要旨 出血性十二指腸潰瘍の主たる責任動脈は,胃十二指腸動脈および上腸間膜動脈から分枝する膵十二指腸動脈系である。今回我々は,十二指腸潰瘍が胆嚢動脈へ穿通し,血管内治療を要した稀な1例を経験したため報告する。症例は70歳代の男性。遠位胆管癌による閉塞性黄疸のため前医入院中に,出血性十二指腸潰瘍と急性腎不全を併発し集中治療目的に当院へ紹介となった。前医で十二指腸球部の露出血管に内視鏡的クリッピング術が施行されていたが,完全な止血は得られていなかった。当院搬入後の緊急内視鏡でも多量の血餅の存在から視野が確保できず,血管造影を施行した。上腸間膜動脈,胃十二指腸動脈造影では血管外漏出像を認めず,胆嚢動脈造影で十二指腸内腔まで造影される血管外漏出像を認め,NBCAを用いて塞栓し止血を得た。凝固障害を呈しており,止血術と輸血により凝固能を改善させた後,第2病日に胆嚢摘出術および十二指腸潰瘍部穿孔に対する大網充填術を施行した。術後全身状態の安定化を得た後に,遠位胆管癌に対する加療目的に第19病日に消化器外科へ転科した。本症例の責任病変は十二指腸の栄養血管ではなく,隣接する胆嚢の栄養血管であった。胆嚢動脈が出血性十二指腸潰瘍の責任動脈であることは稀である。胆嚢動脈からの出血は内視鏡止血が困難であり,血管内治療と手術を前提とした治療戦略の構築が有用である。