縦隔に発生した巨大リンパ管腫(Lymphangioma)の1例を経験した.症例は33歳女性.心タンポナーデ,多発性肝嚢胞,脳動静脈奇形など多彩な既往歴を有していた.胸部異常陰影を指摘され当科紹介となった.画像検査上,腫瘍は増大傾向を示し,前縦隔を中心に上行大動脈,肺動脈などに広範囲に接する腫瘤であり,不均一な造影効果も認めた.生検を行うも診断が得られず,開胸手術による腫瘍摘出術を行った.病理組織診断は海綿状リンパ管腫であった.成人の縦隔リンパ管腫は極めて稀な疾患であり,術前に診断を確定させることは極めて困難であると考えられる.
症例は29歳, 男性. トラック運転中に居眠りをして大型トラックに追突, ハンドルで前胸部を強打した. 近医に搬送され気管分岐部裂傷の診断を得て, 当科に紹介された.気管支鏡検査上, 気管分岐部竜骨の左右主気管支接合部が損傷し直径約8mmの裂孔が認められた.受傷約24時間後に手術を開始.竜骨の損傷が比較的広範なため, 明らかな損傷部のみのdebridementと単純縫合閉鎖では術後縫合不全や肉芽性狭窄の危険性が高いと考え, 気管分岐部を切除しMontage型再建術を行った.術後, 気管・気管支吻合部合併症をきたすことなく良好に経過し第29病日に退院した.気管分岐部損傷に対する分岐部切除再建術の報告はこれまでないが, 竜骨の広範な破壊を伴う症例に対しては, 積極的にこの術式を考慮してよいと考える.
症例は63歳, 女性.動悸の増悪を主訴に近医を受診し, 心エコーにて縦隔腫瘍を指摘された.精査, 加療目的に当科紹介となった.確定診断はつかず, 胸腔鏡補助下に小開胸を置き腫瘍を摘出した.病理組織学的所見ではN/C比大の中型でやや大小不同を示す紡錘形の腫瘍細胞が束をなして錯走増生する像が観察された.また標本の一部で食道筋層と腫瘍が連続している部位が存在した.更に免疫染色の結果と総合して食道筋層発生のgastrointestinal stromal tumor (GIST), uncommitted typeとの診断を得た.GISTは筋, 神経への分化度の相違から4つの範疇に分類されるが, その中でも筋, 神経どちらへも分化を示さないuncommittedtypeは狭義のGISTとされ, 悪性であることが多い.発生頻度は稀であるが縦隔腫瘍では鑑別診断の一つとして念頭に置く必要がある.
局所進展型非小細胞肺癌症例4例に対し, シスプラチン (CDDP) +ビノレルビン (VNB) による術前化学療法を2~3コース施行し, PR2例, MR2例の臨床的効果を得た.手術適応ありと評価された3例に対し手術を施行し, Ef2 2例, Ef3 1例の組織学的効果を得た.術前化学療法の副作用として, 全例にGrade 3の白血球減少を認めたがG-CSF製剤の使用により速やかに改善した.輸血を必要とした血色素量減少を認めたのは1例であった.また放射線照射を加えた3コース目を実施した症例ではGrade 3の悪心・嘔吐を認めたが, CDDP+VNBによる術前化学療法の毒性は概ね許容範囲内であった.今後更に症例を重ね, 有用性を検討していきたい.
Three men age: 39–51 years (mean: 43.3 years) with T4N0 lung cancer infiltrating the distal aortic arch underwent combined resection of the left upper lobe, distal aortic arch, and left subclavian artery using partial extracorponeal circulation. Selective cerebral perfusion was used in 2. One underwent induction therapy (CDDP+VP-16×2+radiation 30 Gy), and all underwent adjuvant therapy. No postoperative complications or postoperative death occurred. Average ICU stay was 2.3 days. All patients are alive without local recurrence. Two were disease-free 37 and 26 months after surgery, and 1 had adrenal gland metastasis 8 months after surgery. Extended resection of the aortic arch in lung cancer is thus feasible and worthwhile in patients with T4N0 non-small-cell lung cancer.
