【目的】シェーグレン症候群(SS)とHTLV-Iとの疫学的関連性や唾液腺での二次濾胞形成発現などの特徴が明らかになった.HTLV-IのSS唾液腺培養上皮細胞(SGEC)に対する直接的影響について検討を行った.【方法】抗HTLV-I抗体陰性SS患者由来のSGECとHTLV-I感染培養株HCT-5との共培養を行い,上清・ライセートの抗体アレイ解析を行った.HTLV-I DNA発現検討は,HTLV-I pX領域に対するプライマーを用いたin situ PCRを用いた.共培養SGECについて蛍光染色,ウエスタンブロット(WB)でのHTLV-I関連蛋白発現を検討し,上清のenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)解析を行った.【結果】HCT-5はNF-kB核内移行を伴っていた.共培養72-96時間でHTLV-I関連蛋白発現が見られ,HTLV-I DNAは48時間以降SGEC核内に検出された.96時間共培養上清ではアレイ解析にてICAM-1,RANTES,IP-10などが経時的に増加し免疫染色で確認した.ライセート半定量ではチトクロームCやFasなどアポトーシス誘導分子およびBcl-2,HO-2,HSP-27などアポトーシス抑制分子の両者が経時的に増加した.WBではHCT-5の混入が示唆されたため,免疫染色でライセートで増加した分子の発現を確認した.TUNEL染色では共培養中のアポトーシス増加はみられなかった.【結語】共培養により接着・遊走などに関わる液性因子やアポトーシス関連分子の動きが確認された.またHTLV-Iはin vitroではSGECに感染可能であることが示唆された.
【背景】関節リウマチ(以下RA)においてMRI骨炎は診断およびX線予後予測に重要な所見である.MRI骨炎は治療の経過で,出現・増悪や減少・消失する.【目的】RA治療によるMRI骨炎の経過がX線進行に及ぼす影響を検討した.【方法】長崎大学早期関節炎クリニックを受診したRA76名を対象とし,関節MRIを2回以上施行,1年間フォローアップした.初診時あるいは経過中に出現したMRI骨炎の推移をパラメーターとし,1年後のX線進行をアウトカムとした.Δシャープスコア1以上をX線進行と定義した.X線進行の有無で単変量解析を行い,統計的に有意な項目を用いて多変量解析を行った.【結果】Δシャープスコアは,初診時RAMRIS滑膜炎スコアと罹病期間と相関を認めた.単変量解析では,X線進行は,以下の項目で有意差を認めた:性別,初診時抗CCP抗体陽性,RF陽性,MMP-3,DAS28CRP,SDAI,RAMRIS骨炎スコア,RAMRIS骨びらんスコア,Genant-modified Sharp score,RAMRIS骨炎スコア減少率,全経過中のMRI骨炎,経過中のMRI骨炎の消失あるいは出現なし.多変量解析の結果,初診時MRI骨炎あるいは全経過中のMRI骨炎がX線進行に寄与する項目であった.【結論】X線進行には,初診時MRI骨炎あるいは全経過中のMRI骨炎の寄与が示唆された.
目的:長崎大学早期関節炎コホートを用い,関節リウマチ(以下,RA)のMRI骨炎の有無や経過と関節予後との関連を明らかにする. 方法:長崎大学早期関節炎コホートで罹病期間2年以内のRAを2年間フォローアップし,初診時と1年毎に関節所見,炎症マーカー(CRP, MMP-3), HAQ, modified Genant-Sharp score(以下,mGSS),手指関節MRIを施行した.Xp進行の有無をアウトカムとし,統計学的解析を行った. 結果:対象は43名,%女性84%,平均罹病期間5.2ヶ月,平均年齢52.7歳,RF陽性76.7%,APCA陽性100%,初診時MMP-3陽性65.0%,初診時mGSS 2.30,初診時MRI骨炎39.5%,全経過中MRI骨炎62.8%,Xp進行46.5%に認めた.初診時マーカーではMRI骨炎が,経過中では1年後MRI骨炎が2年後のXp進行に寄与していた. 結論:初診時MRI骨炎が,RA関節破壊を予測することは知られていたが,今回経過中のMRI骨炎もXp進行に寄与していた.
【背景】中條—西村症候群は,昭和14年中條博士が報告した,明らかな誘因のない全身性炎症をきたす疾患である.本疾患はプロテアソーム機能低下症であった.プロテアソームは,ポリユビキチン化蛋白質を選択的差別的に分解する.皮膚生検ではポリユビキチン化蛋白質の蓄積と単球の浸潤を認める.MCP-1は重要な単球走化性因子である.AP-1は,c-Fos, c-Jun, ATF, JDPファミリーが構成する,炎症性サイトカインの転写因子である. 【目的】中條—西村症候群患者の炎症機序の解明 【方法】健常者と患者由来培養細胞のMCP-1発現を定量PCRとELISAで比較した.正常者由来培養細胞をプロテアソーム阻害剤処理後に経時的にc-Jun・c-Fos・FosB・FosL1の発現を定量した. 【結果】患者細胞では健常者細胞よりもMCP-1 mRNA発現量と培養上清中への蛋白質分泌量が増加していた.プロテアソーム阻害によりAP-1構成蛋白の発現量が上昇した. 【考察】本疾患皮膚病変での皮膚線維芽細胞が産生するMCP-1は単球浸潤に関与している可能性が示唆される.プロテアソームの機能低下は,AP-1複合体構成蛋白の発現量に影響することで,サイトカインの遺伝子発現制御に関与していることが考えられる. 【結論】失われて初めてわかるプロテアソームの正常機能を理解することは,本邦特有の自己炎症症候群の新たな治療法開発のみならず,炎症を呈する他の疾患制御戦略の新展開に貢献出来ると期待される.
中條-西村症候群は,昭和14年に本邦で初めて報告された,皮疹,脂肪萎縮(リポジストロフィー),筋萎縮,手指を中心とした関節症状,大脳基底核の石灰化,発熱,高ガンマグロブリン血症などを特徴とする常染色体劣性遺伝形式の自己炎症症候群である. 私たちは,最初の報告から70年目の平成21年にGeneChipアレイを用いたSNPsによるhomozygosity mappingで遺伝子座(6p21.31-32)と疾患遺伝子(PSMB8)を同定した.アミノ酸置換を伴う点変異(G201V)であり,免疫プロテアソームの一つのコンポーネントの異常でプロテアソーム形成不全をきたし,3種類のプロテアーゼ活性が低下していた. 次に,多彩な症状を示す本疾患の病態を検討した.患者血清中のサイトカイン・ケモカインは,IL-6, IP-10, MCP-1, G-CSFが有意に上昇,患者線維芽細胞・末梢血の検討では,NF-kB非依存性であり,ユビキチン化蛋白の蓄積,リン酸化p38の蓄積(核内)を認めた.患者線維芽細胞では,LPS刺激で著明に活性酸素種(ROS)の産生・蓄積がみられた. 近年,欧米から似た疾患(JMP症候群,CANDLE症候群)が報告され,ともにPSMB8の変異に起因するプロテアソーム機能不全症であった.世界に先駆けて本邦で発見されたこの病気の解析から,免疫プロテアソームの新しい役割が解明されつつある.