背景 : 自己免疫性膵炎 (AIP) は腫瘤形成性炎症性疾患で, しばしば膵癌との術前診断で切除術が施行される. 今回われわれは胆汁細胞診で疑陽性と判定し, 画像診断を踏まえて手術にいたった AIP の 1 例を報告する.症例 : 67 歳男性. 味覚異常, 褐色尿を主訴に来院. 血液生化学的検査で総ビリルビン異常高値, CT 検査で肝内胆管拡張を認め, さらに, ERCP, 胆汁細胞診が施行され, 腫瘍による閉塞性黄疸と診断された. 細胞診では背景に胆汁色素を認め, 配列の不整な細胞小集塊がみられた. 集塊構成細胞の核形は不整で, 微細∼細顆粒状クロマチンの軽度増量を認め, 疑陽性と判定した. 摘出した膵臓の割面は境界明瞭な病変で, 病変部は組織学的に膵管・小葉間の線維化がみられ, リンパ球や IgG4 陽性形質球の浸潤を豊富に認めた. 膵内胆管の上皮には炎症性変化とみられる細胞異型を認めた.結論 : AIP はステロイド治療が奏功する炎症性疾患であり, 手術を回避するためにも正確な診断が求められる. 今後, 臨床背景, 血清学的所見から慎重に判断し, 胆汁細胞診において異型細胞を認めた場合においても臨床的に AIP が疑われる症例に対しては, EUS-FNA による確認が必要であると考えられた.
目的 : 硝子体および眼内かん流液細胞診について臨床細胞学的に検討し, 眼内かん流液の有用性について考察した.方法 : 1991∼2009 年までに施行された硝子体および眼内かん流液細胞診 64 例を対象に年齢, 性別, 臨床症状, 疑われる疾患, 細胞判定, 最終診断について検討した.成績 : 平均年齢は 60.8 歳で高齢に多く, 男女差はほとんどみられなかった. 眼所見では大部分の症例で硝子体混濁がみられ, 臨床的にはブドウ膜炎および眼内炎が疑われた. 細胞診では陰性 50 例, 陽性・疑陽性が 14 例で, 3 例の感染症, 7 例のサルコイドーシス, 14 例の悪性リンパ腫の診断がみられた.結論 : 近年, 分子生物学的手法を含めた新しい検査法が検討されているが, 硝子体液は採取量が少量であり, 検索には限界がある. 眼内かん流液細胞診の結果を踏まえた検査法の選択が眼内病変に対する診断精度の向上に寄与するものと考えられる.
背景 : 悪性中皮腫は組織学的に肉腫型が少なく, また, 肉腫型が遠隔転移した症例に関する報告はさらにまれである. 今回われわれは, 頭部皮膚の転移巣が診断の契機となった肉腫型胸膜悪性中皮腫を経験したので報告する.症例 : 50 歳代, 男性. アスベスト曝露歴あり. 頭部皮膚腫瘍の急速な増大を自覚し, 当院受診. 画像検索にて両側胸膜に異常を認めたため, 胸膜生検および針洗浄細胞診を施行した. 初診断より約 2 ヵ月後に死亡し, 剖検にいたった. 胸膜穿刺針洗浄細胞診では, きれいな背景に孤立もしくは結合疎な小∼大型集塊が多数出現. 集塊を構成する異型細胞の核形は不整で大小不同を呈した. 胸膜の生検組織では, 異型が著明な紡錘形細胞の密かつ多彩な増殖を認めた. 免疫染色では中皮腫マーカーに陽性を示した. 剖検で左臓側胸膜は, 全体に鎧状の不規則肥厚を示した. 組織学的に頭部皮膚腫瘍部と剖検の両肺浸潤部は, 胸膜と比較してやや異型は強いもののいずれも同じ所見を呈し, 最終的に未分化多形肉腫様を示した肉腫型胸膜悪性中皮腫と診断した.結論 : 肉腫型胸膜悪性中皮腫は, その多彩性から細胞像のみでは診断に難渋する. 組織像および各種免疫染色所見に加え, 臨床情報や画像所見を総合した慎重な判断が必要である.
背景 : カルチノイド腫瘍は, 消化管や呼吸器などに発生することが多く, 肝原発カルチノイド腫瘍はきわめてまれである. 今回, われわれは肝原発カルチノイド腫瘍の術中細胞診を経験したので報告する.症例 : 40 歳代, 男性. 大型の嚢胞を伴う肝腫瘍に対し切除術が行われた. 手術中に行われた嚢胞内容に対する吸引細胞診では, N/C 比が比較的大の, 核偏在傾向を示す小型円形細胞が腺腔様とも, ロゼット様ともとれる配列を示していた. 組織では, 同様の細胞が, 索状あるいは充実性に一部ロゼットを形成して増生し, 腫瘍細胞は PAS (−), CD56 (+), NSE (+), クロモグラニン A (+), S-100 (+), シナプトフィジン (+), ガストリン (+) であり, カルチノイド腫瘍と診断した. また, その後の全身検索で他にカルチノイド腫瘍は存在せず, 術後 20 ヵ月を経た現在でもカルチノイド腫瘍は見い出されておらず, 肝原発カルチノイド腫瘍と診断した.結論 : 肝原発カルチノイド腫瘍はまれであるが,嚢胞形成を伴う肝腫瘍の場合には, その可能性を念頭に置いて診断する必要があると考えられた.
Sarcoidosis is an enigmatic multisystem sarcoid disease occurring mainly in the lungs, skin, and eyes. Sarcoidosis of the eyes (intraocular sarcoidosis) has been proposed as one of the causes of uveitis. We carried out a clinicopathological study involving seven patients with intraocular sarcoidosis based on vitreous humor fluid cytology. In the seven patients, the sex ratio was 4:3, and the average age at onset was 65.6-years-old. Vitreous opacity was noted in all patients and snowball-like vitreous opacity in 85.7%. Nerve papilloedema was noted in 42.9%. Diagnostic vitrectomy and adrenocortical hormone therapy were performed in all patients. As a result, the symptoms were improved. Vitreous perfusion fluid cytology revealed multinucleate giant cells in 85.7% and lymphocytes and epithelioid cells in all cases. Cytological diagnosis is not included in the current criteria for sarcoidosis, but its value in the diagnosis of intraocular sarcoidosis was suggested based in present study.