
波浪や潮流によってモノパイル式洋上風力発電設備の基部周辺に洗掘が発生すると,施設の安全性に深刻な影響を与える恐れがある.袋型根固め材とは繊維の網で石材をユニット化した資材である.防波堤や海岸堤防の侵食対策として実用化されている.本研究では袋型根固め材を用いた洗掘防止工の現地適用性と最適な敷設構造について検討した.水理模型実験は1/60縮尺で行った.無対策の実験では既往研究と同等の最大洗掘量が確認された.洗掘防止工はフィルター層の有無や複数の敷設構造について検討した.その結果,円形1層4列2層2列配置を最適な構造として提案した.モノパイル近傍の洗掘を最も抑制でき,袋型根固め材自体の耐波安定性も高められるためである.なお,この際の最大洗掘量は現地換算で0.2m以下であった.
海底付近に設置された計測器によって得られる圧力の情報から水面変動を推定し,推定された水面変動の情報に基づいて波浪観測結果が整理される.しかし,捨石マウンド上に設置された構造物,スリットケーソンの遊水室で計測された圧力情報から水面変動を推計した研究例はない.本研究では,既往の波浪観測データの整理方法に倣って,スリットケーソン内で観測された圧力データから水面波形を推定する方法について検討した.また,スリットケーソン内の推定波浪諸元と,全国港湾海洋波浪情報網(神戸港)における観測波浪諸元を比較することで,その有効性について明らかにした.
本研究では,浚渫粘土に製鋼スラグを添加・混合したスラグ混合処理土(以下,改質土)の地盤内の強度特性を把握するために,低添加率の製鋼スラグを加えた比較的低強度の改質土を対象に圧密非排水三軸圧縮試験を行い,母材の粘性土の三軸圧縮特性と合わせて評価した.なお,これら改質土は粒度から粗粒土に分類されるものであった.
近年,2050年カーボンニュートラル実現に向けた動きを受けて洋上風力発電施設の導入が活発化するとともに,発電効率の向上や経済性のより高い大型風車に関する技術開発が進んでいる.しかしながら,大規模な風車の応答特性や発電規模と風車応答の関係等についてはほとんど明らかになっていない.そこで本研究では,発電規模の異なる着床式洋上風車を対象に,波と風の同時作用下における荷重連成解析を行い,各風車の応答特性の違いについて検討した.その結果,発電規模の異なる風車間の風応答特性が類似していることや風車の大型化により外力に対して風車が構造的に安定すること,同一波条件下でも風応答特性によって発電規模の異なる風車間で波による応答増幅特性が異なることがわかった.
本研究では,浮体式洋上風力発電施設のTLP形式に適用する杭式係留基礎の安定性に着目している.具体的には,波による張力変動が係留杭に繰返し作用することを想定し,軸方向の繰返し引抜き荷重作用下の砂地盤中の杭の安定性を一連の遠心模型実験により調べている.実験は遠心力場50gで行った.実験の中で,繰返し荷重に対して,杭が安定を保つ場合,半安定の場合,不安定の場合のそれぞれについて杭変位が増加する過程を観察した.実験を通じて,TLP基礎を想定した本研究の杭の安定性評価は,着底式洋上風力施設の杭基礎を想定した既往研究の安定性評価と整合することが得られた.また,繰返し荷重作用下で杭が安定を保つ場合は極限耐力の低下は見られないが,半安定をもたらすレベルの繰返し荷重をうけた場合には耐力が15%程度低下することが得られた.
新潟港海岸(西海岸地区)では,潜堤,突堤,養浜を組み合わせた面的防護方式による侵食対策を行っている.養浜後の地形状況を合理的かつ適切に把握できる計測手法を検討するとともに,試験的に航空レーザ測深(ALB)で海岸地形を計測した.ALBでは当該海域の移動限界水深である8m程度まで測深できた.従来手法である深浅・汀線測量で求めた同一地点の水深の水深差(絶対値)の平均は0.14mであり,深浅・汀線測量と同程度の精度を確保した.このことより,大規模養浜を行う当該海岸の面的な地形変化を把握するモニタリング手法としてのALBの有効性が示された.また,ALBの計測結果を用いて,浜幅健全度評価を試験的に実施した結果,砂浜モニタリングに必要となる陸側,沖側不動点位置及び前浜,後浜勾配を単一手法で確認することが可能であった.
浅海域において,藻場が衰退・消失状態となる「磯焼け」が大きな問題となっている.本研究では,磯焼けの複数要因に対応するため,着定基質の素材と形状を工夫し,実海域において検証実験を行った.また,試験ブロックに繁茂した海藻類のCO2吸収ポテンシャルを推算した.この結果,アミノ酸を混和した方形状の試験ブロックでは,既設のブロックや大割石よりもホソメコンブをはじめとする海藻類が繁茂し,アミノ酸を混和したプレート状の試験ブロックでは,海藻類の継続的な繁茂と多様な生物相の形成が確認された.CO2吸収ポテンシャルについては,方形状の試験ブロックでは7.995t-CO2/ha/年,プレート状の試験ブロックでは,最大1.125t-CO2/ha/年と推算された.今後は,継続調査によるデータの追加補正や特性の異なる技術を単独あるいは組み合わせた場合の効果検証が必要である.