症例は76才女性, 主訴は労作時呼吸困難2年前より胸部異常陰影を指摘されていたが, 症状が軽度のため放置していた.数ヵ月前より症状が増悪したため来院した、精査の結果横行結腸, 大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアと診断した.一般的には, 呼吸機能の低下した横隔膜ヘルニアに対しては開胸術による呼吸機能の低下を避けるために, 開腹経路による根治術が行われることが多い.しかし今回我々は, ヘルニア嚢による圧迫により無気肺が認められること, 胸腔内に癒着の可能性があることから開胸経路による手術を施行した.術後呼吸機能は低下せず, むしろ著明に改善したことより, Morgagni 孔ヘルニアの術式として, 開胸術が, 必ずしも呼吸機能の低下を来すわけではなく胸腔内での癒着や, 無気肺などが疑われる症例に対しては積極的に開胸経路による手術を施行しても良いと考え報告した.
症例は49歳女性, 呼吸困難感を主訴として受診した.呼吸機能検査では中枢閉塞性パターンを認め, 画像診断, 気管支鏡検査などから気管腫瘍と診断した.本症例に対し1993年5月12日に手術を施行した.腫瘍は右迷走神経と連絡していた.食道壁とは容易に剥離できたが, 気管膜様部とは強固に癒着していた.このため, 気管膜様部に, 長さ約2.5cmの欠損を生じた.我々は食道壁と気管を縫着する食道壁気管形成術を用いた.術翌日には抜管し, 合併症を起こさず2年4カ月経過した.本術式は気管膜様部腫瘍に対し手術侵襲を少なくできる良い術式であると考えられた.
早期肺癌および境界病変において喀痰中に出現する境界領域の異型細胞の特徴を明らかにし, さらに胸部X線無所見肺癌の喀痰像を病変の深達度別に検討することにより, 深達度推定が可能か否かを検討する目的で, 喀痰細胞像を病変の深達度別に検討し, 以下の結論を得た.(1) 境界病変と上皮内癌では, 細胞面積, 核面積ともに浸潤例より有意に小さく, 境界病変では核は有意に円に近かった.(2) 癌と断定できない所見を呈する場合でも, 多核細胞の出現や明るく輝くレモンイエローの染色性を示す細胞の出現, さらには全体としての多様性から, 要精査例を選別し, 上皮内癌を含む早期病変を発見することができた.(3) 病変の深達度が増すにつれ, 核形不整の程度が増し, 粗顆粒状のクロマチンパターンを示すものも増えていた.(4) これらの所見を総合した喀痰細胞診判定は, その各症例の深達度との関連から臨床的に以下の意義を有していた.すなわち, Class IIIとした症例には境界病変もしくは上皮内癌例が多く, Class IVとした症例には胸部X線無所見肺癌が大部分を占め, Class Vとした症例には胸部X線有所見肺癌または壁外浸潤の非早期癌が大部分を占めていた.このように喀痰細胞診によりほぼ胸部X線無所見肺癌であることは推定可能である一方で, さらに詳細な深達度の推定までは困難であった.
年1回の肺癌集検において, X線写真による発見肺癌199例の特徴を明らかにし, その経年的推移および生存率を検討した. 集検を繰り返すことにより,(1) 3回目以降のI期・II期例の減少,(2) 発見年度に新しく腫瘍陰影が出現した症例の増加,(3) 切除率の増加を認めた. 切除例137例の5生率65%は, 非切除例62例の5生率16%に比較し有意に良好であった. 腺癌96例の5生率63%は, 扁平上皮癌77例の5生率32%, 大細胞癌15例の4生率30%, 小細胞癌8例の3生率37%と比較し有意に良好であった. tumordoublingtimeが長い症例程, 生存率が良好であった.
昭和57年~62年の6年間に延べ1,088,009名が肺癌集団検診を受診し, 398例の原発性肺癌が発見された.胸部X線写真読影により291例が, また, 高危険群 (50歳以上喫煙指数600以上) の喀淡細胞診により131例が発見された。全発見肺癌398例中278例を切除した (切除率69.8%).術後病理病期0期例と1期例の合計は全発見肺癌の48.2%を占めた.
