この20年近く,日本心理学会(日心)は高校生に対する心理学教育の可能性を検討し,夏休みには高校生に向けた講座などを実施してきた。すでに,初等中等教育の教科によっては心理学的な内容が含まれているが,児童生徒はそれらを心理学とは認識していないと思われる。あらためて,心理学を組織的・体系的に取り扱い,人間理解や学習・生活の改善に生かしてほしい,また,大学等に向けて進路選択の一助としてほしいというのが意図であった。そして今,2つの大きな動きがある。一つは,日心としてインターネット上に心理学に関するコンテンツを充実させていこうという流れである。たとえば,大学生や一般社会人向けの解説「心理学ミュージアム」や,高校生講座のオンデマンド化がある。それらと連携協力する形で,高校生や高校教員が利用しやすいものにする方向性が考えられる。また,もう一つは,学習指導要領の改訂に伴って2022年から実施される高校の教育課程では,公民科の中の公共と倫理に,心理学的な内容がはいるようになったことである。これを機に,高校の各教科の中での心理学導入をさらに考えたい。本シンポジウムでは,「高校心理学教育小委員会」の委員である市川,楠見,池田に加えて,日心のコンテンツ充実の視点から大久保街亜氏,公民科を担当する高校教員の視点から村野光則氏に指定討論をお願いした。今後,心理学(者)は何をするのかを議論していきたい。
現在,世界は新型コロナウイルス感染症の感染拡大という未曾有の危機に直面しています。それだけでなく様々な自然災害にも苦しんでいます。この3カ国シンポジウムを共催する中国,韓国,そして日本も同様です。3カ国とも,世界的な気候変動のために生じたと考えられる大型台風や干ばつなどの気候災害に悩まされています。さらに中国と日本は四川大地震や東日本大震災を経験しました。様々な危機に心理学が果たす役割は甚大です。危機における心理を理解し,適切な支援につなげ,復興を目指す人々の心を支える役割を心理学は担っています。このような心理学の役割について検討するため,今回のシンポジウムを企画しました。シンポジウムでは中国,韓国,日本それぞれの国から2名ずつ,計6名の登壇者がクライシスとレジリエンスについて最新の知見を報告します。コロナ禍における感染予防行動と外国人排斥行動といった心理的な変化や,その状況下におけるレジリエンスとその世代差,そして,心理支援における各国の取り組みなど,新型コロナウイルス感染症の感染拡大がもたらした心理的な変化,そして,それを乗り越えるための施策を中心に,危機を乗り越え,レジリエンスを築き,前に進むことを目指す研究成果を紹介します。日本心理学会,韓国心理学会,中国心理学会は,2014年より毎年持ち回りで「三カ国シンポジウム」を開催しており,今年度は日本心理学会がオーガナイザーを務めることになりました。東アジアの心理学の発展をこのシンポジウムでぜひ体験してください。