【はじめに】本研究の目的は,当院で施行した寛骨臼移動術(TOA)の術後20年以上の長期成績を調査し,関節温存に関連する影響因子を明らかにすることである.【方法】1996-2005年に当院でTOAを施行した患者で追跡可能であった159例172股(平均観察期間21年)を対象とした.THA conversionをエンドポイントとしたときの累積温存率を,Kaplan-Meier生存分析を用いて調査した.関節温存に関連する影響因子は,単変量および多変量Cox回帰分析を用いて調査した.【結果】31例33股がTHA conversionとなり,術後20年の累積温存率は79.7%であった.多変量解析では,術前病期が唯一の有意な影響因子であり,リスク比は2.69(p=0.003)だった.一方,年齢は影響因子ではなかった(p=0.153).手術時年齢を考慮して術前病期別に比較したところ,前・初期では45歳未満が89.8%,45歳以上が86.2%と年齢に関わらず(p=0.62),良好な結果を示した.一方で,進行期では45歳未満が66.7%,45歳以上51.1%と年齢に関わらず(p=0.75),前・初期よりも関節温存率は低かった.【考察】寛骨臼形成不全に対するTOAにおいて,長期での良好な関節温存を得るためには,術前病期が前期・初期であることが重要であり,手術時の年齢は影響しなかった.
【はじめに】脊椎術後の頭蓋内出血はまれではあるが報告されている.しかし,頭部外傷を合併した脊椎外傷の術後合併症としてのテント上硬膜下血腫の報告はない.【症例】29歳,男性.4階から墜落して,右急性硬膜下血腫,第12胸椎脱臼骨折を含む胸腰椎多発骨折を受傷した.頭部外傷は保存的治療を選択し,CTによる厳密な評価を行った.血腫の増大はなく脳浮腫が改善した第7病日に,脊椎後方固定術を行った.第10病日に意識障害を来たし,CTで右慢性硬膜下血腫による鉤ヘルニアと診断した.穿頭血腫除去術を行い,速やかに意識は改善した.【考察】脊椎手術後合併症として,小脳出血の報告は多いが,テント上の頭蓋内出血はまれである.過去の頭部外傷が危険因子と考えられているが,報告は少ない.頭部外傷を合併した患者における脊椎手術では,術後に頭蓋内出血を合併する可能性を考慮し,意識の変容の有無を慎重に観察する必要がある.
【目的】Dorr type Cに対するTHAにおけるステム沈下(Subsidence)に関してFit-and-fill stemとTaper wedge stemで比較検討すること.【方法】Dorr type Cに対してPrimary THAを行ったFit-and-fill stem群48例,Taper wedge stem群43例を対象とした.患者背景として疾患,性別,年齢,BMIを調査した.Subsidence量は術直後と術後1週,術後1週と術後6週,術直後と術後6週の3ポイントでX線を用いて評価した.【結果】両群間で患者背景に有意差は認めなかった.術直後から術後6週,術後1週から術後6週でのSubsidence量は,Fit-and-fill stem群に比べTaper wedge stem群の方が有意に小さかった.また,3 mmを超えるSubsidenceは,Fit-and-fill stem群で8例,Taper wedge stem群で1例に認め有意にFit-and-fill stem群で多かった.多変量解析の結果,ステムの種類が3 mmを超えるSubsidenceに影響を与える独立した因子であった.【結語】本研究結果からDorr type CにはFit-and-fill stemよりTaper wedge stemの方が適していると考えられた.