
福山市内の土壌から集積培養法によってレゾルシンを唯一の炭素源として生育する細菌5株が分離された。その中でレゾルシンに最も良好に生育するNo.138株はPseudomonas putidaと同定された。 レゾルシン酸化活性の高い菌体は硝酸アンモニウムを窒素源とした時に得られた。本菌株のレゾルシン代謝系は誘導的であり,鉄イオン添加培地で生育した菌体は培地中のレゾルシンが消費されるとレゾルシン酸化活性は急激に減少した。しかし,鉄イオン無添加培地生育菌体はレゾルシン消費後でもその活性は保持されたが,その菌体は壊れやすかった。鉄イオン存在下でレゾルシン酸化活性の高い安定した菌体は,集菌30分前に0.05%程度のレゾルシンを再添加して集菌することにより得られた。本菌株の洗浄菌体のレゾルシン代謝系はレゾルシンと窒素源存在下で誘導された。
瀬戸内海中央部,備後灘・燧灘における海産枝角類トゲナシエボシミジンコ(Evadne tergestina CLAUS)の有性生殖個体について,従来の報告よりもやや詳しく再記載した。成体オスには1対の精巣があり,輸精管を経て1対の陰茎に終る。第1胸脚内枝末端の刺毛は鋭く反曲した小鉤に変形し,その腹側にある2本の刺毛も強い鎌状剛毛に変形している。有性生殖メスは1個の大きい球形の耐久卵(休眠卵)をもち,尾爪背後方に育房に通ずる生殖孔(膣)の開口がある。これらの特徴はPodonidaeに属する他種について従来記載された点とほぼ類似しているが,若干の差も認められる。1973年9月本水域の数定点における本種の個体群全体中に占める有性生殖個体の出現率は2.7-23.3%の範囲にあり,そのうちオスが2.2-12.5%,耐久卵保有メスは0-12.4%であって,場所によりその出現率にかなりの差のあることが見出された。なお耐久卵の生産は大型のメスによって行なわれる傾向が認められる。
海域に流入したサルモネラが,どのような挙動を示すか,その動態を追究する目的で自然海水および無菌海水中でのモデル実験を行なった。 1: 自然海水中では接種したサルモネラは10℃>20℃>30℃の順に生残性を示した。 2: 無菌海水中ではサルモネラの生残性は自然海水中におけるよりも低く,しかもはっきりとした温度依存性を示さなかった。 3: 少量(<10/mlのサルモネラを接種した場合には,菌接種後,一度菌数が減少し,その後次第に増加した。 4: その場合,20℃および30℃に保持するとS.thompson単独例よりもE.coliとの混合例の方がS.thompsonの増殖する割合は低かった。 5: 海水中でのサルモネラの生残性は水温にかなり影響されることが示唆された。
濃硫酸による鋸屑の加水分解において,Odincovは機械エネルギーの効果が認めているが,木材より脱ペントーザンされたリグノセルロースを原料とし,機械エネルギーとしてボールミルを用いて試験した結果,一次反応式によく従うことを認めたが,その反応速度は使用された動力に対して極めて低く,したがって膨大なる動力費を要することになることから,工業化に対して不満足なものであるとした。 従来研究された硫酸の混合機はいづれも一長一短があり,使用硫酸の節減と取扱い易い混合機として遠心法によるものを試作し,連続の装置試験を行い,濃硫酸との混合比1:1で90%以上の還元糖収率の好結果を得た。試験装置ではアメ状の混合物が掻取羽根に付着炭化し,長期運転の支障となったが,工業装置ではアメ状混合物を直ちに落下する方式で2週間程度の連続運転を可能にした。また,熟成は従来機械的撹伴が必要とされていたが,上方式の混合の場合は撹伴は全然不要であることが認められた。
