横行結腸癌の手術は上腸間膜動脈(SMA),上腸間膜静脈(SMV)の血管分岐に変異が多く,郭清範囲の決定に苦慮することも多い.また,膵臓,十二指腸,胃間膜などと接しており,剝離・授動の難易度が高い.さらに,腫瘍の局在によってD3 郭清において処理する中枢側血管が異なり,特に脾彎曲寄りの横行結腸癌では副中結腸動脈(aMCA)の存在に注意するべきである.また,aMCA の郭清手技も難易度が高いと考えられる.近年,体外式や腹腔鏡での近赤外光観察装置の普及によりインドシアニングリーン(ICG)蛍光法が,乳癌のセンチネルリンパ節の同定,脳神経外科の動脈瘤の評価,胆囊管の同定,肝細胞癌の同定,腸管の血流評価など,幅広く臨床応用されるようになってきた1).大腸癌手術に対しても,ICG 蛍光法は,吻合部腸管の血流評価や結腸癌に対するリンパ流評価などに臨床応用されている2~4).リンパ流が複雑な横行結腸で効果的なリンパ節郭清を行うために,横行結腸のリンパ流に対する理解を深めることは非常に有用である.次に,aMCA は約1/3 の症例に存在し,中結腸動脈(MCA)根部より中枢側のSMA から分岐する脾彎曲部に向かって走行する動脈である.臨床的には十二指腸空腸曲の左側から膵の下縁を通過し,脾彎曲へ向かって走行する動脈である.脾彎曲寄りの横行結腸癌に対するaMCA の郭清においては,SMA を腹側からアプローチするmesenteric approach よりも,左側からアプローチする左側アプローチのほうが郭清操作を施行しやすい.本稿では,術中ICG 蛍光法を利用した腹腔鏡下横行結腸癌手術の方法と,aMCA 郭清に対する左側アプローチの手術手技を概説する.
結腸右半切除は上行結腸癌および右側横行結腸癌に対し行う術式である.ただ中枢側のリンパ節郭清範囲に関してはいまだ議論のあるところであるが,われわれは全結腸間膜切除(complete mesocolic excision:CME)と中枢側高位結紮(central vascularligation:CVL)の概念をもとにリンパ節郭清を行っている.上行結腸癌に対しては,胃結腸静脈幹(gastrocolic trunk:GCT)周囲のリンパ節郭清に重点をおいて行っている.また,中結腸動脈(MCA)領域は,MCA は右枝のみを切離しているがsurgicaltrunk の左縁を中枢側のリンパ節郭清ラインとし,MCA より頭側の上腸間膜静脈(superior mesenteric vein:SMV)前面のリンパ節郭清にも重点をおいて郭清している.右側横行結腸癌ではMCA 根部領域の郭清を重視しているため,回結腸動静脈切離後,surgical trunk 左縁からリンパ節郭清ラインを左側にとり,MCA の根部前面のリンパ節郭清だけでなくMCA 背側のリンパ節郭清にも重点をおいてリンパ節郭清を行っている.
再発大腸癌の治療の中で,長期生存がもっとも期待できるのは転移巣の完全切除であり,近年は腹腔内再発病変に対するre-do 手術も腹腔鏡手術で行われるようになってきた.しかし,再発病変のre-do 手術は,初回手術による剝離層の消失や高度の癒着のため手術難易度が格段に高くなる.特に直腸癌局所再発の手術では切除マージンを得るために拡大手術となり,術後合併症も多くなるため慎重なマネジメントが必要となる.当院におけるre-do 手術の工夫・治療成績を示す.
◎過大肝切除後や過小グラフト肝移植の術後感染症治療において,感染源が不明な敗血症はしばしば経験することであり,そのなかでも,bacterial translocation(BT)は無視できない合併症のひとつである.その病態は,門脈圧亢進による腸管うっ血に起因する腸管粘膜障害・透過性亢進に基づいて生じると考えられている.BT の臨床症状はけっして特異的なものではなく,確定診断も簡便ではない.そのため,複数の方法で総合的に診断する必要がある.対策としては経腸栄養,胆汁外瘻時の胆汁返還,門脈圧調節などを行ってBT 発症を予防することが肝要と考えられ,つねに最新の知見に精通しておく必要がある.