本研究では大阪湾沿岸部の13地点の干潟を対象に水質項目,底質環境,水面と堆積物のCO2フラックスを定量化し,その関係性を明らかにすることを目的に調査を行った.大阪湾の干潟は全体的に砂質で構成されており,化学的性状から好気的な環境であった.水面におけるCO2フラックスは13地点中8地点で放出を示し,湾奥の河川の影響が強い地点でCO2は放出傾向にあった.堆積物における1日当たりのCO2フラックスは矢倉海岸と男里川を除いてCO2は放出であり,1日当たりのCO2フラックスは水面より高いことから,堆積物では有機物の分解の場としてCO2は放出されていることが推察された.以上のことから,干潟では水面からCO2は放出傾向であり,堆積物は干出することで,有機物の分解が促進されてCO2は放出していることが考えられた.
港湾空港に代表される埋立てによって造成された地盤は,礫分や貝殻片などの直径が大きな粒子を含んでいる.薬液改良土は,土粒子の粒径が大きいほど強度が低くなるため,このような材料に対して強度を発現させるためには,強度発現に影響を及ぼす要因を特定することが重要である.近年,液状化対策に用いられている薬液は,ホモゲル強度が従来よりもかなり低く,既往の強度発現メカニズムに関する研究成果を適用できるかは不明であったため,本研究では,一軸圧縮試験時に供試体内部に発生する間隙水圧を直接計測して強度発現要因を確認した.その結果,薬液改良土の一軸圧縮強さは,土粒子の付着力に起因する強度と発生負圧に起因する強度から構成され,土粒子の表面積,内部摩擦角および発生負圧が一軸圧縮強さに影響を及ぼすことがわかった.
2022年1月15日にトンガ国の海底火山(フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山)において,大規模な噴火が発生した.本報は,この噴火による潮位変動が東北沿岸部で観測されたので,その速報を伝えるものである.全国港湾海洋波浪情報網の東北地方太平洋側に設置したGPS波浪計,沿岸波浪計および潮位計で観測した波形を用いて,津波の解析を行った.その結果,津波の最大偏差は場所ごとに大きく異なっており,最も大きな潮位偏差は久慈の潮位計の105.9cmであった.青森東岸沖と岩手北部沖のGPS波浪計では,1月15日20:40頃に約2hPaの気圧変動が生じていた.潮位偏差はその気圧変動の後に発生しており,今般の津波は大気波によるものと示唆された.しかしながら,気圧変動に対して潮位偏差が大きいことなど,発生メカニズムが不明な点もあり,これらの解明は今後の課題である.
夜間光衛星画像から春季から秋季の隠岐海峡周辺海域における集魚灯を利用して操業する漁船の動向を調べた.漁船は隠岐海峡及び本州沿岸に多く分布する傾向を示す.漁船は水深約100mの等深線に沿って分布する.対馬暖流第1分枝が隠岐海峡を迂回することによって隠岐諸島の南東に弱い循環流が形成される.漁船はこの循環流及び対馬暖流第1分枝の支流によって収束される海域に分布する傾向を示す.このような海域ではプランクトン等が蓄積されやすい好漁場の可能性があるので,隠岐諸島の南東における流速場の特性を把握することが重要である.
気候変動による海面水位の上昇に対して沿岸域の適応策を検討するためには,各種数値モデルにより将来予測を行う必要がある一方,その地域的変化の妥当性は潮位観測記録によって確認される必要がある.しかし,テクトニクス等により潮位計の設置地盤が海面水位と同程度あるいはそれ以上に変動する場合があり,海面上昇の評価にあたって地盤変動の影響を適切に考慮する必要がある.本研究では地盤変動の影響を大きく受けている北海道沿岸の潮位観測について,国土地理院の電子基準点のデータから地盤変動の補正方法を整理し,海面水位の経年変化の分析と将来推計を実施する.その結果,16地点で海面水位の経年変化が評価可能となり,2℃上昇シナリオによる将来予測の経年変化と概ね一致した.
