事故や災害などの発生により,鉄道の運行が大きく乱れると,乗客が車内に長時間閉じ込められたり,駅間で降車避難を余儀なくされたりすることがある。それらを避けるには,鉄道事業者が事故の未然防止などの抜本的な対策を打つことが重要であることは言うまでもないが,万が一事故などが起きてしまった際には鉄道事業者による誘導案内の他に,乗客の不適切な行動による被害拡大を防ぐことも重要である。それらの対策では,乗客に異常時にとるべき対処行動を知ってもらい,いざという時に鉄道事業者と連携協力できるようにすることが課題となる。乗客の協力を得るには,乗客がとるべき行動を知っているだけでなく,鉄道事業者を信頼できることも重要と考えられる。本研究では,異常時に利用者がとるべき対処行動を説明する啓発動画を試作し,それらをインターネット上で鉄道利用者に視聴してもらい,視聴効果を検証した。その結果,知識の取得以外に啓発動画を視聴した実験群(2126人)では,視聴しない統制群(527人)よりも信頼感やそれを規定すると考えられる心的変数(能力認知,公正さ認知,価値共有認知等)の値が高くなり,信頼醸成にも寄与することが示された。