腸内細菌は消化管内での食物や消化酵素の分解・代謝を介して,宿主のエネルギー代謝に大きな影響を与えている.腸管内で腸内細菌により合成・代謝される短鎖脂肪酸や胆汁酸などは,腸管ホルモン分泌やバリア機能など腸管の機能維持に重要な分子であり,宿主をエネルギーの過剰蓄積や慢性炎症から保護している.肥満症では腸内細菌と腸管内代謝産物の偏りが存在し,そのため腸管の機能不全が生じ,宿主にエネルギー代謝異常と,脂肪組織や肝臓などの炎症が惹起され,肥満症の病態が形成される.そこで腸管内の短鎖脂肪酸や胆汁酸代謝を操作する肥満症治療や,新しい細菌を用いた治療が臨床で試みられており,またbariatric surgery は腸内細菌叢や腸管内代謝を是正する肥満症治療法と解釈することも可能となっている.腸管機能に注目した腸内細菌を応用した肥満症治療の開発が期待される.
▪ 腎不全に伴うインスリン抵抗性(RIRs)は,1950 年代から提唱された比較的古い概念である.▪腎不全に伴う脂肪萎縮症(lipodystrophy)は,2010 年頃から提唱された新しい概念である.▪ RIRs およびlipodystrophy は互いに関連しており,protein energy wasting(PEW)との関連も示唆される.▪ これらの病態は,慢性腎臓病の進行や心血管疾患の発症に寄与している可能性があるが,現在のところ決定的なエビデンスはなく,今後の臨床研究での検討が必要である.
2 型糖尿病・メタボリックシンドロームは生活習慣の乱れから,内臓脂肪の蓄積と慢性炎症が生じ,インスリン抵抗性を発症することが病態の基盤と考えられている.しかし近年,この病態に腸内細菌のdysbiosis が関与していることが明らかにされた.この病態では,腸内細菌において短鎖脂肪酸産生やムチン層維持能の低下が認められ,高エンドトキシン血症が生じ,宿主にインスリン抵抗性を引き起こしている.腸内細菌の機能を補完する治療として,プロバイオティクスや便微生物移植術が試みられ,病態の改善が報告されている.メトホルミンや胆汁酸吸着剤などの既存の薬剤も,腸内細菌の機能変化を介して病態の改善に寄与していることが明らかとなった.一方,食品用乳化剤は腸内細菌を介して病態を悪化させる可能性が示されている.腸内細菌を利用した2 型糖尿病・メタボリックシンドロームのあらたな治療戦略が期待される.