
膨張コンクリートの使用効果について,ケミカルプレストレス量を仕事量一定の仮定から定量評価を行い,これまでに対称断面となるコンクリート構造物のひび割れ抑制に活用してきた.今回,対象とする構造物の範囲を広くするため,提案した非対称断面に対するケミカルプレストレスの推定方法を実大規模の鋼桁,床版および壁高欄を有する道路橋の試験体の各々のひずみを長期間計測して検討した結果を報告する.その結果,壁高欄の打込みの順序により,非対称断面になった場合にも仕事量一定の仮定を用いて,ケミカルプレストレスを定量的に評価できることが示唆された.また,実大規模の道路橋の壁高欄において,膨張コンクリートの単位膨張材量を増加させることにより,ひび割れ抵抗性を高めて,乾燥収縮ひび割れの発生を遅延できることが確認された.
本研究では,氷点環境下においても特別な養生を必要としない耐寒PCグラウトの開発を目的として,亜硝酸リチウムを主成分とした硬化促進剤の添加がPCグラウトの流動性や氷点環境下における強度発現性に及ぼす影響について検討した.また,厳寒期の屋外環境下において実物大試験体を用いたグラウト注入試験を行い,耐寒PCグラウトの充填状況や強度発現性などの基礎的性状を検討した.その結果,耐寒PCグラウトは温度条件毎に硬化促進剤の添加率を適正に設定することにより,練混ぜ直後から氷点環境下で養生しても良好な強度発現が得られることを確認した.また,シース管への確実な充填が可能であり,PCグラウトの品質基準を満足することを確認し,実用化への可能性を導いた.
In this study, the neural network model for predicting shear capacity of reinforced concrete (RC) beams without shear reinforcements is developed. Several explanatory variables concerning shear resisting mechanisms are derived from mechanical interpretation in order to optimize the number of variables employed in neural network model and the prediction performance. The experimental results gained from several research institutes are gathered and utilized as a teaching data and a validation data. The former is used for training the artificial intelligence (AI) model whilst the latter is applied for evaluating the prediction capability. Then, the predicted results gained from neural network model are evaluated against the shear capacity computed using national design standards. Regarding the result, the developed AI model yields better shear capacity prediction than that predicted using conventional AI model by thoroughly considering the variable relating to features of tensile reinforcements. Also, the AI model can predict shear capacity in a unified manner for RC beams having extensive range of shear span to effective depth ratio. Furthermore, the hidden shear capacity which cannot be achieved through current design equations are attained using the neural network approach.
地震によって鉄道橋りょうの支承部を構成するストッパー埋込み部が多数損傷し,復旧が困難な場合があった.耐力を向上させるストッパー埋込み部の構造やその耐力を評価可能な算定式があれば,損傷を抑制でき,復旧が容易となる.本論では,桁端の鋼角ストッパー埋込み部を対象に,鉄筋の配置の変更によって耐力を向上させるため,鉄筋の配置に応じた破壊のメカニズムについて検討した.その結果,鉄筋の量を増やすことなく,鉄筋とストッパーの位置関係を変更することによって耐力を向上できる場合があり,その耐力を評価するには鉄筋とストッパーの位置関係や鉄筋の量,降伏強度,コンクリートの圧縮強度に応じて3つの破壊形態となることを考慮する必要があることおよびそれら各形態の破壊のメカニズムを明らかとした.
劣化した既設鉄筋コンクリート(RC)はり部材における耐荷機構の耐力予測モデルに対しても適用可能な斜めひび割れ開口幅予測手法の開発を目的としてエネルギ定理に基づく予測手法を構築した.構築した手法は,耐力予測モデルにおける内力仕事と斜めひび割れ面の形成過程で蓄積する表面エネルギとの平衡状態において,斜めひび割れ面上のモードII開口変形により蓄積する表面エネルギを局所最大化する条件からビーム機構崩壊時の開口幅を導くものである.健全なはりを対象とした実験および解析の結果に対して適用性を検証した結果,スレンダービームに対する適用性が最も高いことを明らかにするとともに,構築した手法を適用した耐力予測モデルは設計指針類におけるせん断耐力予測式と同程度の精度でビーム機構の耐力を予測可能であることを示唆した.
