◎利尿薬は,体液貯留(volume overload)による呼吸困難,下腿浮腫・腸管浮腫など臓器浮腫の改善に有用である.なかでもループ利尿薬はジギタリスとともに非常に古くから使用されており,β遮断薬やレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)阻害薬による心不全治療のパラダイムシフトが起こった現在においても,臓器浮腫の改善のために使われつづけている.しかし,心不全の標準治療薬としてβ遮断薬,RAAS 阻害薬に豊富なエビデンスがある一方で,ループ利尿薬には心不全患者の予後改善を示した臨床試験はほとんど報告されていない.むしろ予後を悪化させている可能性を示唆する知見すら散見されている.しかし,現時点でループ利尿薬が本当に予後を悪化させているのか否かは明らかになっていない.また,ループ利尿薬にはループ利尿薬抵抗性や低ナトリウム(Na)血症という問題もある.このような状況で,バゾプレシンV2 受容体拮抗薬であるトルバプタンは,①ループ利尿薬の使用量を減らしうる,②ループ利尿薬抵抗性の状態でも利尿をはかれる,③低Na 血症を是正する,という視点で評価されている.本稿では,そもそもなぜループ利尿薬が心不全患者の予後悪化をきたしうるのかを概説し,心不全診療における利尿薬の問題点について考えたい.