メタボリックシンドロームの病態基盤を形成する肥満の脂肪組織では, 実質細胞である脂肪細胞と多様な間質細胞により, ダイナミックな形態的変化「脂肪組織リモデリング」がもたらされる. リモデリングを起こした脂肪組織では, 細胞死に陥った脂肪細胞を浸潤マクロファージが貪食・処理する特徴的な構造であるCLS(crown‐like structure)が認められる. CLSは炎症性M1マクロファージにより構成され, 脂肪組織炎症と線維化の起点とされている. マクロファージに発現する自然免疫センサーMincle(macrophage‐inducible C‐type lectin)は, 細胞死センサーとしても機能し, CLSにおいて死細胞由来の内因性リガンドを認識すると考えられる. リガンドにより活性化されたマクロファージは, 線維化関連因子を産生して周囲の線維芽細胞を活性化し, 脂肪組織線維化をもたらす. 線維化により脂肪蓄積能が低下した結果, 余剰の脂質は異所性脂肪蓄積として他の臓器に蓄積され, インスリン抵抗性を惹起することが明らかになってきている.
◎肥満やメタボリックシンドローム研究の進歩により,食欲やエネルギー代謝調節におけるメラノコルチン系の重要性が指摘されている.メラノコルチンはPOMC の細胞内プロセシングにより生成されるペプチドであり,メラノコルチン受容体を介してシグナルを伝達する.メラノコルチン受容体は7 回膜貫通型G 蛋白質共役型受容体で,おもに細胞内cAMP がセカンドメッセンジャーとなる.メラノコルチン受容体は1~5 型の5 種類が同定されているが,なかでも4 型受容体(MC4R)は中枢神経系に発現し,食欲抑制ホルモンであるレプチンのシグナルの下流に存在するため,食欲やエネルギー代謝調節に密接にかかわるとされている.MC4Rシグナルを欠損するマウスは肥満を呈することが知られており,ヒトにおいてもMC4R 遺伝子異常症は単一遺伝子異常によるヒト遺伝性肥満の原因としてもっとも頻度が高く,食欲やエネルギー代謝調節にMC4R が深くかかわることが示唆される.