目的:地域在住高齢者の4年間の縦断調査の結果から,慢性疾患の有無とその発症が生活の質(Quality of Life:QOL)とその変化に及ぼす影響について検討する.方法:65歳以上の地域在住高齢者2,762人(男性:47.0%,平均年齢±SD:76.7±5.8歳)に対し,脳卒中,高血圧,心臓病,癌,糖尿病,骨折,胃腸病,肺や気管支の病気,関節や筋肉の病気の9つの慢性疾患の有無とQOLに関する調査を行い,4年後に同様の調査をした.QOLの評価は「生活活動力」,「健康満足感」,「人的サポート満足感」,「経済的ゆとり満足感」,「精神的健康」,「精神的活力」の6つの下位尺度から成る「地域高齢者のためのQOL質問表」を用いた.初回に疾患がなく,4年間で発症がないものを,「疾患なし・発症なし」群,初回に疾患がなく,4年間で9つの疾患のいずれか1つ以上が発症したものを「疾患なし・発症あり」群,初回に疾患があり,4年後にもありと答えたものを,「疾患あり」群の3群に分けた.初回のQOL得点をベースライン値とし,3群間で比較した.さらに各下位項目について,4年間の変化量と割合を算出し,この変化の大きさを3群間で比較した.結果:ベースライン値では,「人的サポート満足感」以外で,疾患の有無による差が見られ,「健康満足感」と「精神的健康」において3群間に有意差があった.4年間の変化についても「疾患なし・発症あり」群で「健康満足感」と「精神的活力」の低下が大きく,「疾患あり」群では「生活活動力」の低下がみられた.結論:慢性疾患の有無とその発症がQOLとその変化に及ぼす影響について,1)慢性疾患のある人はない人に比べ,QOLが低かった.2)新たに疾患が発症するとQOLは低下した.3)1)および2)において,QOL下位項目が一様に影響を受けるわけではなく,慢性疾患の有無や経時的変化においては,影響を受ける項目とそうでない項目がみられた.