
二大都市圏である大阪地域と東京地域を対象として,二種類の土地利用規制(床下浸水規制と床上浸水規制)を実施した場合の費用便益評価を行い,土地利用規制の適用性について検討した.その結果,両地域ともに,床下浸水規制より床上浸水規制で総便益が正になりやすく,適用性が高いと思われる結果となった.ただし,大阪地域では,再現期間が5年の降雨を基準とした床下浸水規制を実施したときに総便益が最大となったことから,比較的弱い降雨で床下浸水する領域の土地利用規制が効果的であると考えられる.東京地域では,床下浸水規制の適用性が極めて低い一方で,床上浸水規制にある程度の適用性が認められた.当該地域は,床上浸水による被害が多いと予想されることから,床上浸水を許容しない土地利用規制を実施するのが適していると考えられる.
この論文では,治水計画策定におけるいくつかの問題のうち,宝・高棹のSLSC(標準最小二乗規準)と費用便益分析に関し,現在用いられている手法の問題点を指摘し,その解を示すことを目的としている.SLSCは非常によくできた客観的規準だが,それ自体,確率変数である.つまり,サンプル数に応じて異なるSLSCの閾値を用いるべきであり,確率分布の適合度の評価結果を報告する際には,使った閾値がSLSC分布のどの程度のパーセント点にあるかを示すのがよい.また,治水経済調査マニュアルの費用便益分析法に関し,最近のソフトウェアを用いた定積分を用いる方法で算定した被害額の期待値(真値に近い)と,マニュアルに従って求めた数値積分値がかなり異なる場合があることを示す.
分布型水文流出モデルの雨量データにレーダー・アメダス解析雨量を使用した流出解析を香川県の中規模河川の綾川(流域面積約137.5 km2)を対象として行った.その結果,アメダス雨量を用いた場合と比較して,河川流量の推定精度が30~60%向上する結果が得られた.つまり,百十数km2スケールの中規模河川の流出解析において,空間高分解能の雨量データを考慮することが有用であることが明らかとなった.この改善理由は,流域内の累積雨量の減少による効果だけでなく,流域平均累積雨量の差異が小さく弱い長雨時では,1)流域平均として同量の雨が降っていても,弱い雨量の差(2~3mm)と雨量の空間分布の相違や,2)累積雨量の空間分布の差が小さくても,雨量がより多いとき(2mm/h 以上)の降雨分布の相違によることが明らかとなった.
本研究では,大阪地域と東京地域を対象として,水災害危険度に基づいて建築規制を実施した場合に生じる費用と便益を比較することで,建築規制の利害得失や適用性について検討した.その結果,いずれの地域においても,今回検討した範囲では建築規制の総便益は正となり,建築規制は水防災対策として一定程度の適用性を有していること,大阪地域のほうが東京地域より建築規制の総便益が大きくなり,比較的少ない負担で効果的に水災害被害額を減少させうることが明らかとなった.さらに,同じ地区を規制対象とする建築規制と土地利用規制を比較したところ,建築規制のほうが土地利用規制より総便益が若干大きいか同程度となることがわかった.このことから,建築規制は床下浸水を許容する土地利用規制とほぼ同程度の適用性を有していると考えられる.
土砂を輸送してきた流れが透水性の高い平地上に流入すると,そこには扇状地にも似た堆積地形が形成される.本研究では,このような堆積地形の形成過程を数値的に再現することのできる解析モデルを構築することを目的とする.ここでは,地形の縦横断勾配の影響を合理的に考慮した掃流砂量の評価方法と,斜面崩落モデルとを組み込んだほか,表面流に加えて飽和・不飽和浸透流についても同時に解析することにした.この解析モデルの妥当性については,模型実験の結果とこれと同一条件下で行われた数値解析の結果とを比較することにより検討された.これにより,堆積地形の拡大が「流路の移動・消滅・再形成」のプロセスと密接に関わりながら進行することが確認されたほか,本解析によりこの過程が概ね合理的に再現できることも示された.
天竜川・遠州灘流砂系における砂移動の実態と将来変化を定量的に推定するため,天竜川中下流部を対象として,ダムおよび河道内植生の影響を考慮可能な一次元河床変動モデルを構築し,数値計算を行った.その結果の検討と土砂動態の現状把握のため,流砂系の広範囲において砂サンプリングを行い,採取した砂の供給源を調べるために,デジタル顕微鏡を利用した画像解析によって鉱物種・岩種に応じて分類した.さらに海浜における土砂移動モデルでは,汀線変化のみでなく,砂の質的変化とその広がりについても検討できるモデルを構築し,河川側で生じうる砂の質的変化に対応した将来予測を実施した.これらの検討から,天竜川・遠州灘流域における土砂動態の現状についての有益な知見と将来の見通しが得られた.