恒圧沪過の基礎試験の結果,比抵抗はgraceの加圧沪過限界以上の10^11オーダの比抵抗を圧力2~8ka/cm2で示した。したがって,リグニン炉過はフィルタプレスが至当であると結論した。 リグニンの粒子は,沈降速度の測定から算出したところ,硫酸濃度により複雑なる変化が認められた。ところが洗浄時のリパルプによる沪過の比抵抗は,第一リパルプでは初回沪過より低く,第三リパルプでは初回沪過より高い結果を得,この際の硫酸濃度をリグニン粒子の場合と比較すると,ほぼ同一の傾向がみられた。 テストプラントの試験結果では,比抵抗は硫酸混合比が支配的であり,混合比が少なくなれば,その比抵抗は増大する。また,粘度の目安として,(H2SO4%)×(還元糖%)×(平均重合度)との関係を求めたが,(H2SO4%)×(還元糖%)×(平均重合度)が10~300では粘度の変化はないが,300以上で急激に粘度が増大する。これは実用的には利用できる目安とならう。
液状食品に関する各種装置の設計ならびに操作を行なっていくためには,流動方程式を設定し,それに含まれる各種粘性パラメータを算出していくことが必要である。本研究は,加熱処理したデンプン水溶液の流動特性を,毛管形粘度計を作製して30,50および70℃において求め,流動方程式における各種粘性パラメータ算出に関する研究を行なったものである。加熱処理した3および5wt%の小麦,トウモロコシ,ジャガイモおよびサツマイモデンプン水溶液を試料とした。 流動方程式γ=(1/K)(gcτ-gcτy)nに含まれる粘性パラメータn, τyおよびKを,非線形最小二乗法を使用して算出する電子計算機プログラムを作成した。 加熱処理した3および5wt%の各種デンプン水溶液について,n, τyおよびKの値を計算した結果,n=1.2~1.4, τy≒0となり,擬塑性流体として取り扱えることが分った。n=1.3, τy=0と固定して求めたKの値は,温度の上昇ならびに濃度の減少で小さく変わり,K=Aexp(E/RgT)として表わすことができた。試料とした各種デンプン水溶液に対して,E=3~7kcal/g‐molとなる結果が得られた。 本研究成果は,流動特性が複雑な食品などの流動方程式を実験データよりシミュレーションによって得る場合に有用である。
食品のミネラルに関する一連の研究の一部として,今回は銅-ソルビット錯体について研究した結果を報告する。すなわち,CuSO4-ソルビット反応系における銅-ソルビット錯体の生成を,分光光度法と電位差滴定法で確認した。そして,この錯形成に対する,反応系の銅/ソルビット比およびPHの影響を調べ,pH12以上の強アルカリ条件下で銅3:ソルビット1の組成比を持つ錯体ができることを確かめた。さらに,この錯形成によって,アルカリ溶液中での銅イオン加水分解重合を阻止すること,およびソルビット1モルは銅3モル比までこの効果を示すことがわかった。 これらの実験結果に基づいて,銅に結合するソルビットの配位基について若干の考察を加えた。
人工乳のミネラルに関する基礎的研究に必要な研究材料となる種々の金属-アミノ酸錯体を調製してきたが,今回は,銅(II)-グリシン錯体の調製を試みたのでその結果を報告した。 銅(II)-グリシン錯体についてはこれまでに,さまざまな視点から多くの研究が行なわれている。本報では,銅(II)-グリシン錯体標品を得るためにまず銅(II)-グリシン錯体の生成条件について検討し,中性からアルカリ性域にかけて生成する銅(II)-グリシン錯体は〔Cu(II)-Gly2〕の形で存在することを分光光学的に確かめた。この他,温度,反応時間, 銅(II)/グリシン比などについても検討し,それらの結果をもとに,錯体の調製法を決めた。そしてこの方法で得られた標品は,銅(II):グリシン=1:2の組成比をもつ銅(II)-グリシン錯体であることを確認した。
各種食品の蒸煮装置を設計し,制御化などを行なっていくためには,蒸煮速度を測定し,簡単な速度式を設定していくことが必要である。既報1)において,低含水率の食品である米,うどんおよびきしめんの蒸煮速度を重量法により求め,蒸煮速度式の設定に関する研究を行なってきた。 本研究は,ジャガイモおよびサツマイモを例として,高含水率の食品の場合の蒸煮速度の測定法ならびに速度式の設定に関する研究を行なったものである。 (1) 高含水率の食品の蒸煮速度の測定に有用な衝撃貫通試験法を提案した。 (2) S型形状係数を含む簡単な速度式として提出した次に示す蒸煮速度式が,ジャガイモおよびサツマイモ簿片の蒸煮に対して利用できた。dx/dθ=kn, α(1-x)n(x+α)ここで,x(-)は蒸煮率,θ(min)は蒸煮時間であり,n(-), α(-)およびkn,α(min-1)は定数である。上式においてn=1.0とした場合のαの値は,本実験試料に対してほぼ0.1となった。
