大端面図である。図3に示されるように、グリーンシート1には、複数の粒子20が付着している。複数の粒子20は、第1の実施形態と同様に比較的小さい粒子と、比較的大きい粒子とを含む。複数の粒子20は、グリーンシート1内において不規則に配置されている。第2の実施形態では、各粒子20の大部分が、グリーンシート1の第1表面1aに埋め込まれる。第2の実施形態では、複数の粒子20において基材フィルム(不図示)に接触していた箇所以外は、グリーンシート1によって覆われる。このため第2実施形態においても、各粒子20の大半がグリーンシート1に覆われ、且つ、各粒子20の一部は、グリーンシート1から露出する。
[0062]<セラミックシート> 実施形態のセラミックシートは、複数の粒子痕を少なくとも一方の面に有し、当該粒子痕の平均幅が0.2~50μmであり、且つ平均深さが0.1~25μmである。また、本実施形態のセラミックシートは、少なくとも一方の表面に、平均粒径0.1~50μmの粒子(有機粒子)由来の粒子痕を有するものであってもよい。
[0063]これらのセラミックシートは、例えば、上述の第1の実施形態又は第2の実施形態のセラミックシートの製造方法により製造することができる。かかるセラミックシートによれば、適切なサイズの粒子痕が形成されているので、グリーンシートを直接重ね合わせた積層体を焼成しても、焼成後にシート同士を比較的容易に剥がすことができる。
[0064]セラミックシートにおける粒子痕は、シート厚さ方向から見た場合の粒子痕の形状が円形であると好ましく、また内面が湾曲面であると好ましい。このような粒子痕は、上述のセラミックシートの製造方法において球形の粒子を用いることにより形成することができる。なお、粒子の平均粒径が小さい場合、例えば1.5μm未満である場合には、球形の粒子を用いたとしても、粒子痕の形状が円形又は粒子痕の内面が湾曲面とならないこともある。この場合でも、セラミックシートにおける粒子痕の平均幅が0.2~50μmであり、且つ平均深さが0.1~25μmであるとの要件は満たす。
[0065]セラミックシートにおける粒子痕の幅は、例えばシート厚さ方向から見た粒子痕の最大幅に相当するが、これに限られない。粒子痕の幅及び深さは、例えばレーザー顕微鏡を用いて測定される。例えば、まず、セラミックシートの表面における所定領域に存在する全ての粒子痕に対して、超深度カラー3D形状測定顕微鏡等を用いて、当該所定領域の画像を撮影する。次に、当該画像を形状解析して、上記所定領域における粒子痕の形状プロファイルデータを作成する。次に、当該形状プロファイルデータを用いて、各粒子痕の幅及び深さを算出する。そして、この算出結果から、粒子痕の平均幅及び平均深さを算出する。算出の効率化等の観点から、粒子痕の幅は、円相当径としてもよい。なお、上記所定領域は、セラミックシートの中心を含む領域でもよい。
[0066]粒子痕の幅及び深さの測定方法の具体例を以下にて説明する。まず、上記顕微鏡などにて撮影したセラミックシートの表面画像(XY軸に相当)と、粒子痕の形状プロファイルデータ(Z軸に相当)とを、複数の粒子痕の中心を通るラインをベースラインにして重ね合わせる。そして、撮影画像における粒子痕の最外周輪郭部と、上記形状プロファイルデータとの交点を通る面を、基底面と設定する。基底面における粒子痕の最外周輪郭の形状から、粒子痕の基底面形状を特定する。基底面形状を円と特定できる粒子痕に対しては、当該粒子痕の幅は、その最外周輪郭と、上記形状プロファイルデータとの2つの交点間距離とする。基底面形状を円と特定できない粒子痕に対しては、当該粒子痕の幅は、まずその面積を測定もしくは算出する。そして、当該面積が円と仮定した場合の半径を算出する。この半径を2倍したものを、基底面形状を円と特定できない粒子痕の幅とする。一方、粒子痕の深さは、上記形状プロファイルデータにて上記ベースラインから最も低い点までの法線距離とする。
[0067]次に、図4(a)~(c)を参照しながら、第1の実施形態における製造方法にて製造されるセラミックシートの構造を説明する。図4(a)は、第1の実施形態に係るセラミックシートの一部を示す概略拡大端面図である。図4(b)は、図4(a)にて破線で示された領域の拡大図である。図4(c)は、図4(a)にて一点鎖線で示された領域の拡大図である。図4(a)~(c)に示されるように、セラミックシート30の主面30aには、複数の粒子痕31が設けられる。複数の粒子痕31は、シート厚さ方向から見て不規則に配置される。セラミックシート30が例えばSOFC用の電解質シートである場合、主面30a上には、電極用の導電層等の薄膜が形成され得る。なお図示はしないが、シート厚さ方向において主面30aと反対側に位置する別の主面にも複数の粒子痕が設けられてもよいし、当該別の主面には粒子痕が設けられなくてもよい。
