鼻副鼻腔悪性腫瘍の治療では,眼窩や頭蓋内と隣接するという解剖学的位置の特殊性ゆえに,他部 位の腫瘍の治療とは異なるさまざまな問題を抱えている。手術を選択する場合には,十分な free marginの確保ができるかどうかという点とともに,眼球や脳などに対するダメージという非常に重 大な障害の可能性があり,さらにはそれに加えて,顔面の変形という整容面での障害も避けられない 問題となってくる。また,ここに発生する腫瘍の組織型は多彩であり,組織型によって最適な治療方 法が異なる場合も少なくないため,悪性腫瘍でも治療が画一的なものにはならないことも問題点とし てあげられる。 このような部位の腫瘍にたいして,現在さまざまなアプローチによる治療の試みが行われている が,いずれも治療成績の向上と後遺症の軽減,低侵襲など,より Qualityの高い治療をめざしてゆく ものである。 このパネルでは,鼻副鼻腔腫瘍に対するこれからの治療戦略を考えるために,現在までに新しく確 立されてきた治療方法のなかから,超選択的動注化学療法,化学療法,重粒子線(炭素イオン線)治 療,頭蓋底を中心とした手術治療の4つの観点から4人の演者にご講演をお願いした。内容には1そ れぞれの治療法の適応と限界,2長所と短所,3他の治療法に比して第一選択とすべきだと考えられ る状況はどのような場合かの3点については,発表のなかでお示しいただき,従来までの治療法との 相違点や今後の展望などについてもできれば触れていただくようお願いした。 この領域の腫瘍の治療は,設備やマンパワー,担当医師の経験など様々な要素が治療法の選択に影 響をしているのが現状かと思われるが,このパネルが鼻副鼻腔治療の新しい可能性そしてより適切な 治療は何かということについて,改めて考えていただく良い機会となることをめざしたいと考えてい る。 日 鼻 誌 49(3),2010
stage I舌扁平上皮癌における健側頸部リンパ節後発転移を分析するため,初回治療で舌部分切除した64例の筋層浸潤例をレビューした。22例に頸部リンパ節後発転移を生じ,これらのうち7例(32%)に健側頸部転移がみられ,4例は両側同時性であった。遅発性健側後発転移の3例は術後2ヶ月弱~31ヶ月にみられた。健側転移部位は,顎下,上・中内深頸リンパ節であった。健側転移例の5年原病生存率は,同時性が50%,遅発性転移は67%であった。舌下面が原発の3例中2例に健側転移を生じた。患側転移多発性(3個以上)の5例中2例に健側転移した。オトガイ下リンパ節転移した4例中3例に健側転移があった。原発巣の大きさと深さは健側転移に重要ではなかったが,筋層の角化が不全か非角化型の原発巣は健側転移と関連が深いように思われた。これらの因子から健側転移が予知されるstage I舌扁平上皮癌には厳重な経過観察を要することが示唆された。