転移乳癌において末梢血液中の末梢循環がん細胞(circulating tumor cell:CTC)の存在は予後不良の指標である.CTC の変化は治療効果予測に有用である.CTC は原発巣とは異なる表現型を有する.すなわち,エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR)の発現頻度は低く,ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)およびtriple negative の頻度は高い.CTC は間葉系細胞または幹細胞の性質を持つ.CTC および骨髄のdisseminated tumor cell(DTC)はがん前駆細胞として存在し,遠隔転移を引き起す.CTC / DTC の生物学的特性を理解し,これらの微小がん細胞を制御することは新たな治療戦略となる.
アンスラサイクリン,タキサン,トラスツズマブは乳癌全身化学療法の中心薬剤である。その後の標準治療としてカペシタビン,S-1,ビノレルビン,イリノテカン,ゲムシタビンがある。タキサン抵抗性乳癌に対してもイキサベピロン,アルブミン結合型パクリタキセルが有効である。HER2 陽性乳癌のトラスツズマブ耐性例に対してはラパチニブが効果を示し,脳転移にも有効である。トラスツズマブ-DM1,ペルツズマブ,ネラチニブが有望な薬剤である。血管新生抑制剤としてベバシズマブはタキサンとの併用において有効であり,その他アキシチニブ,スニチニブ,パゾパニブなどが研究中である。今後,これらの薬剤の最善の投与順序,併用の可否を検討する必要がある。