[0068]複数の粒子痕31には、複数種類の粒子痕が含まれる。例えば図4(b)に示されるように、複数の粒子痕31は、比較的小さい幅W1を有する痕32と、比較的大きい幅W2を有する痕33とを含む。痕32,33のそれぞれは、単一の有機粒子10を型として形成される凹部である(図2(b)を参照)。シート厚さ方向から見て、痕32,33の形状は円形であり、且つ、痕32,33の内面は湾曲面であるが、これに限られない。図4(b)において互いに隣り合う痕32,32の最短距離SDは、例えば0.1μm未満である。痕32,33の幅は、シート厚さ方向においてその底から主面30aにかけて徐々に広がっていく。痕32の幅W1は例えば1.5~3μmであり、痕33の幅W2は例えば7~12μmである。痕32,33の幅W1,W2のそれぞれは、主面30aにおける幅(最大幅)に相当する。また、シート厚さ方向において、痕32の深さDE1は例えば0.05~0.4μmであり、痕33の深さDE2は例えば0.8~6μmである。
[0069]図4(b)において互いに隣り合う痕32,32は互いに離間しているが、互いに接してもよいし、互いに重なってもよい。すなわち、互いに隣り合う粒子痕31同士の最短距離は0でもよい。また図示はしないが、3つ以上の粒子痕31(すなわち、複数の粒子痕31の一部)が、互いに重なり合ってもよいし、互いに接してもよい。換言すると、複数の粒子痕31に含まれる小数または多数の痕が互いに重なり合う、もしくは、互いに接することによって、合成痕が形成されてもよい。この合成痕の内面には凹凸が設けられてもよい。
[0070]例えば図4(c)に示されるように、複数の粒子痕31は、痕32,33とは異なる形状を有する痕34,35を有する。痕34は、複数の有機粒子10から構成されるクラスタ11を型として形成される凹部であり、合成痕の一種である(図2(c)を参照)。痕34の内面の少なくとも一部には、複数の有機粒子10の表面に応じた凹凸が設けられる。このためセラミックシート30の主面30aには、湾曲面である内面を有する痕32,33と、凹凸が設けられる内面を有する痕34との両方が設けられる。
[0071]痕35は、複数の有機粒子10のうちその大半がグリーンシート1に埋め込まれた球状の粒子を型として形成される凹部である(図2(c)を参照)。痕35の入口には、セラミックシート30において痕35を画成する部分によって、庇36が形成されている。また、痕35の内面は、痕32,33の内面と同様に湾曲面である。このため、痕35の断面形状は、半円形状よりも円形状に近くなっている。よって、痕32の幅は、シート厚さ方向において底から主面30aにかけて徐々に広がり、途中から徐々に狭まる。すなわち、痕35の最大幅は、痕32,33と異なり、シート厚さ方向において主面30aよりも痕35の底側に位置する。換言すると、痕35の最大幅は、シート厚さ方向において、主面30aと、痕35の底との間に位置する。例えば、痕35の最大幅W3は、主面30aにおける痕35の幅W4の1.05~3倍である。例えば、痕35が球状である場合であって最大幅W3が幅W4の1.1倍である場合、痕35は、グリーンシート1に半分以上(65%程度)が埋め込まれた有機粒子10を型として形成され、痕35が球状である場合であって最大幅W3が幅W4の3倍である場合、痕35は、グリーンシート1にほぼ全て(97%程度)が埋め込まれた有機粒子10を型として形成される。なお、痕35は、痕32,33と同様に単一の有機粒子に基づいて形成されるが、これに限られない。
