脊髄空洞症を生じ,歩行障害を呈した特発性胸椎硬膜内クモ膜嚢胞は,診断が難しく,治療方法も確立されていない.本論文では,MRI診断における要点と,手術方法について考察を行った.われわれが経験した4症例では,MRI T2強調矢状断像において,脊髄空洞症に近接して,脊髄背側部のクモ膜下腔拡大と,脊髄の前方への偏位圧迫を認めた.この脊髄の形と位置の変化が,特に重要な所見である.上記所見により,クモ膜嚢胞の診断はMRIで可能と考える.神経症状が進行する場合は手術が必要と判断される.われわれは全例にクモ膜嚢胞摘出術を行い,うち1例にはシャント術を追加した.術後全例で脊髄空洞症は縮小し,神経症状の改善を認めた.脊髄空洞症を伴った胸椎硬膜内クモ膜嚢胞に対しては,クモ膜嚢胞摘出術を第一選択とし,脊髄への圧迫が除かれたと判断できる場合は,シャント術は不要と考えられる.
【目的】遺残内頚動脈脳底動脈吻合の中でも稀な舌下神経動脈に破裂脳底動脈瘤を合併した一例を報告する.【症例】症例は58歳女性で,くも膜下出血による頭痛で救急搬送された.脳血管撮影で右内頚動脈から脳底動脈へ吻合する原始舌下神経動脈と脳底動脈先端部動脈瘤が認められた.舌下神経動脈を経路としてコイル塞栓術を行い,合併症もなく良好な結果を得た.【結論】遺残内頚動脈脳底動脈吻合に合併する脳底動脈先端部動脈瘤に対し血管内治療の経路として吻合血管を選択することは可能である.
症例は62歳の男性.脳底動脈-右上小脳動脈分岐部未破裂動脈瘤に対して,GDC^[○!R]を用いて瘤内塞栓術を行った.術直後から視機能障害を生じた.塞栓症などの合併を考え,CTにて経時的な観察を行ったが虚血性変化はみられなかった.対光反射は正常で,VEPも正常反応がみられた.以上の所見から皮質盲と診断した.これらの症状は術後3日で完全に回復し,患者は神経症状を残すことなく退院した.本例の皮質盲は,造影剤の副作用により生じたものと考えた.造影剤による皮質盲の特徴として,症状が一過性であり,持続時間が数時間〜数日であると報告されている.特に椎骨脳底動脈系の血管内治療を行う際には注意が必要な合併症であると考えた.