胃癌根治術後の体重減少は、術後合併症の発生のリスク因子になり、生存率を低下させる可能性が示されている。また、 II/III 期胃癌の標準治療は胃切除による根治手術+術後補助化学療法であるが、胃癌術後の体重減少は、術後補助療法の 治療継続性を阻害し、生存率を低下させる可能性が示されている。そこで、胃癌根治術後に栄養サポートを行うことで、 術後の体重減少を軽減することはできないか、また、術後補助化学療法の治療継続性を有意に向上させることができな いかについて、2 つの多施設共同の前向き臨床試験によって検討した。KSES-001 試験:【対象と方法】胃癌根治術の患者 100 例を通常栄養管理の対照群(47 例)と通常栄養管理に術後6~8 週間に300kcal/day の成分栄養剤を付加するED 群(53 例)にランダム割付した。主要評価項目は、術後6~8 週後の体重減少割合(%)とした。【結果】対照群、ED 群の体重減少割合は、それぞれ、6.60%、4.86% で、ED 群の方が有意に体重減少が軽減されていた(P=0.047)。OGSG- 1108 試験:【対象と方法】1 年間のS-1 による術後補助化学療法を予定されている胃癌術後患者に対して、少なくとも前 半の6 か月間は、300kcal/day の成分栄養剤を併用することで、S-1 の治療継続性が向上しないかについて、主要評価項 目をS-1 の治療完遂割合(S-1 が1 年間治療継続でき、かつ、RP 値が70% 以上であった患者の割合)として検討した。 1 年間のS-1 による術後補助化学療法の有効性を検証したACTS-GC 試験のS-1 投与群の治療完遂割合の56.6% を閾値 とした。【結果】S-1 の治療完遂割合は、69.0%(56.9%‐79.5% 95%CI)であり、成分栄養剤を併用することで、S-1 の治療継続性が向上する可能性が示唆された。【結語】胃癌周術期の栄養サポートによって、胃切除後の体重減少を軽減 し、術後補助化学療法の治療継続性が向上する可能性が示唆された。
Ⅱ期, Ⅲ期の進行胃がんに対しては, 胃切除術とその後の術後補助化学療法が日本の標準治療である. 胃切除後の短期的な体重減少は術後補助化学療法の治療継続性の阻害因子であり, 生存率そのものにも影響する可能性が示唆されている. 胃切除術後に成分栄養剤による栄養サポートを行うことで術後短期的な体重減少を有意に軽減し, さらに, 術後補助化学療法の治療継続性を高める可能性が示唆された. 一方,切除不能・再発・進行胃がんの化学療法患者の体重減少も生存率そのものを低下させる可能性があり, 支持療法として栄養サポートを行うことで, 体重減少を軽減し, 生存率が改善する可能性が期待される. ただし, 担がん状態であるため, 患者や病態の違いによって差異はあるものの, 大なり小なり体重減少の原因にがん悪液質が関与していると考えられるため, 治療早期からの栄養サポートに加え, がん悪液質となった状況では, 速やかにアナモレリンを導入することが重要であると考えられた. 支持療法としての栄養サポートや適切なタイミングでのアナモレリンの導入においては, 医師のみならず, 看護師, 薬剤師, 管理栄養士など多職種連携によるチーム医療が極めて重要である.