
1995年兵庫県南部地震では多数の橋梁が主鉄筋段落し部の定着長や帯鉄筋の不足による曲げせん断破壊により甚大な被害を受けた.本研究では2カ所で主鉄筋段落しされたRC橋脚の破壊メカニズムを解明するため,せん断/曲げ耐力比の異なる2種類のRC橋脚模型に対する載荷実験を行った.載荷方法は,1方向プッシュオーバー載荷,1方向および2方向繰返し載荷,1方向ハイブリッド載荷の4種類である.その結果,プッシュオーバー載荷およびタイプII地震動を用いたハイブリッド載荷では斜めせん断ひび割れが卓越して破壊したのに対し,繰返し載荷,タイプI地震動を用いたハイブリッド載荷では段落し位置に損傷が集中し,載荷履歴によって破壊形態が異なることを明らかにした.また,せん断/曲げ耐力比が小さくなると,その差は小さくなることも明らかにした.
海洋環境における円形鋼管杭の腐食にともなう強度低下の一予測法を示した.まず,防食工の損傷・劣化を考慮できる防食工の劣化モデルと腐食表面凹凸形状の経年変化を作成するモデルを作成し,これらのモデルを用いて海洋環境における円形鋼管杭の圧縮強度の経年変化を予測した.腐食表面作成モデルの支配パラメータは,19年間海洋環境に暴露された鋼管杭の腐食表面座標計測結果から決定し,FEMおよび簡易強度評価式により圧縮強度の将来予測を行った.その結果,ここで提案した鋼管杭の圧縮強度の経年変化予測法は,電気化学的な腐食メカニズムは考慮していないものの,数少ない支配パラメータにより実現象に近い鋼腐食表面形状を表現できるとともに,腐食進展にともなう強度の低下予測ができることを示した.
ロビンソン型の合成床版は,鋼板とコンクリートをスタッドにより合成し,コンクリート打設時の鋼板の変形を抑えるために鋼板を横リブで補剛した床版形式である.近年,わが国においてこの形式の合成床版が多くの道路橋の床版に適用されている.本研究では,著者らのこれまでの研究成果にもとづいて,この合成床版を対象とした性能照査型設計法を提案した.具体的には,床版に関する要求性能および性能項目を整理するとともに,性能照査に用いる床版固有の照査活荷重および部分安全係数について検討し,実際の合成床版の性能照査を実施した.この結果として,提案する性能照査型設計法によると,従来の仕様規定型設計法に比較して長支間床版の床版厚を20%程度低減できることを明らかにした.
本研究は,水道管路として多用される継手構造管路の地震時被害率推定式を提案するものである.従来,地震ごとの観測データに基づいて推定されていた被害率に対し,継手構造の破壊メカニズムに基づく理論解析手法により被害率算定式を定式化している.得られた推定式から離脱防止付ダクタイル鋳鉄管の終局限界強度に対する被害率曲線を算定するとともに,この被害率と整合する新しい耐震設計法,性能設計法を提案する.
本研究では,1050日間にわたる長期間の塩水噴霧複合サイクル環境促進実験を行い,国内で広く鋼橋に適用されているA, B, C, I塗装系の4種類の塗装防食に対して,弱点部とされる角部に着目し,角部加工なし(E0),面取加工(E1),曲面加工(R2)の3種類に鋼板角部を加工した供試体を用いることで,角部形状が角部の膜厚と防食耐久性に与える影響について明らかにした.その結果,各塗装系に対して角部の加工形状により角部の膜厚に大きな違いが生じることを定量的に示した.また,既存橋梁の多くに用いられているA塗装系ではE0に比べR2で大きく防食耐久性が向上した.C塗装系ではA塗装系とは異なり,E0においても十分な防食性能が確保されており,今回の条件ではE0とR2を比べても大きな違いは見られなかった.
複数のCFRP板を鋼板に接着する際,CFRP板に段差を設けると,接着剤に生じるせん断応力を低減でき,CFRP板が鋼板からはく離するときの荷重,すなわち,はく離荷重が上昇することが知られている.これまでに,一つの段差を有するCFRP板接着鋼板に対して,鋼板の応力を所定の値まで低減させ,はく離荷重を最大にする各CFRP板の必要接着長さと最適剛性を理論的に明らかにした.本研究では,1枚のCFRP板が鋼板の上下面に対称に接着されたCFRP板接着鋼板において,CFRP板の接着長さが長くなると,鋼板中央に生じる応力と,CFRP板の付着端の接着剤に生じる高いせん断応力がそれぞれ一定値に収束する性質を各段に適用することにより,複数の段差を有するCFRP板接着鋼板のはく離荷重を最大にする各CFRP板の必要接着長さと最適剛性を与える.
