ヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)や神経変性疾患であるHTLV-1関連脊髄症(HAM)の原因である.HTLV-1高浸淫地域においてはATL,HAM以外にもぶどう膜炎,関節炎,膠原病,慢性肺疾患,慢性皮膚疾患など種々の慢性炎症疾患に本ウイルスキャリアが高頻度に見られることが報告されており,関連が示唆されている.しかし,その発症メカニズム,またHTLV-1陽性患者が陰性患者と異なる臨床像を示すか否か等不明な点が多い.さらに関節リウマチをはじめとする難治性慢性炎症性疾患においては,近年タクロリムスのような免疫抑制剤や抗サイトカイン作用を主とした生物学的製剤が頻繁に使用されるようになり,HTLV-1陽性患者では治療反応性や安全性が陰性の患者と異なるのか否かについて検討する必要がある.また疾患を有するHTLV-1キャリアではATL発症頻度が高いのではないかという報告もあり,ウイルス学的な病態の検討も必要である.このため平成23-24年度において厚労研究班としてこれらの諸問題について基礎的臨床的検討を行った.本シンポジウムにおいてはこの研究班での知見を中心に,HTLV-1陽性慢性炎症性疾患研究の今後について考えたい.
67歳,女性。初診の1ヵ月半前から右下腿に紅色結節を自覚,徐々に増大した。病理組織学的に真皮,皮下脂肪織内に密な中型の異型性を有するリンパ球様細胞の浸潤があり,表皮向性は認められなかった。これの細胞はcCD3(+),CD56(+),CD4(-),CD8(-),CD30(-),TIA-1(+)の形質を示した。EBERは陽性,腫瘍細胞のSouthern blottingでTCRβ鎖の再構成が認められ,EB virusのクロナリティも確認された。WHO-EORTC分類T-cell lineage のNK/T細胞リンパ腫,鼻型と診断し,治療はRT-DeVICを行った。本症例はNK細胞様の腫瘍細胞からなり,EB virusに関連したcytotoxic T-cell phenotypeを持つ下腿皮膚原発のlymphomaとして貴重な症例と考えられた。