瀬戸内海で1976年2月から'77年6月までの間に採集した8標本・310尾のイシモチについて,空胃であった94尾を除き,体長が20-244mmの216尾の胃内容物を調べ,次の結果を得た。 1) 胃内に出現した生物は魚類,エビ類,端脚類,多毛類,頭足類,枝角類,カニ類,口脚類,等脚類であったが,特に多く出現した魚類とエビ類が最も重要な餌生物である。 2) 胃内容物組成は出現頻度によるとエビ類78%,魚類52%であったが,エビ類ではエビジャコとテッポウエビが特に多く,共に18%を占めた。個体数ではエビ75%(エビジャコ49%,テッポウエビ7%)魚類21%であった。 3) 胃内容物が未消化でその重量を測定することができた113尾のイシモチの重量による胃内容物組成は,魚類65%,エビ類29%(テッポウエビ20%,エビジャコ2%)であった。 4) イシモチの生長に伴う餌生物組成の変化を明らかにするために,216尾のイシモチを体長で20-59;60-99;100-129;130-169;170-244mmの5グループに区分し,各グループ間で胃内容物組成を比較検討した。出現頻度,個体数および重量は共に60-99;100-129;130-169mmの3グループ間ではほぼ類似した組成を示したが,これら3グループと他の2グループとの間には,互いに顕著な差異が認められた.すなわち20-59mmグループではエビジャコが最重要種で,出現頻度で61%,個体数で84%,重量で78%を占めた。60-169mmグループではエビ類と魚類が重要な餌生物であって,出現頻度で魚類50%,エビ類87%(テッポウエビ27%,エビジャコ12%),個体数で魚類34%,エビ類57%(テッポウエビ19%,エビジャコ6%),重量で魚類36%,エビ類53%(テッポウエビ38%,エビジャコ0.7%)を占めた。170-244mmのグループの餌生物は魚類が大部分であって,魚類は出現頻度で91%,個体数で82%,重量で94%を占めた。 5) イシモチは上述のように成長に伴って餌生物の種類をかえながら選択的にこれを捕食しているが,同時に餌生物の大きさに対しても選択的である。すなわち,大きい捕食者ほど同じ種類の餌生物の中ではより大きい個体を捕食しており,餌生物の大きさは全長で最大限,捕食者の体長の約3分の1であった。
1970年夏季に広島県福山市の御幸牧場において,全ての搾乳牛が低酸度二等乳を泌乳すると云う異常乳の集団発生がみられ,これらの乳牛はMg代謝障害による慢性の泌乳障害と骨粗鬆症に罹っていることが判った。これらの乳牛の血清像を追跡調査したところ,血清Mgは年間通じて低いが,1971年8月になり急激な血清Caと血清無機燐の低下がみられたので乳牛を診察したところ20頭の成牛のうち15頭に尿中ケント体の反応が認められ,食欲減退などの症状を伴ったケトージスの集団発生が発見された。乳牛のケトージスの原因や発生機序には不明な点が多いが,御幸牧場の乳牛群がMg欠乏の状態にあること及び糖の嫌気的及び好気的代謝においてMgが重要な働きをしている事に注目しケトージスと糖及びMg代謝の関係を検討した。すなわち,(1)ケトージスにおいてはα-ケトグルタール酸からサクシニルCoAへのTCAサイクルにおける酸化的脱炭酸反応の代謝障害が生じてサクシニルCoAが減少すると,(2)アセト錯酸からアセトアセチルCoAへの反応はサクシニルCoAの存在とこの反応に関与する酵素が必須であるので,サクシニルCoAの減少はアセト酷酸すなわちケトン体の蓄積をもたらせることになる。