[0072]上述した痕32~35等を有する複数の粒子痕31の平均幅は、例えば0.2~50μmである。加えて、複数の粒子痕31の幅の変動係数(Cv値)は、例えば0.23以上である。当該変動係数の下限値は、0.25でもよいし、0.26でもよいし、0.3でもよいし、0.35でもよい。複数の粒子痕31の幅の変動係数の上限値は特に限定されないが、例えば2でもよく、好ましくは1でもよい。また、複数の粒子痕31の平均深さは、例えば0.1~25μmである。加えて、複数の粒子痕31の深さの変動係数は、例えば0.25以上である。当該変動係数の下限値は、0.26でもよいし、0.3でもよいし、0.35でもよいし、0.4でもよいし、0.5でもよいし、0.55でもよいし、0.6でもよい。複数の粒子痕31の深さの変動係数の上限値は特に限定されないが、例えば2でもよく、好ましくは1でもよい。
[0073]複数の粒子痕31の幅の変動係数は、当該幅の標準偏差を平均幅にて除した値(幅の標準偏差/平均幅)に相当する。同様に、複数の粒子痕31の深さの変動係数は、当該深さの標準偏差を平均深さにて除した値(深さの標準偏差/平均深さ)に相当する。複数の粒子痕31の幅の標準偏差と、複数の粒子痕31の深さの標準偏差とのそれぞれは、下記式により算出できる。下記式において、σは標準偏差、xは各粒子痕の幅もしくは深さ、x ave は平均幅もしくは平均深さ、nは粒子痕の測定個数を示す。
[0074]TIFF 0007429516000001.tif 28 149
[0075]以下では、第1の実施形態における製造方法とは異なる製造方法を採用した場合、セラミックシート30が製造できない可能性がある理由を説明する。第1の実施形態における製造方法とは異なる製造方法として、スタンパ等の型を用いる製造方法(以下、比較製造方法とする)が挙げられる。上記比較製造方法においては、一般に型には規則的な凹凸が設けられるので、セラミックシートの表面には規則的な凹部が設けられる。すなわち、スタンパ等の型を用いた上記比較製造方法においては、同一形状及び同一寸法を呈する複数の凹部がセラミックシートの表面に設けられる。この場合、凹部の幅の変動係数は小さく設定される傾向にあり、例えば当該変動係数は0.10未満にもなり得る。
[0076]これに対して第1の実施形態のように有機粒子10を用いて複数のセラミックシート30を製造する場合、セラミックシート30の主面30aに設けられる複数の粒子痕31の幅の変動係数は、スタンパ等を用いた場合では通常得ることのできない値である0.23以上である。よって、複数の粒子痕31の幅の変動係数が上記範囲内であるセラミックシート30は、上記比較製造方法では得ることができず、代わりに、第1の実施形態に係る製造方法を実施することによって得られる。
[0077]次に、第1の実施形態に係る製造方法によって製造されるセラミックシート30の作用効果について、上記比較製造方法にて製造されるセラミックシートと比較しながら説明する。
[0078]上記比較製造方法にて製造されるセラミックシートの表面には、上述したように、同一形状及び同一寸法を呈する複数の凹部が設けられる。このようなセラミックシートは、特定の方向に沿った力に極めて脆弱になることがある。これに対して、第1の実施形態に係るセラミックシート30の主面30aに設けられる複数の粒子痕31の幅の変動係数は、0.23以上である。このため、セラミックシート30の主面30aには、例えば互いに大きく異なる幅を有する痕32,33等を含む複数の粒子痕31が設けられる。これにより、特定の方向に沿った力に対してセラミックシート30が脆弱になることを防止できる。加えて上述したように、第1の実施形態では、グリーンシートの表面に有機粒子を付着させるという、非常に簡単な処理が採用される。したがって、第1の実施形態においても、工程の簡略化及びコスト低減が可能であり、且つ十分な曲げ強度を有するセラミックシート30を提供できる。
[0079]また上記比較製造方法においては、セラミックシートに均一且つ微細な凹部を設けるため、精巧な加工にて得られる微細な凹凸表面を有する型が必要になる。このため、当該型の製造に要するコストは、高くなる。加えて型の材質にもよるが、当該型の表面は使用によって平滑化する。このため、上記比較製造方法にてセラミックシートを量産する場合、型の定期的な交換が必要になる。よって、上記比較製造方法は、第1の実施形態に係る製造方法よりも高コストになる傾向にある。このような観点からも、第1の実施形態に係る製造方法の実施によって、セラミックシートの量産に対するコスト低減が可能になる。
[0080]第1の実施形態では、痕32,33の内面が湾曲面であり、痕34の内面には凹凸が設けられる。この場合、特定の方向に沿った力に対してセラミックシート30が脆弱になることを良好に防止できる。
