【背景】中條—西村症候群は,昭和14年中條博士が報告した,明らかな誘因のない全身性炎症をきたす疾患である.本疾患はプロテアソーム機能低下症であった.プロテアソームは,ポリユビキチン化蛋白質を選択的差別的に分解する.皮膚生検ではポリユビキチン化蛋白質の蓄積と単球の浸潤を認める.MCP-1は重要な単球走化性因子である.AP-1は,c-Fos, c-Jun, ATF, JDPファミリーが構成する,炎症性サイトカインの転写因子である. 【目的】中條—西村症候群患者の炎症機序の解明 【方法】健常者と患者由来培養細胞のMCP-1発現を定量PCRとELISAで比較した.正常者由来培養細胞をプロテアソーム阻害剤処理後に経時的にc-Jun・c-Fos・FosB・FosL1の発現を定量した. 【結果】患者細胞では健常者細胞よりもMCP-1 mRNA発現量と培養上清中への蛋白質分泌量が増加していた.プロテアソーム阻害によりAP-1構成蛋白の発現量が上昇した. 【考察】本疾患皮膚病変での皮膚線維芽細胞が産生するMCP-1は単球浸潤に関与している可能性が示唆される.プロテアソームの機能低下は,AP-1複合体構成蛋白の発現量に影響することで,サイトカインの遺伝子発現制御に関与していることが考えられる. 【結論】失われて初めてわかるプロテアソームの正常機能を理解することは,本邦特有の自己炎症症候群の新たな治療法開発のみならず,炎症を呈する他の疾患制御戦略の新展開に貢献出来ると期待される.
中條-西村症候群は,昭和14年に本邦で初めて報告された,皮疹,脂肪萎縮(リポジストロフィー),筋萎縮,手指を中心とした関節症状,大脳基底核の石灰化,発熱,高ガンマグロブリン血症などを特徴とする常染色体劣性遺伝形式の自己炎症症候群である. 私たちは,最初の報告から70年目の平成21年にGeneChipアレイを用いたSNPsによるhomozygosity mappingで遺伝子座(6p21.31-32)と疾患遺伝子(PSMB8)を同定した.アミノ酸置換を伴う点変異(G201V)であり,免疫プロテアソームの一つのコンポーネントの異常でプロテアソーム形成不全をきたし,3種類のプロテアーゼ活性が低下していた. 次に,多彩な症状を示す本疾患の病態を検討した.患者血清中のサイトカイン・ケモカインは,IL-6, IP-10, MCP-1, G-CSFが有意に上昇,患者線維芽細胞・末梢血の検討では,NF-kB非依存性であり,ユビキチン化蛋白の蓄積,リン酸化p38の蓄積(核内)を認めた.患者線維芽細胞では,LPS刺激で著明に活性酸素種(ROS)の産生・蓄積がみられた. 近年,欧米から似た疾患(JMP症候群,CANDLE症候群)が報告され,ともにPSMB8の変異に起因するプロテアソーム機能不全症であった.世界に先駆けて本邦で発見されたこの病気の解析から,免疫プロテアソームの新しい役割が解明されつつある.