
目的:Transanal total mesorectal excision(TaTME)症例におけるdefunctioning stoma(DS)非造設基準を検討した.
Low-grade Appendiceal Mucinous Neoplasm(LAMN)は虫垂切除術などに伴って指摘されることのある虫垂粘液腫瘍である.今回われわれは3例の虫垂粘液腫患者に対して大腸癌治療ガイドライン2014年版に準じて60ヵ月のサーベイランスを行った.症例1は63歳女性.虫垂腫大を主訴に受診された.虫垂粘液腫疑いとして腹腔鏡下回盲部切除術を行った.症例2は27歳男性.右下腹部痛を主訴に受診,急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.症例3は74歳男性.急性虫垂炎に対して保存的加療を施行後,待機的に腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した.いずれも術後病理でLAMNの診断,断端陰性であった.術後60ヵ月までサーベイランスを行い,再発は認めなかった.LAMNのサーベイランス方法や期間に関しては一定の見解が得られていないため,本症例での経験を踏まえて文献的考察を加えて報告する.
【はじめに】本研究では当院で行った右側結腸癌手術における体腔内吻合症例の短期成績について従来の体腔外吻合と比較し,有用性を検討することを目的とした.【対象】2018年4月から2021年12月までに,cStageI-IIIと診断した大腸癌に対し腹腔鏡下右側結腸切除を施行した181例を対象とし,Propensity Score Matching(PSM)を行い体腔内吻合(IA)群と体腔外吻合(EA)群の短期成績を比較した.【結果】PSMにより両群とも52例となった.手術成績はIA群において有意に小開腹創が短く,出血量が少なく,術後在院日数が短い結果であった.Clavien-Dindo分類II以上の合併症の発生頻度に有意差を認めなかった.【結語】腹腔鏡下右側癌手術においてPSM後,体腔内吻合の短期成績は従来の体腔外吻合と比較し許容される結果であった.
症例は65歳男性.便潜血反応陽性を指摘され,下部消化管内視鏡検査を施行した.盲腸に40mm大の粘膜下腫瘍様病変を認めた.腹部造影CTを施行したところ,同腫瘍を先進部とし腸重積を疑う所見を呈していたが,身体診察上腹痛はなく,血液検査所見でも炎症反応の上昇を認めなかった.虫垂粘液性腫瘍が第一に考えられたが,鑑別疾患としてカルチノイドや虫垂癌,悪性リンパ腫などが挙げられた.診断と治療目的に加え,より低侵襲性・整容面を求め,手術手技・術野展開を工夫し,D3リンパ節郭清を伴う単孔式腹腔鏡補助下回盲部切除を施行した.病理組織診断で低異型度虫垂粘液性腫瘍(LAMN)と診断された.現在再発兆候は認めておらず,経過観察中である.LAMNの治療方針に関しては外科的治療が原則とされるが,診断方法や術式,術後経過観察期間などに関して一定の見解はなく,今後症例を蓄積し,検討が望まれる.
症例は76歳男性.数日前からの排便時痛で当院受診した.直腸診では,肛門6時方向に裂肛を触れた.またやや鋭利な何かを触れる印象はあったが明瞭ではなかった.痛みで肛門の緊張が強く肛門鏡では6時方向の裂肛を確認したのみであった.肛門の軟膏と鎮痛薬で保存的に加療したが,1週間後も痛みは改善しておらず,魚骨などによる肛門陰窩付近で限局性膿瘍も想定し,直腸内視鏡を施行した.肛門管直上に直径2cm程度のPTPがあり,深い裂肛を形成していた.PTPを回収ネットにて回収した.CTにて縦隔気腫,フリーエアーはなく,肛門の保存的加療で症状は軽快した.