[0081]第1の実施形態では、痕35の最大幅は、シート厚さ方向において主面30aよりもその底側に位置する。この場合、痕35の入口には、セラミックシート30において痕35を画成する部分によって庇36が形成される。セラミックシート30の主面30a上に導電層等の薄膜が形成されるとき、当該薄膜を構成する材料が痕35に充填される。この場合、痕35の入口に形成される庇36によってアンカー効果が発揮されるので、上記薄膜がセラミックシート30の主面30aから剥離しにくくなる。
[0082]なお、例えば上記比較製造方法の型を用いてセラミックシートに凹部を形成する場合、仮に上述した庇に相当する構造が形成されたとしても、上記型をセラミックシートから分離するときに上記構造が崩壊してしまう。したがって上記比較製造方法を採用した場合、凹部の入口に庇を形成することは不可能と言える。また、例えば焼成にて除去されない無機粒子を用いてセラミックシートに粒子痕を形成する場合、洗浄等によって無機粒子を強制的に除去するとき、上述した庇に相当する構造が崩壊してしまう。これに対して、第1の実施形態のように有機粒子10を用いる場合、庇36として形成された部分を崩壊することなく、有機粒子10を除去できる。したがって、痕35に形成される庇36は、第1の実施形態に係る製造方法を適用することによって初めて、セラミックシート30に残存できると言える。
[0083]第1の実施形態では、複数の粒子痕31の一部は、互いに重なり合うもしくは互いに接してもよい。上記比較製造方法にてセラミックシートの表面に複数の凹部が形成される場合、複数の凹部は互いに離間する。すなわち、複数の粒子痕31のうち、互いに重なり合う、もしくは互いに接している一部の粒子痕を有し得るセラミックシート30は、第1の実施形態に係る製造方法を実施することによって得られる。
[0084]第1の実施形態では、複数の粒子痕31の深さの変動係数は、0.25以上である。このような変動係数は、上記比較製造方法のようにスタンパ等を用いた場合では通常得ることができない。すなわち、複数の粒子痕31の深さの変動係数が上記範囲内であるセラミックシート30は、第1の実施形態に係る製造方法を実施することによって得られる。
[0085]第1の実施形態では、複数の粒子痕31に含まれる痕32の深さDE1は、0.05μm以上0.4μm以下であり、複数の粒子痕31に含まれる痕33の深さDE2は、0.8μm以上6μm以下である。このように互いに大きく異なる深さを有する痕32,33を有する複数の粒子痕31は、上記比較製造方法のようにスタンパ等を用いた場合では通常得ることができない。すなわち、痕32,33を有する複数の粒子痕31が設けられるセラミックシート30は、第1の実施形態に係る製造方法を実施することによって得られる。
[0086]次に、図5を参照しながら、第2の実施形態における製造方法にて製造されるセラミックシートの構造を説明する。図5は、第2の実施形態に係るセラミックシートの一部を示す概略拡大端面図である。図5に示されるように、セラミックシート40の主面40aには、複数の粒子痕41が設けられる。複数の粒子痕41は、第1の実施形態と同様に、シート厚さ方向から見て不規則に配置される。第2の実施形態では、大半の粒子痕41(すなわち、粒子痕41の全てもしくはほぼ全て)の最大幅は、シート厚さ方向において主面40aよりも粒子痕41の底側に位置するが、これに限定されない。複数の粒子痕41の幅及び深さの変動係数は、それぞれ、第1の実施形態と同様の範囲である。
[0087]このような第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、第2の実施形態においては、粒子痕41を画成する部分の大半には、庇42が形成される。このため、例えば主面40a上に導電層等の薄膜が形成される場合、当該薄膜がセラミックシート40の主面40aからより剥離しにくくなる。
[0088]以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[0089]<実施例1> (第1例の有機粒子ペーストの調製) エチルセルロース(約49%エトキシ)10(和光純薬工業株式会社製)8.2gを、α-テルピネオール(関東化学株式会社製)73.8gに溶解し、ペースト用のバインダー溶液とした。得られたバインダー溶液82gに、有機粒子としてエポスターMA1002(日本触媒製、平均粒径2μm)40gを加え、スパチェラで混合して第1例の有機粒子ペーストを得た。
