要旨【目的】第二次世界大戦以前,“病院船”は本邦においても運用されていたが,以降は姿を消した。近年災害時の“多目的船”として再び議論され,政府機関内の実証訓練を経て,2021年「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」が成立した。実際の民間船舶で実証訓練を行った結果から,災害時に提供可能な医療内容や活用する船舶における課題を抽出し検討した。【対象】学校法人東海大学が保有する海洋調査研修船『望星丸』内で「提供可能な医療」「患者搬送手段と方法」を検証する訓練を行った。軽症から中等症の16名の模擬患者に対し,DMATが乗船し診療,移動,療養管理を行った。【結果】船内常備およびDMATが持参する医療資機材で医療対応は可能であった。船室を活用し療養環境を確保できた。感染症対応は船外の通路を用いた動線分離が可能であった。車椅子,担架を用いて狭隘な通路や階段の移動は可能であった。訓練後アンケートより亜急性期の患者を収容し被災地外へ搬送する役割が期待された。【結語】既存の民間船舶であっても,船内設備を生かしつつ医療者が医療資機材を持ち込むことで,災害時に活用可能であることが示唆された。民間船舶の規模に応じた活用方法を平時から検討し,医療者・民間船舶の合同訓練を行うことで,民間船舶は災害時の有効なツールとなることが期待される。