関節リウマチは進行性関節破壊を必発するが,破壊された関節機能は不可逆的で,修復を目指した治療の開発が必須である.我々は,多分化能を有するヒト骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の炎症性関節炎への治療応用を目指してきた.まず,ヒトMSCはIL-1等の炎症性サイトカインの存在下でも骨芽細胞,骨細胞への分化が強力に誘導された.その過程には,Wnt5a/ROR2の誘導およびその下流のシグナル経路の関与が示された.脂肪組織由来間葉系幹細胞もIL-6刺激で骨芽細胞様の分化を呈した.また,IL-1で刺激したMSCはRANKLよりOPG産生が優位で,破骨細胞の分化抑制を介して関節破壊を制御した.一方,MSCから軟骨細胞への分化は,IL-6/Stat3リン酸化を介して誘導され,IL-17/Sox9リン酸化制御を介して抑制され,異なる刺激調節系の存在が示された.さらに,ナノファイバーシートに播種したヒトMSCをラット関節近傍に移植すると,関節炎,骨破壊が臨床的,構造的,病理学的に抑制された.ナノファイバー播種MSC治療群では関節局所のIL-1やIL-6発現や所属リンパ節腫大,脾腫,血清II型コラーゲン抗体産生が抑制され,リンパ節のT細胞の増殖,サイトカイン産生が阻害され,局所の治療効果と全身性免疫応答の抑制作用を有した.さらに,GFPで標識したMSCは移植部に留まり,局所で産生されるTGF-等の産生を介して免疫応答が抑制された.以上,ナノファイバーに播種したヒトMSCは,骨芽細胞や軟骨細胞への分化,破骨細胞の分化制御,全身性免疫応答の抑制作用を有し,炎症性関節炎の疾患制御,関節機能の再生・修復を目指す上で有効なツールである事が示された.
【目的】間葉系幹細胞(MSC)は多分化能を有するため関節リウマチ(RA)の破壊関節への再生治療ツールとして期待される.IL-17はRA病態に寄与し,軟骨基質の分解や軟骨細胞のアポトーシスを誘導するが,軟骨細胞分化への作用は不明である.そこで,IL-17によるMSCの軟骨細胞分化に対する作用を評価した.【方法】ヒト骨髄由来MSCを軟骨分化誘導培地(CIM)で21日間ペレット培養することで軟骨細胞分化を誘導した.【結果】CIMによる軟骨細胞分化誘導の初期過程でIL-17受容体の発現は増強され,軟骨基質と軟骨マーカー遺伝子発現が誘導された.これに対して,IL-17の添加により軟骨基質と軟骨マーカー発現は抑制された.軟骨細胞分化のマスター転写因子であるSOX9はCIMによる分化誘導過程において発現の増強と共に顕著なリン酸化が誘導されたが,IL-17はリン酸化のみを抑制した.また,SOX9をリン酸化するprotein kinase A (PKA)活性はCIMで誘導され,IL-17により抑制された.さらに,PKA阻害薬であるH89は,軟骨基質と軟骨マーカー遺伝子の発現を顕著に抑制した.【結論】PKAとSOX9の活性化はMSCの軟骨細胞分化に重要であり,IL-17はこれらの活性化抑制を介して軟骨細胞分化を阻害することが示唆された.RA患者において,MSCを用いた細胞治療により効率的に軟骨を再生するためには,関節液中のIL-17活性を抑制しておくことが重要であると考えられた.