[0090](第1例のグリーンシートの作製) 原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;約0.5μm)を用いた。この原料粉末100質量部に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(数平均分子量;100,000、ガラス転移温度;0℃)を固形分換算で18質量部と、分散剤として市販のポリカルボン酸エステル型高分子分散剤2質量部と、可塑剤としてジブチルフタレート3質量部と、溶剤としてトルエン/酢酸エチル(質量比=1/1)の混合溶剤50質量部とを、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整して、塗工用の原料スラリーとした。この原料スラリーを、塗工装置内で、基材フィルムとしてのPETフィルム上に、ドクターブレード法により連続的に塗工した。同じ塗工装置内で、PETフィルム上の塗膜を100℃で約1時間乾燥して、厚さ約0.25mm、長尺の固体電解質用グリーンシートを得た。この長尺のグリーンシートをPETフィルムから剥離したのち、金型を用いた切断により、一辺約160mmの略正方形のグリーンシートを得た。このようにして得られたグリーンシートを、第1例のグリーンシートとする。なお、以下、グリーンシートにおいて、基材フィルムであるPETフィルムに接していた面、すなわちグリーンシートの第1表面を「PET面」、PET面と反対側の、基材フィルムと接していなかった面、すなわちグリーンシートの第2表面を「Air面」と記載することがある。
[0091](印刷) スクリーン印刷機(ニューロング社製:LS-150型)を用い、一辺約155mmの略正方形のパターンを有する刷板(スクリーンメッシュ:テトロン製、#500)を使って、第1例のグリーンシートのPET面に、第1例の有機粒子ペーストを印刷、風乾した。トムソン刃を用い、このグリーンシートの印刷面から、一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシートを切り出した。同様の作業により、一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシート10枚を得た。
[0092](焼成) 一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。 その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、10枚が重なったセラミックシート(ジルコニアシート)を得た。重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表1に示す。
[0093]図6(a),(b)は、セラミックシートの一部を示すSEM画像である。図7(a),(b)は、セラミックシートの一部を示す断面SEM画像である。図6(a),(b)及び図7(a),(b)に示されるように、セラミックシートの主面には、不規則に配列される複数種類の粒子痕が設けられる。図6(b)及び図7(a)に示されるように、セラミックシートの主面には有機粒子のクラスタによって形成されたと推察される粒子痕が設けられ、当該粒子痕の表面には凹凸が設けられたことが確認される。図7(b)に示されるように、一部の粒子痕の最大幅は、シート方向において主面よりもその底側に位置する。特に、図7(b)の紙面左側及び右端のそれぞれには、粒子痕にて画成される庇が設けられたことが確認される。
[0094]<実施例2> (第2例の有機粒子ペーストの調製) 有機粒子として、エポスターMA1010(日本触媒製 平均粒径10μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、第2例の有機粒子ペーストを得た。
