
症例は23歳男性で,心窩部痛にて受診しUSで膵頭部に径13cmの嚢胞部を含む充実性の円形腫瘤を指摘された.CT/MRIよりsolid pseudopapillary neoplasm(以下,SPNと略記)を疑い膵頭十二指腸切除術を施行した.術中,横行結腸間膜への浸潤を認め合併切除した.腫瘍は被膜を有し,出血・壊死を伴う充実部と嚢胞部が混在していた.組織学的には,好酸性胞体をもつ小型腫瘍細胞が充実性に増生し,一部に偽乳頭構造を認めた.免疫組織化学染色ではCD10陽性,β-cateninで核に陽性反応を認めた.細胞異型や核分裂像,結腸間膜への浸潤性などからmalignant potentialをもつSPNと診断した.SPNは予後良好な腫瘍であるが,その10~20%に悪性例を認め長期経過後の再発も報告されている.若年女性に多いとされるが本例のごとく成人男性にも発症することがあるので注意を要する.
当施設におけるbody mass index(BMI)からみた重症急性膵炎(SAP)の予後について検討した.SAP 139例におけるBMI(kg/m2)の内訳は,25未満が64.7%,25~30が25.2%,30以上が10.1%であった.BMI 25未満(90例)と25以上(49例)の比較では,初期輸液量,base excess,PaO2/FIO2,CRP,年齢,腹囲,HbA1c,メタボリック症候群(MetS)陽性率に有意差を認めた.BMI 30未満(125例)と30以上(14例)の比較では,初期輸液量,PaO2/FIO2,年齢,腹囲,HbA1c,MetS陽性率に有意差を認めた.しかし,各々の合併症併発率,入院期間,致命率に有意差を認めなかった.SAPの肥満例は,非肥満例と比較し,年齢層が低く,呼吸障害併発例が多かったが,肥満とSAPの予後との関連性は認められなかった.
症例は70歳,男性.膵頭部癌(TS2,PV(+),T4N0M0,Stage IVa)の診断にて術前化学放射線療法(5-FU,MMC,CDDP+Radiation 40Gy)施行後,膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織診断は高分化型管状腺癌T4N0M1(PER;omentum),Stage IVbであり,病理上,腫瘍本体に加え腹膜結節にも術前化学放射線療法の組織学的効果を認めた.術後Gemcitabineを開始したが,5年2カ月後右肺転移を認め,右肺S9-10切除術を施行.その後,胸膜播種を認め初回手術から6年7カ月後に死亡した.腹膜播種によるStage IVbにもかかわらず術後長期生存した1例を経験した.
症例は42歳女性.CT上,膵尾部に最大径約25mm大の嚢胞性病変を認め精査となった.精査の結果,病変内の一部にcyst in cyst様構造が認められ粘液性嚢胞腫瘍(MCN)を完全には否定できないため十分な説明を行い膵体尾部脾合併切除術を行った.切除標本では漿液性嚢胞腺腫(SCA)と診断された.SCAは通常microcystic typeと表現されるような径2~5mm程度の小さな嚢胞の集簇からなることが多い.しかし,本症例はmacrocystic typeに分類される形態を呈しており,病理学的にも大型嚢胞内に小型な嚢胞の集簇があるため一部cyst in cyst様構造が認められ,肉眼的にもMCNとの鑑別が非常に困難であった.SCAは形態がバリエーションに富むことから本症例のように他疾患の可能性も考え,手術適応とすることが度々存在する.
症例は70歳,男性.67歳時,膵尾部腫瘍に対して膵体尾部切除脾合併切除術を施行された.摘出標本は肉眼的に周囲との境界が明瞭な7.5cm大の黄白色の硬い腫瘍であった.免疫染色の結果,膵mixed acinar-endocrine carcinomaと診断された.摘出したリンパ節に転移が認められた.術後補助療法として1年間のS-1内服が行われた.術後4年経過後のCTで肝外側区域に約3cm大の腫瘤が認められた.異時性肝転移と診断し,腹腔鏡補助下肝外側区域切除術を施行された.病理組織では,腫瘍は黄白色の3cmの弾性硬の腫瘍で,組織学的に膵腫瘍と同様の腫瘍であり,mixed acinar-endocrine carcinomaの肝転移と診断された.術後早期から補助療法としてgemcitabine投与が行われた.肝切除後3ヶ月目のMRIで新たに肝S8に1cm大の腫瘍が認められた.異時性肝転移再々発と診断し腹腔鏡下肝S8部分切除術を施行された.病理ではやはり膵腫瘍と同様の所見であった.再肝切除後の補助療法には再びS-1内服が行われ,現在初回手術後56ヶ月で生存中である.
症例は56歳,男性.2004年から分枝型IPMN,慢性膵炎で経過観察されていたが,2008年にCA19-9の上昇を認め入院となった.腹部CTにて,膵頭部にIPMNと膵石を認め,いずれも2004年から徐々に増大していたが,IPMNに明らかな悪性所見はなかった.また,新たにgroove領域に不整な低吸収域を認め,癌を疑ったが,膵石や十二指腸浮腫状狭窄のため十分な画像評価が行えず,慢性膵炎急性増悪を繰り返していたため炎症性変化が否定しきれなかった.十分なICのもと経過観察としたが,2ヶ月後に閉塞性黄疸で再入院となった.腹部CTにて病変部は増大し,PETで集積を認めたため膵頭十二指腸切除術を行い,管状腺癌と診断した.分枝型IPMNの経過観察においては,全膵の発癌に留意する必要があるが,慢性膵炎を背景とするgroove領域からの発癌は診断が困難である場合がある.