流域管理的治水対策の費用便益評価を行う枠組みの中で,世帯の所得分布を考慮できるように立地均衡モデルを拡張し,これを用いて寝屋川流域における土地利用規制の費用便益評価を行うとともに,土地利用規制が世帯に与える影響を所得の違いに応じて分析した.その結果,土地利用規制の影響は各所得層で異なることが明らかになった.所得に対する費用の割合は所得が低いほど大きく,低所得層の負担が大きくなることがわかった.また,再現期間で5年(時間45mm程度)相当の弱いレベルの土地利用規制で総便益が最大となり,再現期間で25年以上の強い土地利用規制を実施した場合は,費用が便益を上回る結果となった.以上より,本流域では,比較的高い頻度で浸水する地区の住宅地としての利用は避けた方がよい可能性のあることが明らかとなった.
Profiling and mooring measurements were carried out in Genka Bay, Okinawa, Japan to study the characteristics of the internal tidal current and its associated cooling system. The study results show that the depth-averaged current flows nearly parallel to the coastline. There is also an existence of a cross-shore internal tidal current according to the vertical structure of the horizontal current. This current influences on the bottom water temperature transmission from offshore to nearshore bottom water and changes the vertical temperature profile even of nearshore regions and thereby establishes a unique cooling system. Spectra of the baroclinic and bottom water temperature also congruent the internal tide based cooling system in GB.
淡塩水境界面の位置計測に対する時間領域反射法(TDR)の有効性を評価するために,48cm長プローブを用いて,その先端から境界面までの距離hiの計測の可否と精度を調べた.hiを評価するために,本法では,プローブに与えたマイクロ波ステップパルスのTDR波形が,塩水によるエネルギー吸収によって急変する特徴を利用した.水質変化を想定し,淡水の電気伝導度σfwが異なる条件でhiを評価した結果,淡水中を伝播するパルスのエネルギー損失が大きい場合,すなわちσfwが高く,淡水層が厚い場合にhi計測が困難になった.しかし,高σfw条件でも,淡水層が薄くなりエネルギー損失が抑制されると,hiは計測可能となり,測定誤差は概ね1cm未満となった.また,たとえ境界面が変動しても,静的な水理条件では同等の精度でhiを評価できることを確認した.
粒子法は複雑な自由表面の変化の追跡に適していることから,水工学分野でも有用性が示され,海岸工学においては数値波動水槽への応用も進められている.しかし計算負荷が高いため,ハードウェアへの相応の投資が必要となり,これが一般利用の障害となっている.ところで,画像処理目的に開発されてきたGPUを,一般的な学術演算の高速化に利用する取り組みが最近活発となっている.本研究では,MPS法を高速化する手段のひとつとして,CUDAによるGPU併用コードを開発した.高速化を達成するための留意点を整理し,MPS法計算コード固有の特性に適合するように移植を行った.メモリ配置の工夫に加えて,計算のコアとなる近傍粒子探索や圧力のPoisson方程式の収束計算については,GPU計算を効率化するため,特に綿密に検討した.
防波堤の被覆ブロックの被災メカニズムを解明し,被災防止のための解決策を検討することは海岸構造物の維持管理コスト削減のためには重要である.本稿では,造波水路を用いた水理実験およびMPS法とDEMの融合による数値シミュレーションの双方から,マウンド法先部に設置した被覆ブロック群の崩壊過程を検討し,被覆ブロック群崩壊のメカニズムの一端を明らかにすることを目的とする.具体的には,水理実験から観察される被覆ブロック群が崩壊に至る一連のプロセスから崩壊の因子を抽出し,その因子をパラメータとした数値シミュレーションを実施して,予測された因子の妥当性を裏付けた.
落差工の存在は周辺地形を変化させ,生物にプラス,マイナス両方の影響を及ぼす.この影響を理解すべく,複数箇所で落差工周辺の地形,流況を観測し,その特徴及び形成機構を解析した.まず,落差工はその周辺に早瀬,淵,平瀬を形成するものの,河床低下区間では淵が形成されないことを示した.また,落差工下流に淵がない場合,その下流の早瀬はアーマー化していた.一方,落差工上流の平瀬では,河道の湾曲に対応し,内岸側が堅い礫,外岸側は軟らかい砂利の河床になるという分級が生じていた.なお,淵では,垂直に落ち込む流れのため,流量が少ない時は表層のみ流れ,多い時は底層に強い流れを生じていた.この様に,落差工周辺の瀬-淵構造は,落差工の構造,河道線形,河道縦断形といった様々なスケールの因子に規定されることを示した.
沿岸海域やエスチャリーにおける密度成層乱流場を高精度かつ経済的に再現できる2次クロージャモデルを明らかにすることが本研究の目的である.このため本研究では,各種2次クロージャモデルの中でGibson and LaunderモデルならびにMellor and Yamadaモデルを対象として,両モデルの性能比較を行った.まず乱流シュミット数σtならびにPrandtl-Kolmogorov定数cμといった2つの乱流特性量の挙動に着目し,解析的なアプローチによって両モデルの比較を行った.次に,著者らの実施した室内河口密度流実験を対象として両モデルの結果の相違を明らかにした.最後に既往の知見を総括し,室内河口密度流実験を良好に再現できる乱流モデルについて考察した.