とくに反応(1)にはTDP, Lipoate, CoA, NAD, FADと共にMgが必要であり反応(2)の酵素3-Ketoacid transferaseは筋肉中にのみ存在することが知られているのでケトン体の消費は筋肉内においてのみ行なわれることになる。すなわちケトージスは筋肉内におけるTDP, Lipoate, CoA又はMgのいずれかの不足により酸化的脱炭酸反応の阻害とそれにひきつづいてケトン体の蓄積が生じることになる。御幸牧場の乳牛においては飼料中のMg不足によるMg代謝障害が慢性的に潜在するころに,夏季の高温により急激にMgの要求量が増加するなどの原因でケトージスが発生したものと考えられる。
既報において,殻状乾燥モデルに基づく乾燥速度式の設定について報告し3),含水スポンジを仮想食品として考えて速度パラメータを算出して,各種形状について比較検討をしてきた。4)本報は,球状の寒天とにんじんを試料として,乾燥実験を行ない,殻状乾燥モデルの適用性について検討したものである。 乾燥進行に伴なう未乾燥核の表面温度の変化を測定することが不可能であるため,試料の中心温度の測定を行なった。未乾燥核の表面温度として,中心温度と湿球温度をそれぞれ仮定した場合について速度パラメータを算出した。また,ガス境膜の拡散に関する速度パラメータhmを乾燥初期の値に固定した場合についての計算も行なった。 以上の計算結果の比較から,当面する各種の乾燥装置の設計などに対しては,反理論的とはなるが,ガス境膜および乾燥殻状部拡散に関する2つの速度パラメータhmおよびkmを相関させて非線形最小二乗法で同時計算し,未乾燥核の表面温度として湿球温度を仮定する場合が,総括的に実験データとの一致がよく,取り扱いも簡単でよいことが分った。尚,本実験条件下において,寒天およびにんじんの乾燥は,殻状部から乾燥をする現象を示したが,未乾燥核の部分の乾燥も進行していたことから殻状乾燥モデルを満足的に適用できるものではなかった。簡単な乾燥速度式を得る目的に対しては,均一乾燥モデルに基づいた乾燥速度式との比較検討も必要と考えられる。
イボイモリの発生を,イモリおよびシリケンイモリの発生と対比しながら,岡田・市川(1947)の発生段階図によって記述した。イボイモリの受精卵は径3.0mm~3.2mm。卵包は球形でゼリー質の3層からなる。動物極側は淡黄褐色,植物極側は淡黄白色。胚および幼生期の発生はシリケンイモリよりはるかに速く進行する。イモリと比べると卵割期から神経胚の初期までは発生が遅れるが,それ以後は発生が速く進む。他の2種の発生と比べて特に外観的に異なる点をあげると,(1)眼胞の輪郭および瞳の形成が遅れること,(2)平衡桿の発達が悪いこと,(3)腹部が多量の卵黄のため,尾芽期まで球形をしていること,(4)外鰓の発達が極めてよく形は櫛状であること,(5)背部の膜びれは胴部のほぼ中央から始まること,(6)後肢丘の出現が早いこと,(7)後肢2趾期頃から肋皺がみられること,(8)前肢第5指の出現が遅いこと,(9)頭部諸器官の原基の輪郭がよく目立つこと,(10)心臓部付近をおおう皮膚が大きくふくらんでいることなどである。
1970年に御幸牧場で集団発生した低酸度二等乳はアルコール試験陽性でまた熱凝固性を示し,これは'the Utrecht abnormality of milk'と同じ特微を示した。そしてまたその異常乳はCaが高くMgが低いこととイオン状Caが高い値を示した。 御幸牧場の乳牛の血清Caが高く血清Mgが低いことと全血Caが高いと云う特微がみられた。尚,全血Mgには差がみられなかった。 表 御幸牧場の乳牛群と対称牛群の血中のMg及びCaについて (単位meq/l) 御幸牧場の乳牛群の平均値: 頭数 17, 全血中のCa 3.82, 全血中のMg 1.82, 血清中のCa 4.49, 血清中のMg 1.82 対象群の平均値: 頭数 54, 全血中のCa 3.34, 全血中のMg 1.85, 血清中のCa 4.24, 血清中のMg 2.00 以上の結果から,御幸牧場の乳牛群の血清Caが高い。血清Mgが低いと云う特微とが密接に関係していると考えられる。乳牛の血清Mgが低くく血清Caが高いと云う特微はその乳牛群がMgの代謝異常かMg欠乏をともなった慢性的な泌乳障害におち入っているにちがいないと推定される。
