Acute necrotizing encephalopathy (ANE) is a rare CNS complication characterized by rapidly progressive neurological symptoms that typically affect children. Although COVID–19 may complicate with ANE, in Japan several cases occur in children; adult cases have not yet been reported. This report describes a case of COVID–19–related ANE in a 73–year–old man with no significant medical history. He presented a decreased level of consciousness while bathing and was rushed to our hospital. Although the SARS–CoV–2 antigen test was positive, blood and cerebrospinal fluid tests and head CT showed no evidence of consciousness alterations. After admission, organ damage progressed and the patient developed disseminated intravascular coagulation. The most severe type of heat stroke was suspected, and the patient was treated in the ICU. On the 6th day of illness, a brain MRI showed findings characteristic of ANE. The patient survived and was discharged from the ICU without immunosuppressive therapy, and his level of consciousness subsequently improved. Although the number of COVID–19–related ANE cases is small worldwide, and many unknowns remain, the clinical data and course are similar to those of heat stroke.
要旨呼吸不全を呈した高度肥満患者に対する人工呼吸器管理は難渋することが多く,気管切開術を要する場合,難度は高く,重大な合併症に関連する。今回,COVID–19を契機としたII型呼吸不全に対し,脂肪除去術と気管皮膚縫合術を併用した気管切開術にて救命した高度肥満症例を経験した。症例は24歳の男性でBMI 61.5。COVID–19と診断され,急性II型呼吸不全を発症し入院後に人工呼吸器管理が必要になった。経口気管挿管は困難で,ファイバースコープを用いた経鼻気管挿管を行った。鎮静下で調節呼吸を開始したが,無気肺と肺胞低換気のため呼吸性アシドーシスが進行した。無気肺の改善と換気量の増大を得るために,気管切開術を施行して鎮静剤を減量し患者を覚醒させ,自発呼吸の促進や喀痰の自力排出を図るとともに積極的な体位管理を行うことが必要と判断した。皮下脂肪が多く頸部の術野確保は困難で,顎下部と前胸部の脂肪組織を広範囲に除去し,気管を確認し,気管切開後は気管と皮膚を縫合した。術後は自発呼吸と咳嗽により十分な喀痰排出が得られたことで無気肺は解除され,呼吸性アシドーシスも劇的に改善して良好な転帰をたどった。本邦では高度肥満患者は稀であり,BMI 60以上の症例に対する気管切開術や呼吸管理に習熟している医師も少ない。高度肥満患者に対して脂肪除去術を併用した気管切開術を行い,良好な転帰をたどった貴重な症例として報告する。
