要旨広範囲熱傷患者は容易に低体温に陥り,その時の熱産生能力が患者の生命予後と関与している。自力で熱産生することができない熱傷患者を復温させることは非常に困難である。しかし,近年,直接血液を加温する装置(中心静脈留置型経皮的体温調節システム)が軽量・簡易化されており,迅速に復温させることが可能となった。今回我々は,低体温に陥り復温困難であった重症熱傷症例に対して,この装置を用いて迅速な復温と体温管理を行い,救命することができたので報告する。症例はburn index 33,prognostic burn index 95の広範囲熱傷患者(62歳の男性)が,第8病日に熱傷感染創が原因で敗血症性ショックに陥り,当院に転院となった。来院後,ガーゼ交換後に38.5℃から34.8℃まで急激に体温が低下した。通常の加温では復温困難であったため,予定していたデブリードマンを中止して,中心静脈留置型経皮的体温調節システムを用いて迅速な復温と体温管理を行った。来院から24時間後に37℃に復温したことを確認して感染創のデブリードマンを行い,その後数回の手術を経て救命することができた。低体温から速やかに復温することができない広範囲熱傷患者に対しては,中心静脈留置型経皮的体温調節システムを用いて直接血液を加温して復温させることが有効な治療手段となりうる。
ABSTRACT The new coronavirus disease (COVID–19) causes gastrointestinal symptoms as well as respiratory symptoms. We report a case of massive refractory diarrhea from the perspective of gut microbiota. A 60–year–old man was transferred with dyspnea. He was diagnosed as having COVID–19 and was intubated on mechanical ventilation with extracorporeal membrane oxygenation. He was administered anti–viral drug therapy and antibiotics. He suffered from diarrhea from day 12 and produced a maximum of about 6,384mL/day of watery diarrhea on day 21. He required massive transfusion and catecholamines for circulatory support. Adsorbents, pectin–containing oligomeric formulas and synbiotics were administered, which decreased the amounts of diarrhea. After day 30, the amount of diarrhea decreased to less than 1,000mL/day. Fecal metagenomic analysis showed the proportions of Enterococcus and Staphylococcus in the phylum Firmicutes were the most dominate at the genus level. The proportion of Bacteroidetes was less than 1%, and the gut microbiota had dramatically changed. Thereafter, his diarrhea decreased to occasional instances, and he was transferred to another ward on day 104. Therapy for intestinal complications might be important in treating COVID–19. Intestinal therapy such as adsorbents might be effective in patients with massive diarrhea.
要旨【目的】大阪大学医学部附属病院(以下,阪大病院)では,急性肝不全(acute liver failure: ALF)に対して救急医を含む診療チーム[肝炎ワーキンググループ(以下,WG)]による診療を行っており,WGにおける救急医の役割と今後の課題を明らかにすることを目的とした。【対象】WGが診療したALF(疑いを含む)165症例について,後方視的に検討を行った。【結果】165症例のうち95症例を阪大病院に収容し,うち,83症例が高度救命救急センター(以下,救命C)に入院となった。非昏睡型ALF 28症例,昏睡型ALF 48症例,その他19症例であり,それぞれの救命率は,89.2%,64.6%,42.1%であった。非昏睡型ALFに生体肝移植が1例,脳死肝移植が2例実施され,いずれも救命された。昏睡型ALFに対しては29症例に肝移植が実施(生体24症例,脳死5症例)され,21症例が救命された。生体肝移植が行われた24症例は全例が救命Cに入院しており,その移植までのICU管理実施期間の中央値は4日間(IQR:2–5.5)であった。【結語】WGは集中治療と並行して肝移植の適応評価と準備を行い,迅速に移植医療への移行が可能となっていた。このWG内で救急医は集中治療の適応と実践において中心的な役割を果たしていた。救急医を含むWGによるチーム医療はALF患者の予後の改善に寄与すると考える。
要旨腸管が多臓器不全を引き起こす“motor”である,という仮説は30年程前から提唱されてきた。腸管は生体内にありながら生体外と接し,常に病原菌にさらされている。腸管には生体のリンパ球のおよそ80%が存在し,常に腸管内容物を監視し,免疫寛容と異物排除の両面の役割を担っている。重症病態では腸管上皮細胞のアポトーシスの進行,タイトジャンクションの脆弱化,粘液の減少などにより腸管のバリア機能が崩壊する。さらに腸内細菌叢は多様性を失い,常在細菌叢は消失して病原微生物が異常増殖する。この微生物叢の変化はdysbiosisと呼ばれる。これらの病原菌,または毒素は崩壊したバリアを超え,生体の全身状態にも様々な影響を及ぼす。近年,メタゲノム解析技術の進歩に伴い,腸内細菌叢を含む腸内微小環境に注目が集まり,dysbiosisが生体に及ぼす影響が明らかになりつつある。腸内微生物環境がヒトの健康に与える影響は大きく,微生物叢と生体との間のホメオスタシスの破綻が各種病態を引き起こす。集中治療領域では急性肺障害,急性腎障害,肝機能障害,不穏などとの関連性が指摘されるが,現在のところdysbiosisに対する標準治療は存在しない。本総説では,高度侵襲による腸管と腸内微小生態系の破綻のメカニズムとそれが生体に及ぼす影響,さらに現行の治療法とその限界を概説し,腸管および腸内微小生態系を“積極的に”保護する治療戦略をまとめる。