◎利尿薬は,体液貯留(volume overload)による呼吸困難,下腿浮腫・腸管浮腫など臓器浮腫の改善に有用である.なかでもループ利尿薬はジギタリスとともに非常に古くから使用されており,β遮断薬やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬による心不全治療のパラダイムシフトが起こった現在においても,臓器浮腫の改善のために使われつづけている.しかし,心不全の標準治療薬としてβ遮断薬,RAAS 阻害薬に豊富なエビデンスがある一方で,ループ利尿薬には心不全患者の予後改善を示した臨床試験はほとんど報告されていない.むしろ予後を悪化させている可能性を示唆する知見すら散見されている.しかし,現時点でループ利尿薬が本当に予後を悪化させているのか否かは明らかになっていない.また,ループ利尿薬にはループ利尿薬抵抗性や低ナトリウム(Na)血症という問題もある.このような状況で,バゾプレシンV2 受容体拮抗薬であるトルバプタンは,①ループ利尿薬の使用量を減らしうる,②ループ利尿薬抵抗性の状態でも利尿をはかれる,③低Na 血症を是正する,という視点で評価されている.本稿では,そもそもなぜループ利尿薬が心不全患者の予後悪化をきたしうるのかを概説し,心不全診療における利尿薬の問題点について考えたい.
目的:収縮不全心では心機能の悪化に伴い左室内腔形態は細長から球形へと変化する.一方,拡張不全心(heart failure with preserved EF: HFPEF)における左室内腔形態については明らかではない.HFPEFにおける左室内腔形態と予後との関連について明らかにすることを目的とした.対象と方法:急性心不全にて入院となり軽快退院したHFPEF 患者(左室駆出率≧50%)52人(男性29名,平均72±10歳)を対象とした.心エコー検査にて心尖部四腔像における左室長径を短径で除した値(sphericity index: SI)を算出し,左室内腔形態の指標とした.総死亡とうっ血性心不全による再入院をエンドポイントとして予後を検討した.結果と考察:平均690日の観察期間の間に14人にエンドポイントを認めた.Kaplan-Meier曲線では球形群(SI≦1.7)が楕円群(SI>1.7)より死亡・心不全による再入院が多く予後不良であった(log-rank, p<0.05)多変量ロジスティック回帰解析では,SI≦1.7が唯一の予後規定因子であった.結論:HFPEFにおいても左室内腔形態が球形に近いほど予後不良であり,左室内腔形態により予後を予測出来る可能性が示唆された.