
イオン液体は従来の分子性液体とは大きく異なる特殊な性質を有することから,新たな機能性媒体としてさまざまな分野で注目されている。溶媒抽出における抽出媒体としてイオン液体を用いた場合は,“液状イオン交換体”としても働くため,従来の有機溶媒系よりも優れた抽出分離能を示すことが期待される。著者らは,このようなイオン液体の特性に着目し,高性能溶媒抽出系の開発を目指して,イオン液体を抽出媒体とした金属イオンの抽出分離に関する研究を行ってきた。本稿では,金属イオン抽出におけるイオン液体の溶媒特性評価,イオン液体系での協同効果による希土類金属の分離,大環状抽出剤の開発とイオン液体に抽出された金属錯体の構造解析について紹介する。
A frequency of cyanobacterial blooms appearance in lakes has been increasing as a consequence of eutrophication together with global warming. Although cyanobacterial blooms have been removed/collected by a suction method, there are few ways to effectively use the cyanobacterial biomass. If added values such as adsorptive function for pollutants in aqueous solution can be provided to the cyanobacterial biomass, it would be contributed to solve problems on cyanobacterial blooms and water pollution. This study aimed to prepare adsorbent from cyanobacterial bloom sample collected in a eutrophic lake for the removal of pollutants, and attempted to remove Cd2+ by cyanobacterial blooms-originated adsorbent (CBA) prepared via dehydration treatment using a concentrated sulfuric acid. As a result, CBA possessed smaller specific surface area (13.1 m2/g) and higher amount of total acidic functional groups (8.29 mmol/g), and the maximum amount of Cd2+ adsorption was 1.43 mmol/g, which was higher than oxidized activated carbons. From these values, the number of carboxy groups per unit surface area was calculated to be 1.51 × 1020 number/m2, and the distance between carboxy groups was estimated to be 8.14 × 10−2 nm, which would be one of the major reasons of higher amount of Cd2+ adsorption. Furthermore, adsorption/desorption experiments were repeatedly conducted 3 times, and the results showed that the adsorption amount and recovery rate were not largely varied, indicating that CBA can be reused for the Cd2+ adsorption. These results suggest that the preparation of adsorbent for the removal of Cd2+ would be one of the effective ways for the effective utilization of cyanobacterial biomass.
未利用資源である無機系廃棄物を原料とした無機イオン交換体転換プロセスに関する筆者らの研究について紹介する。様々な無機系廃棄物などの原料やそれに対する転換プロセスの中で,本稿では廃砕石紛とアルミニウムドロスにアルカリ溶融処理を施して無機イオン交換体に転換するプロセスについて紹介した。産業廃棄物である廃砕石粉およびアルミニウムドロスを原料としてアルカリ溶融処理を施すことで,A型ゼオライトおよびX型ゼオライトを含む高い陽イオン交換容量(CEC)を持つ生成物や陰イオン交換能を持つハイドロタルサイトなどの無機イオン交換体を合成することに成功した。廃砕石紛とアルミニウムドロスの混合比により反応機構を制御することによって,A型ゼオライトとX型ゼオライトを選択的に合成できた。
半導体業界における技術革新に伴い,製品の小型化,微細化が進み,使用される薬品や超純水の高純度化,及びその管理要求も高まっている。大量の理論純水に近い超純水が製造供給され,水質管理においてはホウ素の管理が課題である。従来のホウ素選択性樹脂は溶出が多くみられ採用はされていなかった。新規開発の超純水向けホウ素選択性樹脂は,樹脂からの溶出分をコントロールし純水製造に適応させ,実機への新規導入も果たし稼働している。今後,ホウ素選択性樹脂が超純水製造プロセスのスタンダードとして適用されていくことが期待される。
結晶性配位高分子(CCP)および多孔質なCCPであるMOFにおける金属イオン交換は,新たな機能性物質の合成法として有効である。CCPおよびMOFの結晶構造の柔軟性がイオン交換反応特性に大きく影響するはずであるが,これまでそのような議論はほとんどされてこなかった。本研究では,Ce3+とビス(4-ニトロフェニル)リン酸が形成するCCP(CeL3)を合成し,CeL3中のCe3+と水溶液中に過剰に存在するランタノイドイオン(Ln3+; Ln3+≠Ce3+)の交換反応を調べた。原子番号が隣合うTm3+とYb3+で配位高分子中の金属イオンモル分率がおおよそ0と1になるという,原子番号に対して不連続に変化する極めて珍しい選択性序列を見出した。溶液条件次第では,Er3+とYb3+およびYb3+とLu3+で不連続な変化となった。CeL3でのイオン交換反応が進行するには,イオン交換反応によって生じる混合金属CCPの結晶構造転移が重要であることを明らかにし,CeL3の粒子表面でのみ起こるイオン交換と構造転移が連鎖的に反応するメカニズムを提唱した。本研究で得た知見は,結晶構造の柔軟性を上手く利用することで,イオン交換反応を変調できる可能性を示唆する。
イオン交換研究の40年間を振り返り,主に上智大学で行った超分子分析試薬の研究を中心に,これまでの研究をまとめた。分子認識反応の物理信号や化学信号への選択的変換は,新規な超分子センサー設計の鍵となっている。フェニルボロン酸やジピコリルアミンなどの分子認識サイトを有する蛍光プローブやアゾプローブとシクロデキストリン(CD)の組み合わせにより,CD複合体や,修飾CD,CDゲル複合体の相乗効果に基づく金属イオンや糖,リン酸誘導体の特異な認識機能を水中で達成した。また2分子の2官能性アゾプローブのCD空洞内でのねじれ構造をゲストイオンの多点認識によって制御することにより,新規な超分子キラリティーの発現にも成功した。フェニルボロン酸基を有するCDナノゲルやデンドリマーナノ粒子を用いることで,細菌の識別にも成功した。本総説では,超分子構造に基づくこれら超分子CD複合体やナノ粒子センサーの特異な機能について紹介する。
多くの清涼飲料水に甘味料として含まれている澱粉糖液の精製方法としては,イオン交換樹脂を使用した各種の方法が知られている。イオン交換樹脂による精製工程においては,イオン交換樹脂の実用的な耐熱性および澱粉糖の異性化やその他副反応抑制のため,一般的に30~40°Cで供給されるが,これは微生物の増殖としては好適な温度であり,精製設備内での微生物汚染の懸念がある。本澱粉糖精製システムは,澱粉糖液を供給する通液塔全体をアルカリ殺菌することで,従来のイオン交換精製プロセスに菌対策を付加機能として備えた精製システムである。
著者は大環状化合物や三脚状分子のような特異的な構造特性を有する分離剤,極めて弱いδ+性を有する2級アミド化合物類,バイオマス廃棄物を母体とする吸着剤を開発してきた。大環状ホスト化合物であるカリックスアレーンの誘導体は金属イオンに対して特異的な抽出挙動を示し,カリックスアレーン誘導体を組み込んだイオン交換樹脂は抽出試薬としての特性を保持して特異的なイオン交換特性を示す。また,さまざまな官能基を有するバイオマス廃棄物に基づく吸着剤は,金属イオンに対するイオン交換特性を示す。本論文では,p-t-オクチルカリックス[4]アレーン酢酸誘導体による鉛イオンの抽出や他のカリックスアレーン誘導体によるターゲット金属イオンの抽出結果に基づき,カリックスアレーン誘導体を組み込んだ4種のイオン交換樹脂による金属イオンの吸着特性について報告する。また,バイオマスとしての髪の毛と微細藻類を用いた金の吸着特性について報告する。