今回我々は中枢性尿崩症を合併した好酸球性多発血管炎性肉芽腫(EGPA)の2症例を経験したので報告する.症例1は61才女性.下肢の知覚異常,関節痛,全身倦怠感を主訴に入院となった.精査の結果(1)好酸球増多(2)IgE高値(3)MPO-ANCA高値(4)多発性単血管炎を認めることと,気管支喘息に既往歴を有することから好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の診断となった.入院時より口渇感,多飲,多尿の訴えがあり血漿・尿浸透圧の不均衡を認め,抗利尿ホルモン(ADH)が相対的に低値を示していた.デスモプレッシン負荷試験を実施したところ中枢性尿崩症の診断となった.症例2は84才女性.2003年にEGPAの診断で当科通院中のところ2014年3月に尿路感染症による敗血症のため入院となった.抗生剤使用により改善傾向を示したが,経過中高Na血症,血漿・尿浸透圧の不均衡,相対的なADH低値を示し,デスモプレッシン負荷試験で中枢性尿崩症の確定診断に至った.いずれの2症例ともデスモプレッシン点鼻により自覚症状の改善を認め,血漿・尿浸透圧の補正が可能であった.EGPAと抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)との関連については多くの検討報告がなされているが,中枢性尿崩症との関連についての報告は比較的まれと思われるため報告する.
【目的】生物学的製剤治療の初期治療無効例に対する薬剤変更は明らかな見解が得られていない.今回我々はTNF阻害薬無効例に対しトシリズマブ(TCZ)を使用し,その有用性,安全性を前向きに検討した.【対象】1987年ACRの分類基準を満たしたRA患者で既存のTNF阻害薬を3か月以上投与しても効果がDAS28-ESR(4)が3.2以上の中疾患活動性を示す患者で,本研究の対し同意が文章で得られた患者を対象とした.【方法】TCZ 8 mg/kg/月の点滴を行い24週後の腫脹,圧痛関節,炎症反応,DAS28,SDAI,CDAI等の活動性指標,mHAQ等を検討した.(結果)症例は11例(男性1例,女性10例)で,平均罹病期間7.4年,投与直前のDAS28-ESR(4)は5.39と高疾患活動性を示した.【成績】腫脹,圧痛関節共にTCZ投与後24週で有意に低下し,DAS28-ESR(4)も有意に低下した.しかし,mHAQやMMP-3は統計学的に有意差はなかった.現状ではTNFαモノクローナル抗体と可溶性TNFα受容体間の差は認めなかった.有害事象は2例肺炎を合併したが,いずれも投薬一時休止後抗菌薬投与で軽快した.【考察】TNF阻害薬無効例に対するTCZへの変更は有用である事が示唆されたが,TNF阻害薬の種類の相違による有効性の相違ははっきりせずさらなる症例の蓄積と検討が必要であると思われた.
38歳男性.主訴は発熱,呼吸困難.平成20年10月17日より40℃の発熱を認め,咳嗽,鼻汁も出現.24日に近医受診しセファゾリンの点滴を行ったが軽快せず,27日に同院に入院.炎症反応高値と胸部レントゲン上両側肺野にびまん性浸潤影を認め肺炎と診断.アジスロマイシン投与も軽快せず,低酸素血症が進行し精査加療目的で当院紹介入院.聴診上,両肺野で呼吸音の減弱を認め,触診上肝脾腫を認めた.検査所見では白血球11400/μl,ESR 83 mm/h,CRP 7.8 mg/dlと炎症所見を認め,sIL2-R 12400 U/ml,フェリチン2310 ng/mlと高値であった.レントゲン上両側肺野にびまん性網状影を認め,CTにて肝脾腫をみとめたが明らかなリンパ節腫脹を認めなかった.各種日和見感染マーカーは陰性であったがHIV抗体ELISA法で陽性であり,その後のHIVRNA定量3.9×105/ml,CD4 79 copy/μlで後天性免疫不全症候群(AIDS)と診断した.EBVは抗VCAIgG 160倍,抗VCAIgM(—),抗EA-DRIgG 160倍,EBNA 10倍であった.第1病日から加療開始も呼吸状態悪化し,ステロイドパルスを施行したが改善得られず第8病日死亡した.生前の骨髄穿刺所見,剖検時の所見で血球貪食症候群が証明され,EBVの抗体価よりEBVのreactivationが疑われ,さらにHIV感染も認める事より,それに伴うVAHSである事が疑われた.VAHSに伴う急性肺障害を認める事が報告されており,今回の症例はVAHSに伴うARDS/SIRSが死因であった可能性が示唆された.
関節リウマチ(RA)とEBVの関連は多くの報告があるが,直接的な関与は証明されていない.我々は,約23%のRA滑膜細胞にEBV遺伝子(EBER-1)やEBV関連蛋白(LMP-1)が発現することを報告した(Int Immunol 9, 739,1997).また,EBV関連疾患のIgA腎症末梢白血球よりクローニングした遺伝子の中にEBV細胞傷害性T細胞の誘導に関わり,EBVに致死的感染症を起こすX-linked lymphoproliferative syndrome(XLP)原因遺伝子のsignaling lymphocytic-activation molecule(SLAM) associated protein (SAP)遺伝子を発見し(AB586694 genbank),mRNA発現が,RA患者T細胞で健常人に比し低いことを報告した(Int Immunol 13,559,2001).また,NOD-SCID(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)(NOG)マウスに臍帯血ヒトCD34陽性細胞を移植しヒト免疫化マウスを作製し,EBV感染により滑膜の増殖とビラン性関節炎を起こすことに成功した(PLoS ONE 6 : e26630. doi:10.1371.2011).骨ビランを起こしている肉芽組織(パンヌス)の骨接触部位に破骨細胞様の多核細胞が認められ,罹患関節近傍骨髄にCD4陽性T細胞の強い浸潤を認めた.本報告では,当研究室でこれまで報告して来たEBVとRAの関連の結果を先に述べ,直接証拠としてのヒト免疫化NOGマウスにEBVを感染させ発症させたビラン性関節炎について報告する.