[0095](第2例のグリーンシートの作製) 原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;約0.5μm)を用いた。この原料粉末100質量部に対し、後述のバインダー溶液117部と、分散剤として市販のポリカルボン酸エステル型高分子分散剤3質量部と、可塑剤としてジブチルフタレート6質量部とを、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を2Pa・sに調整して、塗工用の原料スラリーとした。この原料スラリーを、塗工装置内で、基材フィルムとしてのPETフィルム上に連続的に塗工した。同じ塗工装置内で、PETフィルム上の塗膜を100℃で約1時間乾燥して、厚さ約0.2mm、長尺の固体電解質用グリーンシートを得た。この長尺のグリーンシートをPETフィルムから剥離したのち、金型を用いた切断により、一辺約160mmの略正方形のグリーンシートを得た。このようにして得られたグリーンシートを、第2例のグリーンシートとする。なお、上記のバインダー溶液は、トルエン40質量部及び2-ブタノン60質量部で構成された混合溶液を室温にて攪拌しながら、この混合溶液にポリビニルブチラール系樹脂(積水化学工業社製 BL1)17質量部を徐々に加えることによって、調製された。
[0096](印刷) スクリーン印刷機(ニューロング社製:LS-150型)を用い、一辺約155mmの略正方形のパターンを有する刷板(スクリーンメッシュ:テトロン製、#500)を使って、第2例のグリーンシートのAir面に、第2例の有機粒子ペーストを印刷、熱風循環式乾燥機にて80℃で1時間乾燥した。 トムソン刃を用い、このグリーンシートの印刷面から、一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシートを切り出した。同様の作業により、一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシート10枚を得た。
[0097]図8は、印刷されたグリーンシートの一部を示す断面SEM画像である。図8に示されるように、第2例のグリーンシートの表面には、複数のサイズの有機粒子が付着していることが確認される。また、一部の有機粒子のクラスタも、グリーンシートの表面に付着していることが確認される。
[0098](焼成) 一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。 その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、10枚が重なったセラミックシートを得た。重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表1に示す。
[0099]<実施例3> 有機粒子として使用したエポスターMA1010の量を10gとした以外は、実施例2と同様にして、10枚が重なったセラミックシートを得た。重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表1に示す。
[0100]<実施例4> (第4例の有機粒子ペーストの調製) エチルセルロース(約49%エトキシ)10(和光純薬工業株式会社製)8.2gを、α-テルピネオール(関東化学株式会社製)73.8gに溶解し、ペースト用のバインダー溶液とする。得られたバインダー溶液82gに、有機粒子としてエポスターMA1010(日本触媒製 平均粒径10μm)40gを加え、スパチェラで混合して第4例の有機粒子ペーストを得た。
[0101](PETフィルムへの印刷) スクリーン印刷機(ニューロング社製:LS-150型)と、一辺約155mmの略正方形のパターンを有する刷板(スクリーンメッシュ:テトロン製、#500)を使い、160mm幅のPETフィルムを印刷ごとに送ることで、その上面に、第4例の有機粒子ペーストを印刷後、80℃の熱風室を通過させて乾燥した。
[0102](グリーンシートの作製) 原料粉末として、10モル%酸化スカンジウム1モル%酸化セリウムを固溶した安定化ジルコニア粉末(第一稀元素化学工業社製、商品名「10Sc1CeSZ」、d50;約0.5μm)を用いた。この原料粉末100質量部に対し、メタクリル系共重合体からなるバインダー(数平均分子量;100,000、ガラス転移温度;0℃)を固形分換算で18質量部と、分散剤として市販のポリカルボン酸エステル型高分子分散剤2質量部と、可塑剤としてジブチルフタレート3質量部と、溶剤としてトルエン/酢酸エチル(質量比=1/1)の混合溶剤50質量部とを、ジルコニアボールが装入されたナイロンミルに入れ、40時間ミリングしてスラリーを調製した。 