From April, 1982 to September, 1987, 83 patients with roentgenographically occult squamous cell carcinoma of the lung were discovered by mass screening and in our outpatient clinic. The bronchial trees were cut serially into 2-mm-thick blocks from the edge of the specimen to the ends of all the sub-subsegmental bronchi. The length of longitudinal extension was computed from the product of the thickness in mm of one serial block and number of consecutive blocks which included carcinoma from the most proximal to the most distal block. The distance from the margin of resection to the proximal end of extension was determined by the number of uninvolved blocks.In 72 of the 83 patients the carcinoma was confined within the bronchial wall and in 11 there was extrabronchial invasion. In 51 patients the tumor was located in a major bronchus and in 21 in a subsegmental or sub-subsegmental bronchus. Squamous cell carcinoma of the lung which is confined within a bronchial wall in any part of the bronchus without nodal involvement should be defined as early bronchogenic squamous cell carcinoma. There were no metastases to lymph nodes in the 62 patients in which the length of longitudinal extension was less than 20 mm. The margin of resection was positive for carcinoma in only one patient. The distance from the margin to the proximal end was 2 mm in 2 patients, ranged from 2 to 4 mm in 18 and was more than 4 mm in the remaining 62. To prevent the margin from being positive for carcinoma, it is advisable that the distance be at least 2 mm determined histologically. It is necessary to examine frozen sections and/or imprint specimens of the margin during operation. The desirable line of resection could be drawn at a distance of more than 1 ring of the intact mucosa from the proximal end of cancer extension as judged by bronchoscopy.
臨床的悪性度別に擦過細胞形態の定量的解析を行い, 擦過細胞診上の予後推定因子を検討した、臨床的悪性度は, I期腺癌の予後と腫瘍陰影の増大速度で評価した.I期腺癌の絶対的治癒切除例中, 術後5年未満に癌死した10例を予後不良群, 術後5年以上の生存が確認された24例を予後良好群とした. 次に, 肺癌集検の胸部間接写真で発見し切除した末棺型腺癌のうち, 過去の間接写真にも腫瘍陰影が存在した20例を陰影増大速度小の群, 以前に腫瘍陰影は存在しなかった8例を陰影増大速度大の群とした. 予後不良群と陰影増大速度大の群を合わせたものを臨床的悪性度大の群, 予後良好群と陰影増大速度小の群を合わせたものを臨床的悪性度小の群とした。擦過細胞の,(1) 核小体数,(2) 核小体数の変動係数,(3) 核面積,(4) 核の大小不同性,(5) 核径,(6) 核円形度,(7) N/C比を画像解析装置で定量的に計測し, 両群で比較検討した.その結果, 臨床的悪性度大の群の擦過細胞像では, 核1個あたりの核小体数が多く (p<0.05), 核は正円形に近く (P<0.05), N/C比が大であった (P<0.001). 肺末梢型腺癌の擦過細胞像において核小体数, 核円形度, N/c比は予後推定因子となりうると考えられた.
気管支鏡下に採取した肺癌細胞の培養を試みた.カブ付き気管内チューブまたは抗真菌剤をもちいることにより細菌真菌の混入増殖を防止しえた.生検と擦過を併用して細胞を採取した11例、及び擦過によって細胞を採取した14例のうち各々8例に癌細胞の生着ないし増殖がみられた.中心型肺癌14例中10例に、また末梢型肺癌の3例では1例に癌細胞の生着又は増殖が認められた。特に気管支鏡可視範囲内に腫瘍が直接露出している小細胞癌は本法の最も良い適応と考えられた.また, 気管支鏡下に採取した正常気道上皮細胞の培養も可能であった.組織片から上皮細胞が伸展し活発な線毛運動が観察された.
X線写真による肺癌集検をより効果的にするため, 昭和60年度の宮城方式におけるX線写真による成績を分析した.スクリーニングにおける間接写真経年ファイルの導入は, 精度向上と効率化を可能としえた.受診者223796名より56例の肺癌を発見した.切除を行った37例のうち26例がStage Iaであった.腫瘤状陰影を呈した44例の腫瘍陰影径の平均は29mmであり, 30mm以下の症例は30例 (68%) であった.肺癌集検歴のある症例40例中28例に過去の集検写真で腫瘍陰影を認めた.過去の集検写真に腫瘍陰影を認める症例は, 認めない症例に比較し, 腫瘍陰影径が小さく病期が良好な傾向があった.
胸部X線無所見で気管支鏡無所見のTX肺癌例のうち, 病変が気管支鏡の可視範囲外に存在した5例 (扁平上皮癌4例, 腺癌1例) を対象として局在部位同定に至る過程を分析した.部位別に採取した細胞診の標本上に出現した癌を疑いうる異型を有する単個細胞数を計数し, またシート状に出現してくる異型細胞集団は前記の細胞数のなかには加えず細胞集団の数として計数比較検討した. その結果病巣を擦過した場合には多数の癌細胞が採取され, なおかつ主としてライトグリーン好性に染色される結合性の強いシート状細胞集団が多数出現していた. このライトグリーン好性で結合性の強い集団の存在が局在部位を同定するうえでの強い根拠となり得た. 全体を通してみてみると癌細胞が全く採取されないことがあり, また部位別に採取した吸引物中の癌細胞の分布が必ずしも常に病巣の存在部位と一致するとは限らない. また多数の検体を一度に扱うことによる検体の取り違えや喀痰の気管支内移動に伴う部位診断の誤りの可能性もあり, 十分注意する必要がある. したがって局在部位同定のためには, 擦過細胞診によって前記のように多数の異型細胞が結合性の強いシート状集団で, 同一気管支から繰り返し2回以上採取されるまで根気強く検査を繰り返すことが必要である.
