近年,フレイル,サルコペニアが癌の治療成績に影響するという報告が多く見られる.身体的フレイルの重要な要因がサルコペニアであり,慢性炎症が原因となる.慢性炎症にはDAMPs(Damage‐Associated Molecular Patterns)が関与しており,circulating cell‐free DNA(ccfDNA)もDAMPsの一種であると考えられている.われわれは,ccfDNAの断片化の程度を測定し,周術期サルコペニア,ccfDNAと癌の治療成績の関連を検討した.術後半年後に撮影した腹部CT検査でPMI(Psoas Muscle Index)を測定したところ術後合併症を発症した群ではPMIが低値で,無再発生存期間が不良であった.また,術前にccfDNA LF(Long Fragment)を認めた症例では無再発生存期間が不良であった.術後合併症を発症しないことが重要であり,そのためにはサルコペニア,慢性炎症への対策が非常に重要であると考えられる.
虫垂炎の治療は,単純性虫垂炎(uncomplicated appendicitis:UA),複雑性虫垂炎(complicated appendicitis:CA),腹膜炎を伴う虫垂炎に分けて考える必要がある.穿孔性虫垂炎はCA に含まれるが,腹膜炎を伴わないCA に対する緊急手術の術後合併症発症率は小さくなく,死亡率は0.1%である.保存的治療後に行うintervalappendectomy は合併症が少なく安全性が高いが,保存的治療の成功率は90%程度であること,約1%に悪性腫瘍が合併することに注意が必要である.
局所進行直腸癌に対する欧米の標準治療である術前化学放射線療法は,局所制御効果を認めるものの生存率の改善には寄与せず,遠隔転移の制御が課題である.また,放射線治療による有害事象も問題となっており,近年ではその省略も試みられている.手術成績に優れた本邦においては,術前化学療法が化学放射線療法における上述のdisadvantageを克服しうる有望な治療戦略となりうる.本稿では,術前化学療法の現況と今後の展望を概説する.
循環DNA 濃度やDNA integrity indexは,癌の病勢を反映すると考えられ,予後予測や術後の再発リスク判定,サーベイランスに利用できる可能性がある.10 %程度の症例では原発巣がKRAS 野生型でも転移巣では変異していることが知られているが,循環DNA を用いて転移巣のKRAS変異を解析することが可能であり,抗EGFR抗体の効果や耐性化の予測に利用できる.
閉塞性大腸癌は全大腸癌の約10 %とまれでなく,閉塞症状により全身状態が不良であることも多い.閉塞性大腸癌の標準治療は緊急手術による腸管減圧であったが,高い術後合併症,死亡率が問題とされてきた.従来から使用されてきた経肛門的減圧管に加え,本邦においても大腸ステントが保険収載され,これらによる腸管減圧後の待機手術が急速に広まっている.本稿では,低侵襲性の観点から閉塞性大腸癌に対する治療戦略を概説する.