得られたスラリーを、碇型の攪拌機を備えたジャケット付丸底円筒型減圧脱泡容器へ移し、攪拌機を30rpmの速度で回転させながら、ジャケット温度:40℃で減圧下に濃縮脱泡し、25℃での粘度を3Pa・sに調整して、塗工用の原料スラリーとした。 この原料スラリーを、塗工装置内で、上記で得られた有機粒子ペーストを印刷したPETフィルム上に連続的に塗工した。同じ塗工装置内で、PETフィルム上の塗膜を100℃で約1時間乾燥して、厚さ約0.2mm、長尺の固体電解質用グリーンシートを得た。この長尺のグリーンシートをPETフィルムから剥離することで、PET面側に有機粒子が埋め込まれたあるいは、有機粒子の形の凹みをもったグリーンシートが得られる。このようなPET面側に有機粒子が埋め込まれたあるいは、有機粒子の形の凹みをもったグリーンシートの部分から、金型を用いて、一辺約150mmの略正方形のグリーンシートを10枚切り出した。
[0103](焼成) 一辺約150mmの略正方形の印刷されたグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。 その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、10枚が重なったセラミックシートを得た。重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表1に示す。
[0104]<実施例5> 有機粒子として、アクリル粒子(綜研化学株式会社製MX80H3wT、平均粒径0.8μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、10枚が重なったセラミックシートを得た。重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表1に示す。
[0105]<比較例1> 第1例のグリーンシートを10枚用意した。このグリーンシート10枚を、それぞれPET面に、市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートを得た。10枚が重なったセラミックシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表2に示す。
[0106]<比較例2> 第2例のグリーンシートを10枚用意した。グリーンシートのAir面が下になるようにグリーンシート1枚をとり、その上に約0.2gのアルミナ粉(昭和電工株式会社製「AL15-2」)を落として、刷毛によりほぼ均一に塗布した。すなわち、グリーンシートのPET面に、アルミナ粉を塗布した。同様の処理を残り9枚のグリーンシートにも施した。このグリーンシート10枚を、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートを得た。10枚が重なったセラミックシートについて、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を、表2に示す。
[0107]<比較例3> (PETフィルムの粗化処理) 実施例1で基材フィルムとして用意したと同様のPETフィルムを一辺約160mmの略正方形に切断した。このフィルムの表面に、サンドブラスト処理、水洗、乾燥することで、Ra=0.6μmの表面を得た。
[0108](グリーンシートの作製) 表面をサンドブラスト処理したフィルムを10枚つなぎ合わせたものを基材フィルムとして用いた他は、実施例4と同様にして、グリーンシートを得た。このグリーンシートを、実施例4と同様に、金型を用いて、一辺約150mmの略正方形のグリーンシート10枚に切り出した。
[0109](焼成) 実施例4と同様の方法で、10枚が重なったセラミックシートを得、重なった10枚を1枚ずつに剥がす時の剥がれやすさ、粉の飛散拡散、剥がしたあとのシートの表面粗さRa及び曲げ強度を評価した結果を表2に示す。
