股関節高位脱臼に対して大腿骨遠位短縮骨切り術を併用した1例を経験したので報告する.【症例】72歳女性,1980年に左人工股関節置換術(以下THA),以降,右THA並びに2003年に左THA(Depuy AML)を施行.徐々に左股関節痛の増悪を認め,X線にて高度寛骨臼骨欠損に伴うカップの高位脱臼を認めた.手術は同種骨移植後原臼位にセメントレスカップを設置.Well fixed状態のためステムは温存し,大転子移動量70mmであったため大腿骨遠位35mm短縮骨切り術を併用.術後麻痺なく経過した.【考察】広く転子下骨切り術は併用される一方,既存ステム挿入例や近位高度骨変形などでは遠位骨切りも選択肢の一つとなり得る.
【はじめに】Iliosacral screw(IS screw)挿入に伴う上殿動脈損傷は注意すべき合併症であり,術後に貧血の進行などを契機に早期発見される事が多い.今回診断に時間を要した上殿動脈仮性動脈瘤を経験したため報告する.【症例】68歳男性,40 m滑落し受傷.AO分類61B2. 1,Lateral compression 1の骨盤輪骨折と診断しIS screwによる骨接合術を施行した.術後9ヶ月で発熱と左臀部の著明な腫脹を認め当院救急搬送.造影CT検査で上殿動脈の仮性動脈瘤を認めた.動脈塞栓術,血腫除去術を施行し術後1年で再発を認めていない.【考察】IS screw挿入に伴う上殿動脈損傷は考慮しなければならない合併症である.本症例は貧血進行が緩徐であった事,単純CTのみで評価をした事が発見の遅れに繋がった.綿密な術前計画を立てること,上殿動脈損傷の可能性を考慮し合併症を見逃さない事が重要である.
【はじめに】股関節滑膜性骨軟骨腫症の治療では鏡視下手術か外科的脱臼操作を伴う直視下手術が選択される.股関節鏡での摘出術後にSurgical dislocationを用いて再摘出を行った1例を報告する.【症例】38歳男性.10年前に誘因なく右股関節痛と可動域制限が出現.滑膜性骨軟骨腫症の診断で鏡視下に滑膜・遊離体を摘出した.疼痛改善したが一部残存を認め,再発に伴い疼痛増強しSurgical dislocationを用いて摘出した.術後再発なく経過している.【考察】鏡視下手術は低侵襲だが,体格や病変の位置により鏡視困難な場合,病変の残存・再発の可能性がある.Surgical dislocationを用いた直視下手術では寛骨臼への視野確保が可能だが,大腿骨頭壊死の危険性が指摘される.当院では側方アプローチでSurgical dislocationを行っており,大転子の骨切り量は少なく低侵襲で大腿骨頭壊死の危険性も低いという利点がある.本症例のように鏡視困難な位置に病変がある場合,Surgical dislocationを用いた手術は有用と考える.
【はじめに】コンパートメント症候群の中でも下肢の不適切な体位が原因となるWell-leg compartment syndrome(WLCS)の一例を経験したので報告する.【症例】38歳男性の直腸カルチノイドに対して砕石位で腹腔鏡補助下低位前方切除術・回腸人工肛門造設術を施行した.手術時間は6時間39分,麻酔時間は8時間5分であった.覚醒時より左下腿の疼痛を自覚し,下肢挙上台(レビテーター)に一致した圧迫痕と腫脹を認めた.血液検査にて経時的なクレアチンキナーゼ(CK)の上昇,コンパートメント内圧の上昇を認め,同日筋膜切開を行った.切開術直後より疼痛は改善し,後遺症を残すことなく経過良好であった.【考察】WLCSは砕石位で最も多いと言われる.砕石位は他科で汎用されるが,コンパートメント症候群は他科では馴染みの少ない病態であり,我々整形外科医が率先して手術室スタッフを含めた知識の共有を行うことで,予防,早期発見・治療が可能と思われる.