血圧や体液・電解質の維持調節にレニン・アンジオテンシン(RA)系は重要な役割を果たしているが,近年,心臓や動脈などの局所においても RA 系が存在することが判明している。高血圧や心不全時には,この局所の RA 系が活性化され心筋細胞肥大,血管平滑筋細胞肥大・増殖,線維化などを引き起こし,心血管リモデリングが過度に生じると考えられている。そのため,RA 系阻害薬は降圧作用だけでなく,局所RA 系を阻害することにより心肥大・血管肥厚などを抑制し,心血管疾患の発症を減少させることが期待される。ACE 阻害薬はアンジオテンシン I(Ang I)からアンジオテンシン II(Ang II)への変換酵素を阻害して RA 系を抑制するが,ヒトではキマーゼを介した非 ACE 経路でも AngII が産生される。実際,高用量の ACE 阻害薬の慢性投与でも Ang II が産生され続けることが知られ(Ang II エスケープ現象)1),RA 系が亢進した状態においては ACE 阻害薬による Ang II の抑制効果の減弱が懸念されている2)。一方,Ang II受容体拮抗薬(ARB)は直接 Ang II 受容体に結合し,Ang II の効果を競合または非競合的に阻害するため,ACE 阻害薬以上の Ang II 抑制効果が期待される。今回,ARB の臨床試験を中心にRA 系阻害による心肥大退縮効果ならびに心不全進展予防効果を中心に述べる。