コンクリート構造物の様々な設計条件に対応するために,従来指摘されていた配合や外気相対湿度に加えて,混合セメント,骨材収縮ひずみおよび水掛かりの影響を入力可能な,コンクリートの収縮ひずみ予測式を構築した.予測式は,3次元材料-構造連成応答解析システムDuCOM-COM3に基づき定式化しており,構造物を想定した部材厚や,水結合材比の低いコンクリートも含めて,収縮ひずみの長期材齢への適用性を確保している点に特徴がある.また,高炉セメントコンクリート(B種)を用いた供用中のプレストレストコンクリート(PC)桁に生じているコンクリートのひずみおよびPCラーメン橋のたわみなど,コンクリートの収縮が一因とみられる現象が,予測式を用いて説明されることを確認した.
分割練混ぜは通常の一括練混ぜに比べて,コンクリートのブリーディングの低減,流動性および分離抵抗性の向上という特徴を有するが,練混ぜ水を分割して加え練混ぜるため練混ぜ時間が一括練混ぜに比べ長くなる.そこで,分割練混ぜの特徴を保持して練混ぜ時間を短くするため粒子の結合・分散状態を検討した.X線CTおよび大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)によるペーストの計測・観察を行い,画像等から微小粒子(径が約2μm以下)の挙動の違いで結合状態が変化すると考え,分割練混ぜと一括練混ぜの結合・分散状態の違いのモデルを作成し,ブリーディング,流動性,分離抵抗性の特性の違いの考察を行った.これらの知見からカルシウムイオンを添加して練混ぜ時間の短縮ができることの検討を行い,粒子結合のモデルの妥当性と時間短縮の実用化の目途を得た.
練混ぜ水に海水を用いる場合にはコンクリート中にNaClが増加する.また,コンクリートのアルカリシリカ反応性を評価する際にはNaClを添加する場合が多い.しかしながら,封かん養生条件でNaClを添加したコンクリートの圧縮強度に関する知見は少ない.本研究ではNaClを添加した供試体を水中養生と封かん養生に供し,各材齢で圧縮強度試験を実施した.加えて,水和反応解析と自己収縮測定を実施した.
あと施工せん断補強筋(PHB)で補強したRC部材のせん断抵抗メカニズム解明のため,4つの条件に着目して3次元剛体バネモデルによる数値解析を実施した.1つ目に,PHBの幅方向配置間隔を狭くするとせん断補強効果が高まることを示した.2つ目に,PHBを用いた場合も断面高さの違いによる寸法効果は閉合型スターラップを用いた場合と同様であることを示した.3つ目に,せん断スパン比a/dの違いで破壊モードが異なる条件でも内部ひび割れや耐力への影響は同様であることを示した.最後に,面部材などで幅方向が一様に拘束された条件下では,PHB・閉合型スターラップを用いたいずれの場合もアーチ機構とトラス機構が増加して梁部材よりも耐力が大きく増加することを示した.本検討はa/d=2.86の条件を基本とし,1.71~4.00の範囲で同様の傾向を確認した.
本研究では,実在のPC橋を対象として,終局付近での主桁の挙動・破壊性状の確認のために,上部構造が破壊するまでの静的載荷試験を行うとともに,設計実務で一般に使用される線形骨組みモデルに部分的な拡張を行った解析モデルを構築し,PC上部構造の耐荷性能を評価する手法を検討した.破壊試験の結果,上部構造として配置された主桁がせん断耐力に達した場合でも上部構造としては横桁や間詰部を介して荷重が再分配され,変形性能が保たれることが明らかとなった.また,その結果を活用し構築した拡張骨組みモデルは,破壊した上部構造の挙動を概ね再現が可能であることがわかった.さらに,拡張骨組みモデルは新設設計で考慮する荷重を用いた上部構造全体の破壊安全性の評価や破壊過程を検証する手法として有効であることがわかった.
