【目的】橈骨遠位端骨折後にビスホスホネート(BP)による治療が行われた患者の二次骨折発生率を調査し,二次骨折発生危険因子を明らかにすることである.【対象と方法】橈骨遠位端骨折後にBPを投与し3年以上経過観察可能であった閉経後女性92例(73.6±8.9歳,BMI 22.3±3.7 kg/m²,腰椎骨密度0.71±0.15 g/cm²,大腿骨骨密度0.53±0.1 g/cm²)を対象.経過観察期間中の二次骨折発生率,発生時期や部位を調査し,二次骨折あり群となし群で比較した.【結果】二次骨折は23.9%に認め,初回骨折後2年以内に68.2%に発生.発生部位は上肢35.7%,椎体35.7%,下肢14.2%.二次骨折あり群はなし群と比較して,有意に高齢でBMIや大腿骨骨密度が有意に低かった.多変量解析では年齢(OR 1.11,95%CI:1.02-1.21)が二次骨折発生の有意な危険因子であった.【考察】高齢者における二次骨折予防には,短期間に骨折予防効果が期待できる骨粗鬆症治療薬の選択が必要である.
神経鞘腫は単純MRIにて比較的容易に認識でき,さらにガドリニウム(Gd)造影効果により他の腫瘍とも鑑別できることが多い.今回明らかなGd造影効果を認めないため脊柱管内嚢腫病変との鑑別が十分にできず,手術によって神経鞘腫と診断できた1例を経験したので報告する.症例は73歳男性,半年前に左殿部痛を自覚し当院を受診した.MRIにてL4/5レベルの脊柱管内にT1強調像およびT2強調像で均一な高信号を呈する長径13 mmの卵円形病変を認めた.腫瘤の実質部分は認めずGd造影効果も認めないため嚢腫病変を疑った.一旦症状は消失したが,3ヶ月後に両大腿後面痛が出現,再度のMRIで腫瘤は不均一な高信号に変化していた.脊髄腫瘍内出血を疑い,L4椎弓切除+腫瘤摘出術を施行した.術後,両下肢痛は速やかに改善した.術後の病理組織検査にて嚢胞変性し出血を伴った脊髄神経鞘腫と診断された.
【症例】90歳女性.ADL:車椅子レベル.右大腿骨転子部骨折に対し観血的骨接合術施行後,車椅子移乗レベルで施設へ退院.術後5ヶ月時に特に誘因なく右股関節痛が出現.単純X線像では骨折部の骨癒合を認め,MRI検査で大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)と診断した.6週間の患肢免荷の後に右股関節痛は改善,免荷開始から8ヶ月後(術後13ヶ月)のMRI検査で信号変化は消失していた.【考察】大腿骨転子部骨折術後の大腿骨頭壊死,骨頭下骨折の報告は散見されるが,我々の渉猟し得る限り,SIFの報告はない.今まで報告されている症例の中にもSIF症例が混同されている可能性が示唆され,早期に診断・治療を行うことで骨頭圧潰の進行を予防することができる可能性がある.
【はじめに】大腿骨近位部骨折は脆弱性骨折の代表的疾患で要介護の原因であるとともに,その後に続発する骨折も問題である.【目的】大腿骨近位部骨折後の続発骨折発生リスク因子を明らかにすること.【対象と方法】2018年3月から2020年5月までに当院で手術を行った大腿骨近位部骨折281例中,1年以上経過観察可能であった閉経後女性123例を対象とした.初発骨折率,続発骨折発生率,発生時期および骨折部位,続発骨折あり群となし群の比較検討を行った.検討項目は年齢,BMI,骨密度,P1NP,TRACP-5b,内服薬数,骨粗鬆症治療介入率とした.統計はMann-Whitney U検定およびχ2乗検定を用い,有意水準5%未満を有意差ありとした.【結果】大腿骨近位部骨折後の続発骨折発生率は27.6%であった.1年以内続発骨折あり群となし群で単変量解析を行うとTRACP5bと骨粗鬆症治療介入率で両群間に有意差を認めた.続発骨折の発生を目的変数,TRACP-5b,骨粗鬆症治療介入率を説明変数として多変量解析を行うと骨粗鬆症治療介入率のみが有意な説明変数となった.【結語】閉経後女性の大腿骨近位部骨折後の続発骨折は27.6%に発生していた.積極的な骨粗鬆症治療を行うことで大腿骨近位部骨折後の続発骨折を予防できる可能性がある.
画像検査で診断できなかった肩関節滑膜軟骨腫の症例を経験したので報告する.症例は62歳男性.誘引なく左肩痛が出現し,半年間改善ないため当院を受診した.初診時は可動域制限,インピンジメント症状を強く認めた.X線,単純CT検査では明らかな所見はなく,超音波,MRI検査では腱板損傷を疑う所見を認めた.保存治療も無効であったため関節鏡手術を行った.鏡視では棘上筋の滑液包面損傷を認めたが,完全断裂は認めなかった.術中に棘上筋筋膜上に軟骨様の5 mm大の腫瘍病変2つ認め,肩峰下で嵌頓しており摘出した.病理検査では滑膜間質に硝子軟骨の増生を認め滑膜骨軟骨腫症の診断となった.術後3日で疼痛も消失し,屈曲150°以上可能となった.画像検査で診断が困難であった滑膜骨軟骨腫症に対して,短期ではあるが良好な術後成績を得ることができた.
びまん性特発性骨増殖症(DISH)に伴う胸椎椎体骨折に加え,肋間動脈損傷による血胸を合併した症例を経験したので報告する.症例は91歳男性.階段5段からの転落による背部打撲で体動困難となり救急搬送され,X線および単純CTにてびまん性の脊椎強直とTh11椎体骨折,Th10,11棘突起骨折を認めた.また単純CT上,右胸水貯留があり造影CTでは肋間動脈からの造影剤漏出および血胸水の増加を認めたため血管内治療目的に他院紹介となった.転院先では活動性出血なく胸腔ドレーン留置での観察となった.当院再入院後にTh8-L4の後方固定術を施行し,術後経過は良好である.DISH症例では軽微な外傷で椎体骨折を起こし易いことに加え,肋間動脈損傷による血胸を生じる可能性を念頭におく必要がある.
有頭骨単独骨折は舟状骨骨折と同様に単純X線検査のみで診断することが困難な骨折である.今回,診断の遅れから遷延癒合を生じた有頭骨単独骨折を経験し,2本のheadless compression screwと腸骨移植術を行い良好な結果を得たので報告する.症例は16歳 男性.転倒し右手をついて受傷.右手背の圧痛,腫脹を認め近医を受診し打撲と診断され外固定を行わず経過観察を行った.その後も疼痛の改善を認めず,受傷3か月後のMRI検査,CT検査にて骨壊死を伴わない有頭骨遷延癒合と診断し手術を行った.有頭骨遷延癒合部を搔爬,新鮮化した後,骨欠損部に自家骨移植を行い2本のheadless compression screwにて固定し術後4週間の前腕シーネ固定を行った.術後6か月経過し,可動域制限と筋力低下を認めず,骨癒合を確認できた.有頭骨単独骨折後の遷延癒合の原因として,診断・治療の遅れが挙げられる.早期診断と治療のために積極的な手根骨CT及びMRIの撮影が有用である.また,有頭骨遷延癒合に対しては,自家骨移植とheadless compression screw固定が有用であった.