要旨気管切開後の気管カニューレの選定は極めて重要である。不適切なカニューレの選択は,チューブの脱離や内腔閉塞などの致死的合併症につながりうる。アジャストフィット® (AF)は,いかなる気管切開孔にも適合することを目指して開発された気管カニューレであり,①ウイングを調節することで気管内に挿入するチューブの長さを調節できる,②シリコン製のスパイラルチューブが柔軟に変形し内腔を保つ,という特徴を持つ。しかし,複数の症例を対象に有用性を検討した研究は少なく,適応や合併症についても未だ不明な点が多い。2017~2022年に当院にてAFが使用された13症例について,その有用性と有害事象を後方視的に検討した。導入理由は,気管前面の皮下組織の肥厚:9例,気管の変形・偏位:3例,気管内狭窄:1例,不明:1例であった(1例重複)。有害事象はカニューレの脱離:4例,内腔狭窄:2例,チューブ先端と気管壁の干渉による換気不全:1例であった。高度の肥満症例や,喉頭全摘出後などの気管の偏移を伴う症例において,AFが有用であり,適応の判断については頸部CT検査が有用であった。しかし,AF特有の構造に起因した,チューブの脱離や内腔の狭窄といった重大な合併症も見られた。AFは適応を慎重に検討し,製品の構造上の特徴を理解して管理を行えば,気道管理において有用なデバイスであると考える。
要旨 症例は22歳の女性。インターネットで購入したオオミフクラギの種子を自殺目的に摂取した。摂取から約12時間30分後,嘔吐・ふらつきを主訴に救急搬送された。来院時,興奮状態で嘔吐を繰り返しており,心拍数は54/分と徐脈で,心電図はMobitz II型房室ブロックであった。血清カリウム値は5.8mEq/Lと高カリウム血症を認めた。鎮静下に経口気管挿管・人工呼吸管理とし,高カリウム血症に対してグルコン酸カルシウムの静脈内投与とグルコース・インスリン療法を開始した。初療室で心室細動となったため,電気ショックを含めた心肺蘇生術を開始し,ECPR目的にVA–ECMOを導入した。ECPR施行後に心静止となったため,経静脈ペーシングも導入した。ICUに入室後は血液浄化療法でカリウムの補正に努めた。しかしながら,安定した自己心拍の再開は得られず,多臓器不全のため来院18時間後に死亡確認となった。オオミフクラギの種子は南アジアや東南アジアでは他殺や自殺目的に使用される自然毒として一般的である。その主たる毒性成分であるケルベリンは致死的な不整脈や高カリウム血症を惹起する高い心毒性を有することが知られている。そのうえ特異的な拮抗薬はなく,治療法も確立していない。我が国では報告例も少なく,非常に重篤な経過をたどる可能性が高いため,ケルベリン中毒を認知しておくべきと考える。
要旨 【目的】 我々は初期波形が心室細動(VF)の心停止症例に対して積極的にextracorporeal cardiopulmonary resuscitation(ECPR)を導入しているが,病院前で波形が無脈性電気活動(PEA)もしくは心静止(asystole)に変化した症例はECPRを導入したとしても生存率が低いことを経験している。今回,ドクターカー出動現場での情報と病院到着までの波形変化でECPR導入後の生存退院率を予測可能か検証する目的で当研究を行った。 【対象】 2015年4月~2018年3月に千里救命救急センターからドクターカーで出動した院外心停止患者の診療情報を抽出し,初期波形がVFでECPRを導入した41例について後方視的検討を行った。 【結果】 41例のうち退院時生存は14例で死亡は27例であった。背景因子を比較すると病院到着時の波形に有意な差があり,生存群ではVFが92.9%に対し,死亡群では40.7%と生存群でVFが有意に多かった。性別,目撃者の有無,バイスタンダーCPRの有無に関しては両群で差はなかった。傾向スコアマッチングを用いて背景因子を調整して検討を行ったところ,来院時VF群で生存退院率は有意に高かった。 【結語】 初期波形VFの院外心停止患者が病着までにPEAもしくは asystoleに波形変化した場合,たとえECPRを導入しても生存退院率は低い。
要旨 症例は51歳の女性。救急搬送前日より口唇や口腔内の腫脹を自覚。当日は朝から顔面・頸部の腫脹が続き,窒息様の仕草の後に倒れたため救急要請となった。救急隊到着時,家族がCPR実施中であり,CPAを確認。波形はPEA,徐脈であった。当院ドクターカー医師が到着し,喉頭展開すると咽喉頭浮腫による気道閉塞を認めた。声帯は可視できなかったが急峻なJ型に挿管チューブを形成し,経口気管挿管を試みた。声門と思われる位置で抵抗を感じたが挿管に成功した。自己心拍再開し当院搬送となった。気管支鏡検査で喉頭蓋・声門周囲の浮腫は著明であったが感染を疑う所見は乏しく,以前から誘因なく顔が腫れることがあったという既往と同様の症状を肉親も有するという家族歴より遺伝性血管性浮腫(HAE)を疑い検査を行ったところ,C4 1.3mg/dL, C1–INH活性 25%以下と共に低値であった。血管浮腫情報センター(CREATE)に遺伝子解析を依頼したところ,遺伝子の変異を認めHAEと診断された。集中治療管理を継続したが残念ながら脳蘇生が得られず死亡退院となった。HAEは未だ一般の認知度が低く迅速診断法がないこと, C1–INH製剤を常備する医療機関が限られていることなど課題も多い。しかし,早期の診断と適切な気道管理がなされれば血縁家族の罹患発見にも繋がり,心停止は回避可能な疾患である。