Sedimentation aspects have a major role during the design of new reservoir projects because life of the reservoir mainly depends upon sediment handling during reservoir operation. Therefore, proper sediment management strategies should be adopted to enhance the life span of reservoirs. Basha Reservoir is one of the mega water resources projects which are being planned to construct on the Indus river. Under this study, the efficiency of four sediment management strategies were evaluated by using the RESSASS model. The reservoir management strategies considered for sediment simulation of Basha reservoir include the normal operation, raising of MoL, draw-down the MoL (flushing) and controlling the sediment inflows. Under normal operation, the model predicted the life span of Basha reservoir around 55-60 years. But by raising of Mol 2.0m/year implemented after 35 years of operation may add 10-15 years more to the life-span of the reservoir. However, by adopting the flushing operation to draw-down the MoL at El.1010m initiated after 35 years of operation, it may also add about 15-20 years more. Moreover, the results obtained by considering 50% reduction in sediment inflow due to implementation of river basin management projects upstream of Basha within 30 years of reservoir operation, depicts that the life of the reservoir will be more than 100 years. It is therefore concluded that proper sediment mitigation measure can significantly enhance the life-span of planned reservoirs.
複断面蛇行河川では大洪水時の水位ピーク時に主流が内岸寄りを走り,内岸砂州が洗掘を受けるため内岸砂州上の樹木群の倒伏・流失が想定される.太田川では,河道内樹木の管理を目的とした樹木調査を行い,洪水時の水面形の時間変化を観測する準備を行ってきた.平成17年9月には,計画高水流量相当の洪水が発生し,内岸砂州上の樹木群が倒伏・流失した.本研究では,観測水面形の時間変化を用いた非定常二次元洪水流・河床変動解析により,洪水中の流れと河床変動,樹木倒伏の関係について検討した.そして,流体力と河床洗掘の観点から,砂州河床上の樹木倒伏・破壊の主な要因は河床洗掘であることを明らかにした.最後に,本調査・研究から明らかにされた樹木管理の教訓とその活用を示している.
茨城県波崎海岸に位置する波崎海洋研究施設において,直径20cmの受感球(フロート)を用いた常時観測可能な沿岸流速計を観測桟橋上に設置した.受感球は直径22mmの円柱鋼材に固定させたうえで,平均海水面下約1.2mの海中に留まらせた.この鋼材の中央付近から桟橋に向けて細いワイヤーを3方向に張り,それぞれにロードセルを接続し,受感球および海中に没している円柱鋼材に加わる力を張力として計測した.この張力の関係を解析することにより沿岸流速を算出した.沿岸流速は観測期間中,高波浪時も含めて欠測することなく計測された.また,ほぼ同地点に設置した電磁流速計の出力値を用いてその精度を検討した結果,砕波帯内での観測にも関わらず全体的に高い精度で評価できることが分かった.
一般的な洪水流量観測法である浮子観測に必要な更正係数(=水深平均流速/表層流速)の実態を把握するために,超音波ドップラー流速分布計を用いて5つの大河川の洪水流における流速鉛直分布データを数多く収集し,更正係数に関する現行の標準値や既存の理論式,実験式の適用性を調べた.流速鉛直分布や更正係数の観測値は,安芸式よりも対数分布則とより一致することが定量的に示された.我が国の更正係数の標準値は安芸式に基づいて算定されているため,観測値と標準値の整合性は低く,喫水4mの浮子に関する観測データの平均値は標準値を0.04~0.10も下回る.これには,安芸式中の流速ピークの相対水深αの設定に問題があることが示された.以上の結果に基づいて,更正係数の評価法を整理した.
本ノートでは,河川の水位を予測するためにこれまで用いられてきたNearest-Neighbor法を拡張して,より精度良く河川の水位を予測できる方法を提案する.まず本ノートの背景と目的を示し,次にNearestNeighbor法のアルゴリズムについて概説し,その後に提案法のアルゴリズムについて説明する.更に,実データを用いた実験によって得られる従来のNearest-Neighbor法と提案法の結果を比較することで,提案法の有効性を検証する.最後に,本ノートのまとめと今後の展望について示す.
The effect of surface salinity on the observation using the VHF ocean radar was investigated through the field observation in Ariake Bay. The receiving signal intensities were compared with in situ measurement of sea surface salinity of 1 m depth and wind velocity. The results show high attenuation in low salinity condition.
気候変動に対する適応策の一環として多目的ダムの治水・利水機能が注目されている.その背景の一つに,積雪寒冷地の多目的ダムでは,利水容量の確保を優先した融雪期における大雨への対応が懸念されていることがある.そこで本論文では,ダムの洪水調節機能の向上を目指し,予測雨量を利用したダムの事前放流の可能性を検討した.最初に,積算予測雨量と時系列予測雨量の精度を比較し,積算予測雨量の優位性を明らかにした.次に,積算予測雨量に基づいた事前放流方法を提案し過去の大雨を伴う融雪洪水に適用した.以上の結果,積算予測雨量の利用は融雪期のダムの洪水調節機能の向上に有効であることがわかった.さらに,融雪期の多目的ダムの管理においては,事前放流によって治水機能の向上が可能であることを示唆することができた.