Parks により提言された痔瘻発生における肛門陰窩感染説の認知により,痔瘻の根治には肛門陰窩の処理が重要であることが周知され,痔瘻の治癒率は向上した1).具体的には病変を切開(切除)する開放術が導入され,痔瘻の根治率は高まった2).現在本邦では,全痔瘻に対して開放術が導入され,深部痔瘻ではHanley 変法と称されて施行されている.しかしもっとも痔瘻の中で頻度が高い低位筋間痔瘻において,開放術1 年経過後に便失禁のアンケートをとると,かなりの頻度で術前より肛門のトーヌス低下が自覚された3).したがって骨盤・坐骨直腸窩痔瘻に対してHanley変法が施行されると,内外括約筋が切断されるために,術後の括約不全が危惧された.専門医であれば,痔瘻を根治させることと機能を温存することの両立が求められる.当院では8 年前から,坐骨直腸窩痔瘻に対して浅外括約筋外側から切開を加えて手術する括約筋温存術(側方法)を導入している.累積再発率が低値で,術後の機能も保持されており,有効な手術法と思われた4).また深部痔瘻に対しては,積極的に術前MRI検査を行い,画像処理によって三次元画像を作成している.三次元画像を作成すると,深部痔瘻と周囲組織との関係が明瞭化され,手術が簡素化されると考えた.そこで本稿では,現在当院で行っている坐骨直腸窩痔瘻に対する括約筋温存術(側方法)とMRI 検査に関して解説を加える.
日常診療において肛門周囲の掻痒感を訴える患者を診療する機会は多い.本稿では乳房外Paget 病と肛門部皮膚真菌症について概説する.乳房外Paget 病は高齢者の外陰部,腋窩,肛門周囲に好発する表皮内癌であり,不整形の紅斑やびらんを伴った湿疹病変を呈する.進行すると予後不良となるため,本疾患を疑って積極的に皮膚生検を行う.掻痒感を訴える患者で湿疹,肛門掻痒症として加療する際に肛門部皮膚真菌症も念頭におき,真菌検査を行って適切な治療を行うことが重要である.
2012 年4 月~2014 年9 月に当院で坐骨直腸窩痔瘻に対して浅外括約筋外切開アプローチ法による括約筋温存術で根治術を行い,術後24 ヵ月以上経過観察した坐骨直腸窩痔瘻(100 例)を対象とした.手術時間は坐骨直腸窩痔瘻(隅越分類Ⅲ型)28 分,骨盤直腸窩痔瘻(Ⅳ型)47 分,治癒日数はⅢ型72 日,Ⅳ型125 日,累積再発率はⅢ型2.0%,Ⅳ型4.5%であった.括約不全は,術後24 ヵ月後まで定期的に経過観察した42例をWexner’s score の平均でみると,術前0.7 →術後1 ヵ月4.6 →術後3 ヵ月1.6 →術後6 ヵ月2.6 →術後12 ヵ月0.6 →術後24 ヵ月0.6 であり,術後12 ヵ月以上経過すると,括約不全はほぼ消失した.肛門内圧検査を術前→術後3 ヵ月→術後6 ヵ月→術後12 ヵ月,術後24 ヵ月で比較すると,MRP(cm/H2O)は103.2 → 80.2 → 82.3 → 82.4 →89.3 で,術前と術後3 ヵ月,術前と術後6 ヵ月,術前と術後12 ヵ月では有意差を認めたが,術前と術後24 ヵ月では有意差はなかった.MSP(cm/H2O)は272 → 218 →248 → 265 → 288 で,どの期間も有意差はなかった.