近年,損傷事故が相次いでいる鋼トラス橋に対し,振動特性変化に基づく健全度評価法の適用を意図して,トラス橋特有の振動特性を精緻に解明するとともに,維持管理の上でターゲットとなる振動モードや振動指標の整理を試みた.具体的には,実在するトラス橋において多点同期計測を行い,実験・理論の両モード解析から振動特性を分析するとともに,斜材に損傷を有したときの実測データから損傷検知の可能性について検討を行っている.その結果,トラス橋の振動モードとしてトラスモード,斜材卓越モード,斜材連成モードが存在し,斜材の局所的な構造特性の変化が斜材卓越・連成モードに比較的顕著に表れること,斜材連成モードのモード減衰に着目すれば少ない計測点で斜材損傷による変化を捉えられる可能性があること等,有用な知見を得た.
塗装を省ける耐候性鋼橋梁は,LCC(ライフサイクルコスト)を低減することが可能なことから数多く建設されている.橋梁断面の殆どの部位で良好な腐食状況にあっても,橋梁断面の部位によっては,好ましくない腐食状況になることがある.本論文では,新潟県内の苗引橋での一年間の観測により,橋梁断面の腐食分布への飛来塩分や降雨による付着塩の洗い流しなどの腐食環境因子の影響について調査し,断面部位別の腐食特性を環境因子から評価する方法について考察した.
メンテナンスや既設構造物の性能評価において,荷重が加わった際の変位応答値は重要な指標である.しかし,一般に,変位計測は固定点を要するため,土木構造物のスケールで常時実施するのは困難であるか高費用であって,多くの構造物に対して幅広く適用するには限界がある.本研究では,設置が容易な加速度計測に基づく最大変位推定の実現を目的として, 1自由度系を対象とした不規則振動理論に基づく加速度計測からの最大応答変位ならびに構造パラメータの推定法を構築し,数値例ならびに明石海峡大橋における実測例によってその精度・有効性を検証した.
Ultrasonic tip echo is scattered wave which radiates all direction from the sharp tip of reflection source such as fatigue cracks. Tip echo has been utilized for sizing defects as so-called "tip echo method" and also may apply to identify fatigue cracks from other defects. In this study, radiation characteristics of the tip echo were experimentally examined. A linear phased array ultrasonic testing system was applied to send and receive ultrasonic waves in various directions. The experimental results demonstrated the relationship between incident wave directions and directivity of the tip echo. Besides, the tip echo method was applied to a fatigue crack in a welded steel plate, and damping of echoes due to fatigue crack closure was indicated.
本研究では,一軸引張りを受ける多層のCFRPが接着された鋼板に対する新たな応力解析手法を提案する.具体的には,まず,各層のひずみを状態変数とみなし,微小区間における力の釣合いから,1次のベクトル形式の同次微分方程式を導出する.次に,このとき構成される行列に対して,固有値解析を数値的に行い,ひずみの一般解を求める.一般解に含まれる未定係数は,各層のひずみに関する連続条件ならびに境界条件より決定する.提案手法の妥当性を解析解,屋内実験ならびに有限要素解析より検証したところ,提案手法は解析解と完全に一致する解を与え,さらに,解析解の存在していない3層以上の多層のCFRPが接着された鋼板の応力解析が可能となることを確認した.
鉄道をはじめとした交通施設では,竜巻などの局所的気象現象が大きなリスク要因となっている.そこで,本研究では,竜巻による被害軽減を目的としたリスクマネジメントの一方策として,直前検知による車両の緊急制動への応用を念頭に,移動体上風センシングによる竜巻検知を提案し,その適用可能性について検討した.具体的には,竜巻の風速分布として現象論的な渦点モデルを採用し,移動体との相対関係による最大風速ならびに最大風速発生時刻を移動体上の風速風向計測から推定する方法を構築した.また,実際に計測された,竜巻通過時における風向風速時刻歴記録に本方法を適用し,その有効性を検討した.
本研究は,分布型光ファイバセンサの一つであるPPP-BOTDAを用い,そのひずみデータの特長を生かした変位同定アルゴリズムの構築を行い,その有効性を示した.ここでは,取得される分布ひずみデータを逆解析のデータとして用いるだけでなく,ひずみ分布形状不均一度評価を行うことで,構造物の変位境界条件の変化を検知し,同定における最適な構造モデル構築に利用することを提案した.検証では,光ファイバネットワークを埋め込んだCFRP積層板供試体を作製し,その片持ち板曲げ試験におけるたわみ同定を行った.ひずみ分布形状の不均一度評価より固定端条件の変化を適切に検知可能であり,その結果に基づく有限要素モデルのアップデートによって,最適な変位が高い精度で同定可能であることが示された.
RC橋脚の耐震設計では,橋軸および橋軸直角方向の地震動が個別に考慮される.しかし,実際には,それぞれの方向の地震動が同時に構造物に作用することが考えられ,各方向の地震動を単独で考慮した場合に比べ,橋脚の損傷が大きくなる可能性があることが報告されている.これに対し,超高強度繊維補強コンクリート(UFC)製プレキャスト型枠をRC橋脚の基部に適用すれば,塑性ヒンジ区間のかぶりが高強度化され,二方向からの地震動に対しても高い耐震性能を実現できることが考えられる.そこで,本研究では,UFC製プレキャスト型枠を基部に適用したRC橋脚に対し,二方向繰返し載荷実験および解析を行い,二方向からの地震動に対する同橋脚の耐震性能について明らかにした.
