
75 歳,女性。草刈り後に発熱,嘔吐,意識障害を認め前医に入院した。不明熱の持続,下痢,肝機能障害,血小板減少を認め,重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome:SFTS)疑いにて当院に転院。体温 40 度,全身に紅斑を認め,播種性血管内凝固症候群(DIC),血球貪食症候群/血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic syndrome/hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS/HLH)を併発していた。血清の RT-PCR にて SFTS ウイルスは陰性。日本紅斑熱を疑いミノサイクリン,パズフロキサシンを投与したところ著効した。ペア血清にて紅斑熱リケッチア抗体価は IgM 抗体,IgG 抗体ともに有意に上昇しており,日本紅斑熱と診断した。日本紅斑熱と SFTS は両者ともマダニ媒介性感染症であり,臨床的類似点が多い。本症例を踏まえ,臨床的共通点,相違点を主眼に考察した。
症例は 7 歳,女児。生下時から右側頭部に境界明瞭な 20×15 mm の卵円形の脱毛斑を認め,軟毛が生えていた。病理組織学的所見は毛包数の減少があり,毛包と脂腺の形成は未熟であった。ダーモスコピー所見では折れ毛・黒点・漸減毛はみられなかった。以上のことから側頭部三角形脱毛症(temporal triangular alopecia : TTA)と診断した。治療は局麻下で病変部を切除し,菱形皮弁により縫合した。本邦における 1979 年から 2014 年までに報告された側頭部三角形脱毛症 21 症例の集計では,性差はなく,7 割の症例で生下時あるいは生後間まもなく脱毛斑に気づいており,成人例はなかった。約半数の症例が三角形を呈しているが,楕円形や円形を示す症例も半数を占めた。脱毛斑部の毛髪の性状は記載のない 1 例を除き,本症例を含めすべての症例に軟毛がみられ,TTA の最も重要な臨床的特徴であり,診断的価値のある所見であった。
2009 年 10 月から 2014 年 2 月までに経験した指趾末節部背側の指趾粘液囊腫 116 症例,122 指趾 123 個について報告した。年齢性別,部位,爪甲の縦走陥凹・ヘバーデン結節の有無について調べた。また,穿刺排液後にテーピングによる圧迫療法を行ったので,その有用性について検討した。年齢は 28~87 歳で,平均 62.0 歳。男女比は男 48 例(40%),女 71 例(60%)であった。部位は手指 103 個,足趾 20 個で,中指が46 個と最も多く,第 5 趾には囊腫を認めなかった。爪甲の縦走陥凹,手指のヘバーデン結節の有無について,それぞれ 60 指趾,58 指で検討を行い,27 指趾(45%),23 指(40%)に認めた。テーピングによる圧迫療法の治療経過については,経過の判明した 45 指趾 45 個中,治癒が 39 指趾 39 個で治癒率は 87%であった。その治癒病変の穿刺回数は 0~19 回で,平均 2.8 回であった。また,治癒部のテーピング期間は 1 週~29 カ月で平均 4.4 カ月であった。穿刺テーピング法は,簡便で日常生活の中で行えて,低侵襲性で非常に有用な手技と考えた。また,指趾粘液囊腫の圧迫で生じる爪甲縦走陥凹は,診断と治癒判定に役立つことも強調した。