わが国の食道外科は食道癌に対する食道切除再建術が中心で,縫合不全や肺炎などの感染性合併症が術後短期・長期の予後不良因子であることが報告されている.近年は鏡視下/ロボット支援下の低侵襲食道癌手術が普及し,縫合不全が関与しない切開創手術部位感染(surgical site infection:SSI)や肺炎の減少に貢献している.しかし,縫合不全発症率はいまだ高く,縫合不全による臓器/体腔SSIの発症ならびに重症化の予防が術式にかかわらず最も重要なSSI対策であり,癌の予後向上のために求められる.一方,縫合不全をはじめSSIの発症には,手術など治療関連因子に加えて高齢・低栄養・サルコペニア・糖尿病などの患者因子が大きく関与すると思われる.これらのうちSSIのリスクになることが明らかになった因子もあるが,それを改善する適切な代謝栄養学的介入の効果を示すエビデンスはまだ少ない.食道癌術後SSI対策として,術前からの腸を使う積極的栄養管理・リハビリテーション・口腔管理などを含むチーム医療での周術期代謝栄養管理のエビデンスが一つずつ積み重ねられ,予後向上に貢献することを期待したい.
がんに対する3 大治療には手術療法,化学療法,放射線療法がある.消化器外科領域においては手術がもっとも根治性が高く,集学的治療が進歩した現在においてもがん治療の中心であることには変わりない.19 世紀に外科手術が行われるようになった当初はいかに安全に手術を行うかが重要であったが,安全性が確保されるようになるとリンパ節郭清を中心とした根治性を求める拡大手術が行われるようになった.近年では術後QOL を考慮した機能温存手術の開発が各領域で進行しており,内視鏡手術に代表される低侵襲手術が徐々に趨勢となっている. 手術治療の根底にあるのは常に根治性であり,根治性が損なわれることはあってはならない.一方で不要な侵襲によって術後QOL を低下させてもならない.このバランスをいかに取るか,つまりどのような病態(がんの進行度)の患者にどういう手術を行うべきかが重要である.