アーチ材にRC構造,鉛直材に鋼管,補剛桁にPC構造が採用された鋼-コンクリート複合PCランガー橋が建設された.本研究では,複合構造接合部の有限要素(FE)解析による照査事例の蓄積と手法の確立を念頭に,過去に例がない本複合ランガー橋のアーチ材と鉛直材との鋼-コンクリート接合部を対象とした3次元FE解析を行った.この種の接合方式に対してFE解析を用いた照査を行う際の,モデル化と構成則の考え方について提示し,FE解析が接合部模型の実験挙動を精度良く追跡可能であることを示した.さらに,実橋りょう接合部の部分モデル解析を行い,終局状態はアーチ材の曲げ耐力によって決定され,当該接合部が鉛直鋼管から作用する引抜き荷重に対して十分な抵抗力を有することを数値解析的に確認した.
首都高速道路における長大吊構造系橋梁である横浜ベイブリッジ,レインボーブリッジ,鶴見つばさ橋は,現在耐震補強工事が進められている.ここでは,3橋梁の内,横浜ベイブリッジを対象に耐震補強設計に用いた非線形地震応答値を求めた解析法の妥当性を検証した.耐震補強設計に用いた解析法の妥当性は,異なる非線形動的解析コードで得られた非線形地震応答値に生じる差が,実用上無視できる程度に小さければ妥当な解が得られているとした.
鋼床版のデッキプレートとUリブの溶接部近傍における局部応力は,鋼床版上の舗装の種類や弾性係数といった性状に大きく影響を受けることが知られている.本研究では,アスファルト舗装とSFRC舗装が施工された鋼床版の橋梁を対象に温度が異なる夏季と冬季に動的載荷試験を行い,鋼床版上の舗装の性状がデッキプレートとUリブ溶接部における局部応力に与える影響について検討し,SFRC舗装が年間を通して鋼床版の局部応力の低減に有効であることを定量的に示した.また,パラメトリックな解析的検討を加えることによって,舗装性状を考慮したデッキプレートとUリブ溶接部近傍における局部応力の算出方法を定式化し,大型車交通量と気温から鋼床版局部の疲労照査を行う手法を構築した.
既設鋼製橋脚隅角部に多数の亀裂が発生し,その原因と対策が求められている.本研究では,隅角部の疲労上の弱点とされている3溶接線交差部の溶接状態および応力状態を実橋隅角部と同様に再現した実物大の疲労試験体を用いて,静的および疲労試験を行い,隅角部の疲労強度低下の主要因を調べた.その結果,疲労強度低下の主要因は,3溶接線交差部の溶接表面近傍の溶接欠陥と溶接内部に形成される板組固有の内在キズ(Δゾーン)の両者であった.また,亀裂発生隅角部の多くは1960~1970年代に製作されており,その年代の鋼材への補修溶接の適用は困難である.よって,隅角部の疲労強度低下要因である3溶接線交差部の溶接不具合を機械的に除去し,補修する大コア法を提案し,その大コア法は既設鋼製橋脚隅角部の疲労強度を大幅に向上することを示した.
本研究では,ケーソン護岸式処分場の目地部で使用を検討している織布強化ゴム止水板の材料構成モデルの構築のため,既存の異方性弾性モデルを改良し,さらに異方性粘性モデルへと発展させた.また,複数の材料パラメータを決定するための試験方法および同定手順を整理した.実験結果との比較より提案モデルの有効性を確認し,単調載荷時であれば十分な精度を確保した材料構成モデルを構築することができた. また,織布強化ゴムの破壊強度は,繊維の破断と織りの解れに支配されていることを実験より確認した.そして,それぞれに対応した破壊基準を設定すれば,上記の材料構成モデルと併用した数値解析より,十分に実用な範囲内で強度予測が可能であることを確認した.
ライフラインなどの線状構造物の耐震性は,主として地表面の最大応答加速度(PGA)や速度(PGV)などに基づいて検討されているが,その被害は地盤ひずみの影響を大きく受け,過去の被害地震においても,PGAやPGVが最大の地域で埋設管の被害が集中しているとは限らない.そこで,本研究では,地盤ひずみに相関の強い地動の空間的変動を広域にわたり求める方法を示し, 2004年新潟県中越地震において水道管の被害に対する指標としてその有効性の検討を行った.その結果,新潟県中越地震では,液状化や構造物の被害に伴わない場合に,PGV GradientがPGVよりも管の損傷との相関が強く,提案手法が広域な上水道管ネットワークの被害予測の一次スクリーニング手法として有効であることが確かめられた.