左鎖骨下動脈瘤を合併した弓部大動脈瘤の報告は稀であり,そのアプローチには工夫を要する.今回 Open distal anastomosisによるステントグラフト内挿術(Frozen elephant trunk法)を施行し良好な結果を得 たので報告する.症例は 61歳男性.高血圧と腎機能障害(血清クレアチニン 1.5∼2.0 mg/dl)の既往あり. 近医施行の胸部レントゲンにて異常陰影を指摘され,胸部 CTにて遠位弓部大動脈瘤(52 mm),および左 鎖骨下動脈起始部に動脈瘤(30 mm)を認めたため,手術目的に当科へ紹介された.手術は左 hemi-collar incision,胸骨正中切開および左鎖骨下切開にてアプローチした.脳分離体外循環,循環停止にて大動脈を 左総頸動脈分枝部で transectionし,末梢側へステントグラフトを内挿することにより,左鎖骨下動脈瘤の inflowを閉鎖した.分枝付き人工血管にて弓部大動脈を再建した.左鎖骨下動脈瘤の末梢は椎骨動脈分岐部 より中枢で結紮し空置した.術後経過は良好で,術後 19日目に独歩退院となった.術後 8カ月目の CTに て胸部大動脈瘤および左鎖骨下動脈瘤の血栓化,縮小を認めた.この術式は二つの瘤を空置するのみである ため,通常の弓部大動脈人工血管置換術に比べて左鎖骨下動脈瘤への直達が不要である,大動脈末梢吻合が 容易であるなどの点において有用であるが,今後も定期的なフォローアップを要すると考えられた.日心外 会誌 41巻 3号:113-116(2012) キーワード:鎖骨下動脈瘤,胸部大動脈瘤,Frozen elephant trunk法