ステアリン酸単結晶をベンゼン溶液中から育成し,結晶成長表面を光学顕微鏡と電子顕微鏡で観察し,らせん成長理論を裏付ける成長らせんを確認した。 結晶成長らせんステップはいずれも異方性を示し,単結晶外形と一致する角度をもっている。光学的に観察された成長らせんには,単一らせん,複数のらせん,反対の符号を持つ2つの転位から出発した成長らせんのつくるループなどが識別されたが,これらはいずれも,らせん成長理論の予測と一致するものであった。不純物によると思われるらせんステップの局部的な曲りが観察されたが,これは不純物効果として説明されるだろう。レプリカ法による,電子顕微鏡を用いて,成長らせん中心付近の徴視的な観察を行ったが,その結果,光学的に確認された成長らせんは,10本以上の単一らせんが束になってできたmacro-spiralに対応することがわかった。
1976年8月,岡山県水産試験場において種苗生産に関する一連の実験のために,沖出し後海面小割中で飼育されていたクロダイ(Mylio macrocephalus)幼魚に細菌性疾病と思われる流行病が発生し,約2週間の間に飼育されていた9,000尾のうち約8,000尾が死亡した。 それらの病魚には遊泳及び摂餌活動の低下ならびに体色の黒化が認められたが,そのほかの目立った病微は認められなかった。検査したほとんどの病魚の内臓諸器官から一種の非運動性細菌がほぼ純粋に分離された。 分離菌の形態学的・生理学的及び生化学的性状を調べた結果,本菌はPasteurella piscicidaに同定された。また分離菌をクロダイに接種したところ,比較的短時間で死亡せしめることも確認された。 なお,これらのクロダイが飼育されていた水域ではここ数年ハマチ養殖は行なわれておらず,また少なくとも沖出し後はこれらの魚にペレットのみを餌として与えており,今回の流行の感染源を明らかにすることはできなかった。 P. piscicidaは従来我が国ではハマチの類結節症の原因菌としてよく知られてきたが,今後はクロダイにおいても本菌感染症の発生に対する注意が必要と考えられた。
瀬戸内海の漁業資源として,かなり重要なイシモチの年令と成長を明らかにした。すなわち瀬戸内海の中部水域で漁獲されたイシモチ406個体を用い,体長,体重および生殖腺重量を測定するとともに,鱗を年令形質として鱗径および標示径を測定して,次のような結果を得た。 1) 体長と鱗径との関係は一次式(R¯=0.271L-0.176)で示され,標示の相似性が認められること,ならびに標示は一定の周期で形成されることから,鱗は年令形質として適当である。月別に求めた鱗の最終標示を基準とした辺端成長率は年2回,2,3月と7月に極小になること,さらにWALFORDの定差図の吟味から,本種は標示を年2回形成する。しかし第1標示の欠落する個体が多い。 2) 産卵期は生殖腺指数の月別変化から6月-8月で,その盛期は7月と推定される。したがって第2標示は孵化後満1年で,第4標示は満2年で,第6標示は満3年で形成される。 3) 標示別の標準標示径組成から年令別の平均体長を求めると,孵化後満1年で9.7cm,満2年で15.7cm,満3年で20.2cmとなる。そしてこれらを体長-体重の開係式(W=3.96×10-2L2.793)によって,年令別の平均体重を求めると,満1年で22.6g,満2年で86.7g,満3年で175.2gになる。 4) 以上の知見から瀬戸内海のイシモチの成長式はLt=32.6(1-e-0.307t-0.046)と表せる。そして成長量が最大を示すのは孵化後2.83年を経過した時で,その時の体長は19.5cmであり,体重は159gである。