三尖弁腫瘍の手術例を経験したので,適応,術式について考察し報告する.症例は73歳男性で15年前に脳梗塞の既往と脳血流保持のためバイパス術を受けていた.2年前に,心エコーで腫瘍を発見され,良性腫瘍との判断で経過観察されていた.当科にセカンドオピニオンを求められ,手術適応と危険性を説明した後,本人も希望し手術適応とした.手術は人工心肺使用下,心停止にて腫瘍を摘除した.術中卵円孔の開存を認め,同時にこれを閉鎖した.以前発症した脳梗塞がこの腫瘍周辺にできた血栓もしくは腫瘍そのものによる奇異性塞栓症の可能性を否定できなかった.病理学的に確定診断を得,術後経過順調で19病日退院した.心臓腫瘍の中でも,それが良性腫瘍で右心系に存在する場合は経過観察とする意見が多く聞かれるが,本症例のように卵円孔を通じ血栓塞栓症のような重症合併症を発症する可能性があり速やかに手術適応とする必要がある例もあるものと思われた.
2例のaccessory mitral valve tissue(AMVT)の手術症例を経験した.1例目は左室流出路のAMVTで左室流出路の狭窄はなかった.大動脈弁形成術施行時,AMVTによる大動脈弁閉鎖不全再発の可能性,将来の左室流出路の狭窄を考慮し,AMVTは切除した.2例目は,感染性心内膜炎による僧帽弁閉鎖不全症の精査の際に発見された.AMVTは左房内の膜状構造物として認められ,僧帽弁形成術を施行時合併切除した.左房側のAMVTは検索した限り,成人の報告例はなく,感染性心内膜炎によるvegetation等との鑑別に苦労した.