近年,大規模出水や高温化などにより夏季のアサリのへい死率が高まっているのを受け,アサリ稚貝を春に採捕し夏季を陸上飼育で避けた後で再放流する手法の有効性を検証した.陸上飼育に適した条件も検討した.広島県八幡川河口干潟を対象とし,6月に採捕したアサリの稚貝を陸上飼育施設で飼育し,10月に再放流した.アサリの稚貝は水温を15℃に保つことで生残率が高くなる一方,18℃に比べて成長速度も大きな差はなかった.また,特に給餌量を抑えて飼育する場合には,12時間と長く給餌し続けることで成長速度を向上させられることが示唆された.陸上養殖では年換算で80%が生残した.10月に再放流したアサリは,翌5月までに40~50%の生残率で再生産可能なサイズに成長可能であることが示された.当該技術によりアサリ資源の回復に向けて母貝の確保に貢献する可能性がある.
国土交通省港湾局では,港湾工事において建設現場における生産性の向上等を目指すi-Constructionを推進するための取組みを進めてきた.港湾分野で先行的に進められて来たICT浚渫工では,マルチビーム測深を活用するが課題もある.マルチビーム測深は,従来方式に比べ膨大な点群データを短時間に取得可能であるが,気泡等による音波の反射等により実際の海底の水深と異なる値であるノイズも計測される.ノイズ処理の大半は,時間と手間を要する手動処理であり生産性向上の隘路となっている.
東京湾およびその近海の生息場におけるホソウミニナの繁殖場としての機能を評価するために必要な,本種個体群の成貝における繁殖可能な個体の割合(PFA)を予測するための手法を新規に開発した.二生吸虫の寄生によって繁殖能力を喪失しておらず生殖腺がよく発達し,繁殖可能と考えられる成貝を,簡易に得られる形態指標に基づき特定するため,成熟度・寄生予測モデルを構築した.このモデルによってPFAを予測できるようになった.本手法を活用した本種の繁殖場としての生息場の評価手法は,造成干潟等を繁殖場として評価する際の利用が期待される.
ブルーカーボン効果を定量化するために現地でのCO2の連続測定が望まれている.海水中の酸化還元電位(ORP)はCO2の溶解による変化が大きいが,酸素消費によっても大きく変動する.本研究ではCO2の溶解に伴う電極反応および,DOの消費(還元物質の低電位場における酸化反応のORPへの影響)について検討した.海水へのCO2の溶解,沈殿とpHとの関係,海水中でのCO2の炭化濃度,実験結果と理論値の比較によりCO2の沈殿機構,およびCO2濃度と電位が競合するDOの酸化還元反応と反応電位の関係を明らかにした.さらに,現地において電極によるCO2濃度測定の可能性を確認した.
プレキャスト(PCa)桟橋工法は,不安定な海上作業を極力,陸上作業に置き換えることで,工期短縮や生産性の向上が図れるため,今後,更なる適用拡大が予測される.一方,世界的に脱炭素化に向けた動きが活発化する中,我が国の港湾分野においても建設時における低炭素化の重要性が高まっており,施工者自らの直接排出のみならず,間接排出を含むサプライチェーン全体のCO2排出量を把握することが求められている.そこで本研究では,桟橋工事の低炭素化に向けた基礎的検討として,PCa桟橋工法の建設時におけるCO2排出量を比較検討した.その結果,PCa桟橋工法の低炭素化には,工程短縮や生産性向上のみならず,鋼管杭や鉄筋等の鋼材の資材数量を削減できる工場PCaが優位な工法であることを確認した.
近年,台風1821号や台風1915号等の強大な台風が内湾の人口密集地域に襲来し,高波による甚大な被害が発生している.そこで台風襲来時の迅速で確実な避難活動を支援するため,気象庁のアンサンブル気象予報を利用して台風予報の不確実性を考慮できる高波予測システムを開発した.本システムは簡易予測と詳細予測を組み合わせることによって,ユーザーが求める詳細情報を早期に提供することを目標とする.また,台風1915,1919号を対象に本システムの適用性を検討した.その結果,コントロールランでは把握できない高波リスクをアンサンブル予報により事前に把握できることがわかった.しかし,週間アンサンブルはコンパクトな台風を過小評価すること,ピーク直近の予測ではピークを捕捉できない可能性がある等の留意点が明らかとなった.
台湾南西部に位置するCigu Lagoonは,ブルーカーボンの主な対象となっている水草等の海生植物は多く繁茂せずカキ養殖主体のラグーンである.本研究では,Cigu Lagoonにおいて水中CO2分圧を決定づける溶存無機炭素(DIC)への影響要因を検討することを目的とした.始めに,DICに係る環境要因の影響度を把握するためにSEM解析を行った.その結果,DICは流入河川の流量により増加,植物プランクトンの光合成による減少,カキの殻形成・呼吸等による増加の影響を受けていることが示された.次にSEM解析結果を基にDICのa conceptual modelを作成し,Cigu Lagoonの年間炭素収支を推定した.その結果,カキ養殖は,ラグーン内の炭素の増加に寄与しているが,その影響は小さく,DICに影響を及ぼす主な要因は,植物プランクトンによる炭素吸収効果であると考えられた.