症例は60歳台の女性.2年前に閉塞性直腸癌の診断にて,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.20年前に子宮体癌の手術歴があり,遺伝子検査を施行し,Lynch症候群の診断が確定した.術後サーベイランスの経過中に慢性貧血を認め,上下部消化管内視鏡検査とCT検査を行うも,貧血の原因となる粗大病変は認めなかった.Lynch症候群の存在があったため,小腸腫瘍を積極的に疑い経口ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行った.空腸にType2病変を認め,生検にて,中分化管状腺癌を確認した.原発性小腸癌の診断にて,腹腔鏡補助下小腸部分切除を施行し,術後経過良好で第11病日に退院となった.小腸癌は術前診断に至ることが難しい疾患であるが,本症例ではLynch症候群が背景にあることから積極的に小腸癌を疑い,経口ダブルバルーン小腸内視鏡を用いることで,術前確定診断を得ることができた.
〈対象〉排便造影検査を行った525例(女性297例),中央値68(17-93)歳を対象とし検討した.検討した形態異常所見は直腸瘤,wide rectum,直腸重積,S状結腸瘤,恥骨直腸筋奇異性収縮,恥骨直腸筋弛緩不全,stuck pelvic floor,肛門管開放不良,会陰下垂,鋸歯状直腸である.〈結果〉女性には直腸瘤(p<0.0001),wide rectum(p=0.0309),会陰下垂(p<0.0001)が,男性には恥骨直腸筋弛緩不全(p<0.0001),stuck pelvic floor(p<0.0001)が多く認められた.また器質性便排出障害と機能性便排出障害に分けて検討すると器質性は女性に(p<0.0001),機能性は男性に(p<0.0001)多く認め,両合併は女性に(p=0.0006)多く認めた.〈結語〉便排出障害の診断で男性は内圧検査などの追加検査が必要であると推測された.
本邦において虫垂炎に対する腹腔鏡手術は2021年に年間15,983件施行され単孔式アプローチも増加傾向にあるものの2,597例にとどまる.当センターでは虫垂炎に単孔式アプローチを基本としている.当センターでの虫垂炎に対する単孔式腹腔鏡手術の安全性と有効性を後ろ向きに検討した.2020年4月から2022年3月までに虫垂炎に対し単孔式腹腔鏡手術を施行した15歳以上の85例について調査した.術式は虫垂切除術68例,盲腸部分切除術7例で,回盲部切除術10例であり,開腹移行は4例,ポート追加を1例認めた.手術時間は中央値79分で,出血量は0mlであった.術後合併症は13例に認めたがGradeIIIb以上(Clavien-Dindo分類)の合併症は認めなかった.術後在院日数は5日であった.様々な虫垂炎に対し94%が臍小切開創のみで対応でき,炎症の程度に応じ術式を変更できる単孔式アプローチは有用である.
【はじめに】直腸神経内分泌腫瘍(NET)において内視鏡治療後の病理組織学的診断で脈管侵襲陽性となった場合,追加切除の検討が必要とされているが,内視鏡治療後の長期予後に関して十分なエビデンスがない.【方法】2005年1月~2021年12月に当院で内視鏡治療をした腫瘍径1cm未満で粘膜下層までにとどまる直腸NET G1患者158例中,脈管侵襲陽性であった44例(27.8%)を対象とし,リンパ節/遠隔転移率,再発/死亡率を検討した.【結果】追加外科切除を12例,経過観察が32例であった.追加外科切除例で2例リンパ節転移が認められ,経過観察例の5例で他病死が認められたが,遠隔転移,再発,原病死はみられなかった.【結語】腫瘍径1cm未満の直腸NET G1における内視鏡治療後の脈管侵襲陽性例では再発,原病死はみられなかった.
乳癌の他臓器転移の切除例は稀であるが,今回われわれは乳癌大腸転移,心臓転移をきたし,いずれも切除し得た1例を経験したので報告する.症例は76歳女性,主訴は心窩部痛.19年前に右乳癌に対して右乳房全摘術を施行.心窩部痛の精査の大腸内視鏡検査にて横行結腸に全周性の狭窄を認め,生検結果にて乳癌の転移と診断された.胸腹部造影CT検査では右室に造影効果を受ける腫瘤を認め,心臓転移が疑われた.先に大腸腫瘍切除の方針とし,2021年9月に腹腔鏡補助下横行結腸切除術を施行した.病理組織学的に乳癌の大腸転移と診断された.退院後補助化学療法を開始したが,心臓腫瘍の増大傾向を認め,他院にて2022年1月に右室腫瘍摘出術を施行され,病理組織学的に乳癌の心臓転移と診断された.現在,大腸手術後14ヵ月であるが,無再発生存中である.