[0110]<比較例4> まず、押圧部および基板部が樹脂製であり、押圧部の表面がフッ素樹脂でコーティングされたスタンパを準備した。押圧部には複数の突起が設けられる。各突起の形状は半球状であり、各突起の高さが15μmであり、各突起の径が30μmであり、隣接する突起頂点の間隔が60μmであった。また、第1例のグリーンシートを金型にて切断することにより、略正方形のグリーンシート(一辺約120mm)を10枚用意した。続いて、加熱テーブル上に略正方形のグリーンシート1枚とスタンパとを順に積層した積層体(加熱テーブル/グリーンシート/スタンパ)を準備した。続いて、当該積層体を圧縮成形機(神藤金属工業所製、型式「S-37.5」)のプレス部に載置した。続いて、押圧温度25℃、押圧力22.5MPa(230kgf/cm 2 )、押圧時間2秒間の条件にて、積層体を加圧した。そして、スタンパをグリーンシートから剥離することによって、陥没孔が形成されたグリーンシートを得た。
[0111]上記手法にて、陥没孔が形成されたグリーンシート10枚を準備した。続いて、それぞれのPET面に市販の食品用コーンスターチをふりかけ、刷毛でほぼ均一になるように広げながら、Air面が下になるように互いに重ね合わせて積層体を作製した。その積層体の上に、同寸法のアルミナ質多孔質板(気孔率約70%、約60g)を載せ、400℃まで熱風循環式電気炉で加熱して脱脂後、高温箱型電気炉で1350℃まで昇温してグリーンシートを焼成し、セラミックシートを得た。10枚が重なったセラミックシートについて、剥がれやすさを評価した結果を、表2に示す。
[0112][評価方法] 実施例及び比較例において、剥がれやすさ、粉の飛散拡散、表面粗さRa及び曲げ強度は以下の方法で評価した。
[0113](剥がれやすさ) 10枚が重なっている焼成後のセラミックシートを手で剥がして、シート同士の剥がれやすさ(剥離性)を以下の5段階で評価した。 A:シート同士が付着しておらず、ほとんど自然に剥がれる。 B:シート同士が付着しておらず、容易に剥がすことができる。 C:シート同士が付着しておらず、少し力を加えて剥がすことができる。 D:ごくわずかに付着している点があり、慎重に扱えば、剥がすことができる。 E:シート同士が付着しており、剥がすことが困難。
[0114](粉の飛散及び拡散) 「剥がれやすさ」の評価後に、粉の飛散及び拡散の有無を目視にて確認した。なお、粉の飛散や拡散がある場合は、粉の洗浄が必要となる。
[0115](表面粗さRa) 焼成後のセラミックシートについて、対応するグリーンシートのPET面及びAir面に相当する表面の表面粗さRaを、触針式表面粗さ計(株式会社ミツトヨ製「サーフテスト SJ-201」、規格:JIS B0601:2001)を用いて測定した。
[0116](曲げ強度) 焼成後のセラミックシートを、高速ダイヤモンドカッターにより5mm幅、30mm長さの短冊に切り出して測定サンプルとした。この測定サンプルについて、JIS R1601:1995に準じて4点曲げ強度を測定した。すなわち、測定サンプルを、グリーンシートのAir面に相当する面を上にして、スパン30mmで配置された2本の下部支柱上に載置し、室温にて、スパン20mmで配置された2本の上部支柱から、クロスヘッド速度0.5mm/minで荷重を加えたときの、破断に至る最大応力を測定し、同JISに記載の「曲げ強さの計算」の式にしたがって求めた。
[0117](セラミックシートにおける粒子痕の幅及び深さ) 各実施例で得られたセラミックシートにおける粒子痕が残った面を、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、対物150倍)を用いて観察した。これにより、各実施例における粒子痕の幅及び深さを測定した。その結果を表1に示す。なお、実施例1及び2については、円形であり、且つ内面が湾曲面である粒子痕が観察されたが、実施例5における粒子痕は溝状であった。
[0118]加えて、各実施例及び比較例4の粒子痕の平均幅及び幅の変動係数、並びに、平均深さ及び深さの変動係数を算出した。この結果を、表1,2に示す。
[0119]TIFF 0007429516000002.tif 74 149
[0120]TIFF 0007429516000003.tif 104 149
[0121]表1から明らかであるように、実施例1~5によれば、簡便な方法で粉の洗浄を要することなく、十分な曲げ強度を有するセラミックシートを得ることができた。
[0122]1…グリーンシート、1a…第1表面、1b…第2表面,10…有機粒子、11…クラスタ、20…粒子、30,40…セラミックシート、30a,40a…主面、31,41…粒子痕、32~35…痕、36…庇。