SGLT2阻害薬エンパグリフロジン10 mgの併用が著効した,肥満のある陳旧性心筋梗塞を合併した2 型糖尿病の男性症例を経験したので報告する。本例において,エンパグリフロジン投与前6 日間と投与後9 日間の血糖値の変動をFree-Style リブレPro を用いて測定した。さらに,食事内容(カーボ比)の記録と対比して検討した結果,毎食の摂取糖質量は投与の前後でほぼ同じであったが,投与開始後には高血糖のピークを十分に抑えることができた。また,投与前後の血糖の日内変動パターンでも著明な改善が認められた。すなわち,投与開始前後の調査期間内での推定HbA1c は,それぞれ6.7%と5.9%(-0.8%),平均血糖値は147 mg/dL と122 mg/dL(-25 mg/dL),血糖値が目標範囲内であった時間は54%と74%(+20%)であった。なお,HbA1c の実測値は,短期間にもかかわらず,投与前8.1%から投与後7.5%に低下した。一方,本症例が過去にSGLT2阻害薬を服用していた際の体重,体脂肪量,筋肉量のデータでは,運動を積極的に行っていた時期には体脂肪の減少による理想的な体重減少が得られているが,運動の中断により筋肉量の減少が体重減少の主体になることが示され,SGLT2 阻害薬を投与する際の運動療法の必要性が再認識された。
目的:ビルダグリプチン100 mg/日で血糖コントロールが不十分な2 型糖尿病患者を対象とし,シタグリプチン高用量の100 mg/日に切り替えたときの血糖および臨床検査値への影響を検討する。方法:当院に外来通院中の2 型糖尿病患者であり,2014 年5 月から2016 年1 月までの期間にビルダグリプチンから高用量のシタグリプチンに切り替えた患者のうち,6 ヵ月以上の観察が可能であった23例を対象とした。シタグリプチン高用量の100 mg/日での投与は,経過を十分に観察しながら継続した。切替え時,切替え6 および12 ヵ月後にHbA1c,随時血糖,体重および臨床検査値を評価した。安全性については切替え後の副作用発現を指標に評価した。結果:対象患者の平均年齢は72.8 歳で,男性患者が69.6%を占め,平均HbA1c は7.4±0.5%であった。ビルダグリプチンからシタグリプチンに切り替えた後,HbA1c は6 ヵ月後に7.1±0.5%,12 ヵ月後には6.9±0.4%まで有意に低下した(それぞれp<0.05,p<0.01)。体重は,切替え時の66.2±12.5 kg から12 ヵ月後には62.5±13.6 kg まで有意に低下した(p<0.05)。eGFRの変動は認めなかったが,Cr が12 ヵ月後に0.9mg/dL から1.0 mg/dL へ若干増加したため,CCr は72.3 mL/min から60.7 mL/min と減少した。しかしながら正常範囲内での変動であった。血中脂質は切替え12 ヵ月後にHDL‒C の有意な上昇を認めた(p<0.05)。有害事象発現の評価では,シタグリプチンへの切替え後,肝機能も含め本剤投与を中止すべきと判断される副作用発現を認めなかった。結論:本試験の結果から,ビルダグリプチン100 mg/日で血糖コントロールが不十分な2 型糖尿病患者では,シタグリプチン高用量の100mg/日に切り替えて治療することが有用な治療の選択肢になり得ることが示唆された。