目的: 2007 年のJBR.10 試験のsubset analysis ではp53 変異陰性例,ras mutation 陽性例では術後補助化学療法による予後改善効果がないことが示されたが,詳細は不明である。われわれは以前より肺癌切除組織を用いて組織培養法抗癌剤感受性試験(HDRA 法)を施行している。今回当施設で手術を施行した非小細胞肺癌症例において,p53,ras mutation とHDRA 結果を比較し,抗癌剤感受性の観点からp53とras mutationのpredictive factorとしての意義を再検討した。対象と方法: 対象は2007年以降,当科で切除手術を施行した非小細胞肺癌症例のうちcisplatin(CDDP)とvinorelbine(VNR)の感受性を測定し得た27 例。これらの切除検体を用い,HDRA を行いCDDP とVNR の感受性を測定した。p53 は免疫組織化学染色で,K-ras はdirect sequence 法で評価した。結果: K-ras mutation は27 例中4 例で陽性であった。HDRA の結果,CDDP の抑制率はK-ras mutation陽性例で54±5%,陰性例で50±13%,VNRの抑制率は陽性例で39±10%,陰性例で35±18%であり,両群間に有意な差を認めなかった。p53 は27 例中14 例で陽性であった。CDDP の抑制率はp53 陽性例で50±12%,陰性例で50±12%,VNR の抑制率はp53陽性例で36±17%,陰性例で33±14%であり,両薬剤とも両群間で有意差を認めなかった。組織別にみると,腺癌ではCDDP の抑制率はp53 陽性例で59±8%,陰性例で45±9%と有意にp53 陽性例でCDDP の抑制率が高かった(p=0.018)。p53陽性例は全例HDRA でCDDP 陽性であり,HDRA でCDDP 陰性例は全例p53陰性であった。考察:腺癌ではCDDP の抑制率とp53 の発現状況に関連性が認められた。JBR.10 ではp53 陰性例でのCDDP+VNR による術後補助化学療法の予後改善効果が示されなかったのは,p53 陰性例でCDDP が無効であった可能性が示唆される。腺癌において,p53発現はCDDP の感受性を予測するマーカーとなり得る可能性がある。