プレキャスト工法の適用範囲の拡大を目的とし,プレテンション部材から延びたPC鋼材を再度緊張し接続部材にプレストレスを導入して一体化を図る「ハイブリッドPC(HPC)構造」の開発を進めている.本研究では,コンクリート強度とPC鋼材のエポキシ樹脂被覆の有無をパラメータとした定着実験と再緊張実験を実施し,プレストレス導入時および再緊張時のPC鋼材の付着機構について考察した.さらに,実験で得られた付着応力-すべり量関係を非線形FEM解析に導入し,PC鋼材の挙動の再現を試みた.検討の結果,プレストレス導入時と再緊張時で,またPC鋼材のエポキシ被覆の有無で付着特性が異なり,HPC構造には高強度のコンクリートが適していることが分かった.さらに,FEM解析にてPC鋼材の付着挙動を一定の精度で再現できた.
本研究では,内在塩分と中性化の複合作用を受けたコンクリート中の鉄筋腐食抑制効果に及ぼす表面被覆工の亀裂の影響を把握することを目的に,コンクリートの水セメント比およびコンクリート中の塩化物イオン量,表面被覆工施工後の表面被覆工の亀裂の有無と中性化の進行範囲の違いが鉄筋腐食に与える影響について分割鉄筋を用いた促進腐食試験を実施した.また,実験結果より鉄筋腐食抑制効果が得られる表面被覆工の適用条件を整理した.水セメント比が大きく,表面被覆工に亀裂があり,中性化の進行範囲が広い条件では,亀裂なしと比較し,総腐食電気量密度が著しく大きいことを確認した.さらに,塩化物イオン量を2.5kg/m3含みかつ亀裂ありでは,中性化の進行範囲に関わらず腐食が進行するため,鉄筋腐食抑制効果が十分に期待できないことを確認した.
二次元空間に対して提案されたコンクリートの損傷指標(平均化偏差ひずみ第二不変量および平均化正規化累加ひずみエネルギー)を三次元空間へ拡張し,異なる破壊モードを呈するRC部材の三次元非線形有限要素解析による損傷評価への適用性を検証した.これらの損傷指標を用いて,形状や支持条件の影響で三次元的な応答を示す部材や,三次元的な複合外力を受ける部材の挙動評価を試みた結果,提案指標の組合せによって,三次元的な損傷過程や耐荷力を評価できることを明らかにした.本手法により,構成部材の形状や境界条件,外力の組合せに依存せず,耐荷機構を明確にした構造物の性能評価が可能となる.
プレテンションPC中空床版桁のウェブや下フランジ外面に,PC鋼材に沿って軸方向に進展するひび割れについて,材料と構造を連成したマルチスケール解析を適用する検討を行った.このようなひび割れは,一般に内部鋼材の発錆やアルカリシリカ反応,かぶり不足等により生じるとされるが,本検討によって,標準的な材料を用いて入念な養生・施工と適切な管理が行われた構造諸元であったとしても,温度と湿度の季節変動を受けることで,供用後10年~数十年後にひび割れが顕在化し得る可能性があることを示した.また,ひび割れの発生要因について考察するとともに,感度解析を通して各要因の関連度合いについて確認した.さらに,ひび割れが耐荷力に及ぼす影響は小さいことを示し,解析結果に基づいて,今後の対策についての提案を行った.
せん断圧縮破壊に至るせん断補強筋を持たないRCはりのせん断抵抗機構とせん断疲労破壊機構の解明を目的として静的および疲労載荷試験を行った.サンプリングモアレ法による画像解析を用いて斜めひび割れ幅とずれ量を得ることで,既往のせん断伝達モデルによって骨材の噛み合わせによるせん断抵抗成分を算出するとともに,骨材の噛み合わせとコンクリート圧縮部によるせん断抵抗成分の分担割合の変化を示した.その結果,低サイクル疲労において,繰返し回数が増加しても骨材の噛み合わせによるせん断抵抗の損失は生じておらず,圧縮応力とせん断応力によるコンクリート圧縮部の疲労破壊がRCはりのせん断圧縮破壊を決定づけていると考えられることを実験的に明らかにした.
