高齢胃癌手術において, 術前の筋肉量の減少, サルコペニアが重篤な術後合併症発生のリスク因子であり, 予後不良因子であるというデータが多数報告されてきた.また, 術後1カ月時点での除脂肪体重の減少5%以上が術後補助化学療法のコンプライアンス低下や不良な無再発生存期間と相関することも報告されており, 術前・術後に筋肉量や筋力, 身体機能の評価が重要であるという認識が広がっている.われわれのグループで行ってきた観察研究や, 「術前栄養+エクササイズプログラム」について解説し, 現在行っているリハビリ+栄養療法(リハ栄養)のランダム化比較試験について紹介する.効果的に筋肉量を増加させるリハ栄養の開発, 術前の介入(プレハビリテーション)によって, 徐々に進行していく高齢者の筋力低下をベースラインから底上げし, 術後の継続したリハビリによって, 周術期の急激な筋力・筋肉量の低下を阻止できるのか, またそれによって原疾患の治療成績は改善するのか, きちんとデザインされた大規模なRCTで検証すべき問題である.
大阪大学医学部附属病院(阪大病院)は,「Futurability 待ち遠しくなる未来へ」のコンセプトのもと,“病院にかかわるすべての人が待ち遠しくなるような病院”をめざしている1).2018 年には内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム「AI ホスピタルによる高度診断・治療システム」(以下,AI ホスピタル)に採択され2),人工知能(AI)を病院のさまざまな場に実装する「AI 基盤拠点病院」の構築をめざし,大阪大学医学部附属病院AI 医療センターを開設して,病院のAI 化をすすめている.本稿では,AI ホスピタル事業において,当院と特に消化器外科領域が取り組んでいる診断・治療システムプロジェクトについて,外科医の視点から現状と今後の展望を解説する.
近年の外科手術における低侵襲化の流れは急速な拡大をみせ,大腸癌手術領域でも腹腔鏡下手術は大きな潮流の一つとなっている.本邦では,内視鏡外科手術の健全な普及と進歩をうながし,国民の福祉に貢献することを目的とし,日本内視鏡外科学会によって内視鏡手術の技術認定制度が創設された.2004 年から大腸外科領域で技術認定審査が開始され,現在ではS 状結腸切除術が課題術式の一つとなっている.腹腔鏡下S 状結腸切除術には,腹腔鏡下大腸切除術の基礎となる要素が多く含まれており,マスターすべき手術といえる.本稿では,技術認定取得に必要なエッセンスを説明する.
cT2~T4 の食道胃接合部癌を対象とした多施設共同前向き試験の結果によると,食道浸潤長が4 cm を超える場合は上中下縦隔リンパ節郭清が必要であるため右開胸アプローチによる食道亜全摘が,食道浸潤長が2 cm 以下の場合は下縦隔リンパ節郭清が原則不要であるため経裂孔アプローチによる下部食道切除が推奨される.食道浸潤長が2.1~4 cm の場合はNo.110 のみの下縦隔郭清で十分であるため経裂孔アプローチによる下部食道切除でよいと考えられるものの,下縦隔内吻合で縫合不全を起こした場合には重篤となりうるため,そのリスクを十分に考慮したうえで術式を選択すべきである.