SHRSP (stroke-Prone Spontaneously Hypertensive Rats) は重篤な高血圧を原因として脳卒中を多発し, 動脈は著しい障害を受け構築素材の質的, 量的変化を来す. すでにエラスチン, コラーゲン, 酸性ムコ多糖については報告したが, 本稿では動脈の重要は成分であり, 結合織代謝に関与する平滑筋細胞, 核DNAをとりあげWKY (Wistar Kyoto) 対比のもとにSHRSP年齢特性について組織学的考察と顕微分光測光法による組織化学的定量をおこない高血圧性動脈障害の評価に重要な示唆をえた.対象方法: 対象は日齢60日から600日までSHRSP 99例, WKY 48例, 計147例の胸部大動脈である. 平滑筋細胞の染色法, 波長特性は Azocarmin G, 545nm, 同じく核DNAは schiff, 512nm, 570nm (2波長法) で各々の含量% Extinction を算出した.成績: 1. WKY平滑筋細胞は生後より300日代まで29.9%Eから53.8%Eに増量, 400日以降漸減 (48.4%E) する.2. SHRSP平滑筋細胞は100日未満 (35.0%E) から200日代 (74.3%E) にかけ急増, 400日でさらに増量 (77.8%E) する.3. WKY核DNAは100日未満 (96.5AU) から200日代 (167.9AU) に増量, 以後減量する.4. SHRSP核DNAは100日未満 (161.7AU) で増量し, 300日代 (178.7AU) まで増量以後漸減する.5. SHRSPの平滑筋細胞動態と核DNA合成能はWKYに比し異常であり, すでに報告したエラスチン, コラーゲン, 酸性ムコ多糖, 糖蛋白代謝異常とともに高血圧に起因することは明らかである.
脳動脈硬化の早期発見を目的とし, 脳動脈硬化に先行し動脈硬化性病変が出現する総頚動脈の管軸方向弾性特性の分布を計測した. 対象は50代, 60代の健常群30例, 脳梗塞群40例, 計70例である. 計測部位は総頚動脈鎖骨直上部より頚動脈洞までを4等分し, 頚動脈洞(E部)および中枢側D, C, B部の計4点である. 計測パラメータは stiffness parameter βである. βは応力-歪構成法則を指数函数であらわした場合の指数係数で数値の大なる程血管が変形しにくい, すなわち機能的に硬いことを意味する. 臨床的にはβは次式よりえられる. β=(lnPs/Pd)・Dd/(Ds-Dd)(Ps: 最大血圧, Pd: 最小血圧, Ds, Dd各々の口径). 血管径の計測装置は超音波変位計を用いた. 本装置は超音波エコーの位相を追跡するシステムを採用し変位量に対し高い計測精度を有している. これよりえられた口径変位波形から最小血圧時口径Dd, 最大血圧時口径Ds, 変位振幅ΔDをもとめた. また血圧は圧力トランスジューサーを用いた上腕動脈圧の間接的測定法により求めた.総頚動脈管軸方向口径分布をみると, 各群各年代ともB, C, D部に比し頚動脈洞E部の口径が約20%大であった. 又脳梗塞群は健常群に比べ各部位の口径とも大であった. 口径変位は各部位間に明らかな差はみとめないが, 脳梗塞群は健常群に比べ小であった. 一方管軸方向のβ分布をみると, 健常群では50代, 60代とも総頚動脈の各部位(B, C, D部)のβはほぼ一定で, 頚動脈洞部は他部位に比し17~18%大である. 脳梗塞群ではこの傾向はさらに増強し, 頚動脈洞は総頚動脈に比し33~37%大となる. 又, 脳梗塞群βは各年代各部位とも健常群に比し明らかに高値を示し有意差をみとめるが特に頚動脈洞部では45~63%大であった.以上超音波変位計により非観血的に計測された総頚動脈管軸方向β分布特性から生理的脈動流下での力学的な機能特性を評価し, 脳動脈硬化を推定する本法は, 間接的脳動脈硬化診断法として有効である.
岡本らにより開発された脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) は発育早期より重症の高血圧を遺伝的, 家族的に認め, ほぼ90%に脳卒中を発症する. この高血圧性動脈病変を解明する一法として大動脈における中膜結合識, 特にエラスチン, コラーゲンを顕微分光測定法 (microspectrophotometry, MSP) を用い組織化学的に定量し Wistar-Kyoto (WKY)と対比のもとに年齢推移を検討した.対象・方法対象は年齢36日から622日までSHRSP 243例, WKY 44例, 計287例の大動脈胸部で, SHRSP中112例は脳卒中群, 他は非卒中群である. エラスチン は Weigert 染色, コラーゲンは Van Gieson 染色を施し, 各々最大吸光度波長特性は590nm, 563nmで中膜含有量を測定した. エラスチン, コラーゲンのMSP法による測定の基礎的問題はすでに検討し, Lambert Beer の法則適用のもとに定量法は確立している.成績1. WKY 44例, SHRSP 287例の胸部大動脈中膜組織エラスチン, コラーゲンの年齢推移をMSP法で定量, 比較検討した.2. WKYエラスチン, コラーゲンの年齢推移はほぼ同じ動態を示し, 生後150~200日まで動脈成長と共に増量, 以後加齢により漸減する.3. SHRSPエラスチン, コラーゲンの年齢推移は生後すでに異常増生反応があり, 300日まで急減する一群 (severe hypertension) と300日以降漸減する一群 (moderate hypertension) でその結合識代謝の動態は異なる. 又両群を通して150日前後を境としWKYとの量的関係は逆転する.4. SHRSP脳卒中群の両結合識は150日以上350日未満で非卒中群に比し有意の低値を示す.5. SHRSPにおけるエラスチン, コラーゲン代謝は病的な推移を辿りつつその増減に正の相関(r=0.614) を認める.