湿潤環境で供用されるコンクリート構造物中の鋼材に対して電気防食工法を適用した場合,鋼材は防食状態にあるにもかかわらず管理指標である復極量を満足しないことがある.このため,鋼材の腐食速度を用いた防食管理方法が提案されているが,これまでに提案されてきたターフェル外挿法では実際の腐食速度よりも大きく評価するといった課題がある.本研究では,湿潤環境で腐食速度が大きく評価される要因について明らかにし,それらの要因を考慮した腐食速度の評価手法を提案した.また,実験的検討から本手法は電気防食時の腐食速度評価手法として活用できることを確認した.
本研究では,鉱物組成の異なる数種の骨材を用いて,骨材種類や混和材が遷移帯性状に及ぼす影響について検討を行った.また,練混ぜ時の骨材表面ゼータ電位に着目し,骨材表面ゼータ電位が遷移帯に及ぼす影響について検討を行った.その結果,練混ぜ時の骨材表面ゼータ電位が卑の傾向にあるほど水和物相組成中の水酸化カルシウムの割合が高くなる傾向が示された.また,特にシリカフュームを置換した配合において,空隙の複雑性を示す指標である空隙形状補正係数が高く,遷移帯の塩化物イオン拡散係数が低減することが明らかとなった.
PC床版はRC床版に比較して高いせん断耐力を有することが知られているが,設計に用いることができる押抜きせん断強度の算定式は現在の国内基準に反映されていない.また,軽量骨材を用いたPC床版に関しては,プレストレスの効果について具体的に検討された研究事例が少ない.そこで本研究では,PC床版に関する押抜きせん断実験の結果をもとに,既存算定式の適用性について検討した.次に,PC床版の押抜きせん断破壊挙動に与える影響要因を明らかにすることを目的に,床版内部の応力状態を確認できるFEM解析を用いて検討した.これらの結果より,普通骨材および軽量骨材を用いたPC床版の押抜きせん断強度算定式を,土木学会のPCはり式と同様の形式により導いた.
海水中の多種イオンが,セメント硬化体の塩化物イオンの浸透と固相の変質に及ぼす影響を把握するために,海水よりもイオン濃度が高い共存イオンが異なる4種類の溶液で促進的に浸せき試験をした.モルタルの塩化物イオン浸透は,1736日間の浸せき試験の結果から,NaCl+MgSO4溶液では促進され人工海水では抑制される結果を得た.これは,モルタル表層に生成する二水石こう,エトリンガイト,ブルーサイト,アラゴナイトの生成,およびCSHの溶脱が影響していると考えられた.コンクリートについては,1008日間の浸せき試験の結果から,浸せき溶液種類に関わらず,コンクリート表層10mmまでの領域に水酸化カルシウムが存在せず,溶脱による空隙構造の変化が塩化物イオンの移動に影響を及ぼしていると考えられた.
本研究は,鉄筋コンクリート部材のひび割れ幅の経時変化やたわみを予測する上で重要である,鉄筋コンクリート部材の引張剛性を対象としている.載荷前の乾燥収縮,持続荷重,持続載荷と載荷中の乾燥収縮の複合を実験変数とした系統的な鉄筋コンクリート部材の一軸引張試験を行い,鉄筋コンクリート部材の引張剛性に及ぼす持続荷重と乾燥の影響を明らかにした.さらに,実験結果から得られた知見を用いて,鉄筋コンクリート部材に生じるひび割れ幅の経時変化を算定し,土木学会コンクリート標準示方書のひび割れ幅算定式における収縮及びクリープの影響を表すひずみの値を再評価した.