前立腺がんに対する治療の一つに、男性ホルモン(テストステロン)の生成やその働きを抑えるホルモン療法(内分泌療法)が行われます。ホルモン療法による治療は長期にわたることが多く、数年が経過するうちに効果がみられなくなり、再燃(がん細胞が再び活発に活動するようになり、増殖を始めること)してしまうことがあります。このように、ホルモン療法によって去勢状態(テストステロン値が50ng/dL 未満)であるにもかかわらず、再燃してきた前立腺がんを去勢抵抗性前立腺がん(castration resistant prostate cancer:CRPC)といいます。従来、CRPC に対しては抗アンドロゲン薬の休止、抗アンドロゲン薬交替療法、エストロゲン剤・副腎皮質ステロイドの投与、ドセタキセルを中心とした化学療法などの治療が行われてきました(図1)。イクスタンジ(R)(エンザルタミド)は去勢抵抗性前立腺がんに対しても効果が期待できる抗アンドロゲン薬として、わが国では2014年5月に発売された薬剤です。従来の抗アンドロゲン薬とは異なり、がん細胞の増殖にかかわる経路を複数阻害することにより、効果を発揮します(図2)。そのため、イクスタンジ(R)は、従来の抗アンドロゲン薬が効かなくなった治療抵抗性の前立腺がん細胞の増殖を抑える効果が認められています。また、化学療法後に病勢進行が認められた、転移を伴うCRPC の患者さんを対象とした海外第Ⅲ相試験(AFFIRM 試験)では、偽薬(プラセボ)群に比べ、全生存期間を有意に延長し、腫瘍マーカー(PSA)増悪を遅延、CT などの画像診断上の無増悪期間(PFS)および初回の骨関連事象(病的骨折、脊髄圧迫など)発現までの期間を有意に延長することがわかりました(表)。このことから、化学療法が無効になった前立腺がんにも治療効果が期待でき、現在はCRPCに対する化学療法前後での投与が保険適用となっています。