【背景】抗ganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)抗体は自己免疫性自律神経節障害(AAG)の病態において主たる役割を担っていると推測されている.我々は簡便,高感度,且つ定量性を備えた抗gAChR抗体測定系を確立し,2012年には全国からの抗体測定依頼を受ける態勢を整備した.【対象】全国の施設より送付された血清検体(自律神経障害を呈した248症例・331検体)を用いて抗gAChR抗体測定を行った.内訳はAAG(54例),AASN(23例)などであった.【方法】カイアシルシフェラーゼ免疫沈降(LIPS)を応用した検出法にて抗gAChR抗体(α3・β4サブユニット)測定を行い,臨床情報について解析した.【結果】全248症例のうち43症例で抗gAChRα3抗体が陽性であった(17.3%).43症例のうち12症例で抗gAChRβ4抗体が陽性であった.AAG/pandysautonomiaにおいて23/55例(41.8%)であり,抗体陽性症例の免疫治療内容について比較検討した.【考察】抗gAChR抗体陽性症例解析の基盤が整いつつあることを確認した.今後は中枢神経系に存在するnicotinic AChRを構成する他のサブユニットに対する抗体産生などを確認する必要がある.治療では複合的免疫治療が有効ではあるが,治療効果の症例間の差,同一症例においても治療反応性の良好な自律神経症状とそうでない自律神経症状が存在することなどが解決すべき問題である.
【背景と目的】全身性および臓器特異的自己免疫疾患では,古くから自律神経障害を伴う症例が知られるが,その分子病態は未解明である.近年,急性あるいは慢性経過を示し,広汎な自律神経障害を呈す自己免疫性自律神経節障害(AAG)の主因が,自律神経節後シナプス領域に局在するganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)に対する自己抗体であることが多角的実験手法により証明され,自律神経障害における自己抗体介在性の分子病態の存在が注目されている.本研究では,膠原病や自己免疫性慢性肝疾患における抗gAChR抗体の陽性率を解明する.【方法と結果】長崎大学病院と長崎医療センターにて集積された自己免疫疾患217症例(関節リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変,その他関連症例を含む)を対象とした抗gAChR抗体探索を実施し,平均22.6%の抗体陽性率を確認した.一方,抗gAChR抗体検査目的で当院に送付された著明な自律神経障害を呈する自己免疫疾患合併12症例の血清検体では,50%(6/12)の抗体陽性率を確認した.【結論】膠原病や自己免疫性慢性肝疾患に抗gAChR抗体が潜在することが明らかとなった.特に,広汎かつ著明な自律神経障害を呈す症例はAAGに匹敵する抗体陽性率を示し,当該抗体と各種自律神経症状の因果関係が疑われた.
【目的】視神経脊髄炎(neuromyelitis optica, NMO)に合併したシェーグレン症候群(SS)の病態について小唾液腺の組織染色を行いその特徴を検討する. 【方法】同意をえられたNMO-SS合併例4例,NMO spectrum disorderの症例から小唾液腺を生検しAQP4およびAQP5抗体を用い免疫組織染色を行った.対照として正常例3例,Typical SSの5例についても同様の検討を行った. 【結果】AQP4については唾液腺組織での発現は認めず,Typical-SS,NMO-SSでも同様の結果であった.AQP5抗体を用いた染色では,正常唾液腺組織において既知の報告通り管腔側にAQP5が強く発現していた.Typical SSとNMO-SSにおける変化を画像解析ソフトを用い定量を行ったところ,正常唾液腺組織と比較してTypical SSとNMO-SSでは有意差をもって管腔側の局在性が損なわれていた(P<0.01).Typical SSとNMO-SSでは有意差は認めなかった.また,サクソンテストとAQP5の染色性の変化は相関を認めており,AQP5の局在性と唾液腺機能の関連が示唆された.また,局在性の変化の原因としてTNFα抗体での蛍光染色を行ったところ,正常ではTNFαの発現は認められなかったが,Typical-SS,NMO-SSでは腺房周囲から間質にTNFαの発現を認めた. 【結語】NMO-SSにおいて唾液腺でのAQP-蛋白の関連は低く,AQP5については通常のシェーグレン症候群と同様の発現分布異常を認めた.その発現の変化についてはTNFαの関与が示唆された.