患者は44歳の男性で,左上腹部痛および発熱を主訴に当院を紹介受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認め,CTで小腸が右腹腔内に,結腸が左腹腔内に存在し,腸回転異常が疑われた.上行結腸と思しき結腸に壁肥厚および周囲脂肪織濃度の上昇を認め,憩室炎の診断で緊急入院となった.絶食および抗生剤投与による保存治療を行ったが奏効せず,外科転科のうえ手術を行った.手術は腹腔鏡下結腸右半切除術を施行,術中所見でTreitz靭帯の形成は認められず,盲腸から上行結腸は腹壁に固定されていなかった.上行結腸とその間膜に強い炎症性変化を認め,同部位を含めて切除した.摘出標本において,上行結腸に憩室炎および結腸間膜内に連続する膿瘍形成を認め,結腸憩室間膜内穿通と診断した.成人腸回転異常症に合併した結腸憩室間膜内穿通は極めてまれな病態であり,臨床解剖学的に示唆に富む症例と考えられたため文献的考察を加えて報告する.
症例は46歳男性.膀胱浸潤S状結腸癌に対して横行結腸ストーマ造設後に化学療法を行い,終了後にS状結腸切除,膀胱部分切除術を行った.病理組織診断はyT4b(膀胱)N0M0,StageIIc,組織学的効果判定はGrade 1で,術後化学療法を行ったが,膀胱内再発して経尿道的腫瘍切除術を施行し,その後ストーマを閉鎖した.さらに左内腸骨リンパ節転移が顕在化して重粒子線治療を受けた.治療終了後にリンパ節転移は消失したものの右外腸骨リンパ節転移が顕在化し,再度重粒子線治療を受けて消失した.重粒子線治療終了後4年半経過し,この間再発は認めていない.本症例は,膀胱へ浸潤したS状結腸癌が,膀胱の領域リンパ節である側方リンパ節へ転移したものと推測され,リンパ行性転移を考える上で貴重な症例であった.また,再発病巣に対する経尿道的治療,重粒子線治療は,QOLを損なうことなく根治的治療が可能で,有用であった.
われわれは,通過障害を伴った局所進行大腸癌に対して,自己拡張型金属ステント(self-expandable metallic stent:SEMS)挿入後に化学療法を施行したところ,化学療法が著効し良好な結果が得られた症例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.S状結腸癌イレウスに対して,大腸ステントを挿入した.次いで,S-1とオキサリプラチンの併用療法(SOX療法)4コース施行後,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.ステント挿入中の大腸癌症例に対する化学療法の実施については,最新のガイドラインでは,行わないことが弱く推奨されている.したがって,ステント挿入下の化学療法により腫瘍の縮小を図った後に切除を目指す方法は,十分なインフォームドコンセントを得た上での治療の選択肢となりうると考えるが,さらなる症例の蓄積が必要である.
稀な大腸腺扁平上皮癌2例を経験した.症例1は47歳男性,直腸Ra癌の診断で直腸低位前方切除術D3郭清を施行した.病理組織学的検査で腺扁平上皮癌pT3N2bM0 p StageIIIcの診断となった.術後補助化学療法を施行したが,術後9ヵ月目に肺転移,骨盤内再発,左腹壁転移が出現し全身化学療法を開始した.4次治療まで行い術後2年4ヵ月目に永眠した.症例2は66歳男性,横行結腸癌の診断で腹腔鏡下右半結腸切除術D3郭清を施行した.病理組織学的検査では腺扁平上皮癌pT1bN0M0 p StageIと早期癌であったが,術後3ヵ月目に多発肝転移が出現した.全身化学療法を導入したが,治療抵抗性で術後9ヵ月目にBest supportive care(BSC)の方針となった.自験例2例と本邦報告例78例の臨床病理学的特徴の考察を加えて報告する.