
錯視現象は観察という行為を体験できる良質なコンテンツであり,小学校高学年~高等学校の理科や数学教育の体験型教育での応用の可能性をもつ.しかし,実際には授業時間の制限などから,錯視を理数系授業で取り上げることは一般的ではない.我々は,心理学実験を教育現場で実施できるように再構成し,実施した.この提案プログラムは約130分で学ぶことができる.本稿では,このプロトコルの詳細および実施例を報告する.
発達段階にあるこどもの造形教育において,造形あそびが重要視されており,幼稚園や小学校,児童館において,各種の実践が行われている.本研究では,造形あそびにより得られる造形物の画像化とそのシームレスな提示によって,造形あそびを拡張することを目指している.本稿では,文字造形あそびの拡張として実装した「もじ・モジ・じっけん」システムとそのシステムを活用した2つのワークショップの実施成果について報告する.また,これらのワークショップ内での,子供の心の動きや,システム利用状況から,システムの有効性について考察する.
不可能図形の代表例の一つである無限ループ階段を取り上げ,2次元図形としてそれが描けるための条件を明らかにするとともに,人が実際に乗って歩くことのできる3次元構造物として作る方法を提案する.不可能図形を立体化するトリックでもっともよく知られているのは,奥行き方向に不連続な構造を設けるものであるが,その方法で作った構造物は無限に歩き続けることはできない.本論文で提案する手法では,絵の中でつながって見えるところはつながったまま立体化するもので,その上を歩き続けることができる.これは,見るだけでなく参加して楽しめる大型の錯視遊具を作るための一つの方法論を提供するものでもある.
本研究は,建築家アルド・ロッシの手記における内的な設計プロセスの醸成としての設計論的発展について分析を行う.たとえばロッシは,「モデナ墓地」を設計する際に「〇△□」の図式を禅画から抽出し,建築意匠設計の形式の変化に伴う「シェマ」の変化を彼の手記『青のノート』に記していた.1972年に設計された「ファニャーノ・オローナの小学校」へと至る過程は手記でシェマの発展が段階的に記され,最初に『青のノート』11巻で初期案として現れる.この初期のスタディでは「モデナ墓地」から発展させられ,円形を頂点に置いた3本の十字をおいた配列が変容し,軸線を残して中庭が作られ,「宮殿形式」の配置が示される.その後,1972年5月-7月にかけて,ロッシが基本設計の決定案における設計シェマを確立し,初期案と決定案に「十字のシェマ」を,平面図式を変更させながらも,一貫して建築設計に適用したことが示された.