胸部X線写真無所見肺癌の肺切除40例について癌の発生部位と気管支壁深達度を検討した.2例の多発癌を含む計42カ所の病変はすべて扁平上皮癌で, 右肺に20, 左肺に22カ所認められた. 病変の局在は分岐次数別では0次に3, 1次3, 1-II次4, II次17, III次9, IV次6カ所であった. 気管支壁内への癌の深達度を組織学的に6段階に分けると, 0度 (上皮内癌) が6, 1度 (基底膜内浸潤) 4, 2度 (粘膜内浸潤) 7, 3度 (平滑筋層外浸潤) 17, 4度 (気管支軟骨外浸潤) 5, 5度 (気管支壁外浸潤) 3カ所であった.
喀痰細胞診により発見し切除した, 気管支原発早期扁平上皮癌25例の喀痰細胞所見について検討した. 全例胸部X線写真上無所見で, 4例は上皮内癌, 21例は浸潤が気管支壁内に限局していた.浸潤の著明な11例, および喀痰細胞診疑陽性で扁平上皮癌の発見されない境界症例12例と所見を対比し, 計量可能な所見については数量的に扱った.その結果, 早期扁平上皮癌においては, 異様な形の扁平上皮癌細胞は少なく, 細胞異型は概して軽度で, 扁平上皮化生細胞と鑑別困難な異型細胞も少なからず出現していた. 全体として, 小型類円型のオレンジGに好染するN/C比のやや高いものから, 多辺形でやや大型のオレンジGに淡染するN/C比の低いものまで, 角化した異型細胞が優勢で, ライトグリーン好性のいわゆる旁基底型細胞は少なかった. また, 多核細胞の出現が目立った.これらの細胞所見に影響を与える因子として, 表層へ向かっての細胞の分化・成熟傾向と, 表面における一部の細胞の変性・膨化・扁平化, および異常な細胞分裂が重要であると考えた.
気管支鏡下に粘膜をブラシで擦過したのち, 日をあらため再度擦過して得た標本上に出現した異型細胞の所見を検討した.これらは気管支上皮の機械的傷害に起因する組織修復細胞と考えられ, ときには悪性細胞との慎重な鑑別を要した.擦過後の細胞所見は経時的に変化した.1日目に観察する機会はなかったが, 2日目には核分裂像が散見され, 異型高度で平面的な細胞集塊が多数出現した.核は大型で類円形, クロマチンは増量し, 核小体は巨大かつ不整形で数個あった.細胞質は好塩基性で扁平に拡がり小空胞状であった.3日目は, 2日目とほぼ同様な所見であったが, 核分裂像はなかった.4, 5日目は, 異型細胞の数が少なくなり, 異型も軽度であった.線毛のみられない円柱上皮細胞が多数あり, 一部に杯細胞や扁平上皮化生細胞への分化を示す細胞集団が混在した.7日目はほぼ正常な所見に復した.これらの所見は, 上皮の傷害後, 早期に細胞の分裂と, それに伴う活発な代謝があり, 未分化な異型に富む上皮となり, その後正常な上皮に分化し再編成されていくことを示すと考えられた.ほかに, 気道の慢性刺激によると考えられる類似の異型細胞が出現した症例があり, 臨床上注意が必要と考えられた.
We have treated the patients with the airway stenosis or obstruction using YAG laser instrument. In this report, the effectiveness and limitation of endoscopic YAG laser treatment for the such patients were evaluated.
液状検体の細胞診602件に対してサコマノ氏集細胞法を応用した。採取された検体は, 50%エタノール・2%カーボワックス混合液により直ちに固定されるため, 細胞変性はごくわずかで, 細胞の軽度の収縮はあるが, 細胞の微細構造の観察は容易であつた.また, 固定された細胞の比重は, 1.24から1.28の間で, きわめて高比重となるため, 沈降速度が著しく大となり, 髄液など細胞が少数の検体でも, 軽い遠心操作で十分な沈渣を得ることができた.さらに, 乾燥した未染標本には適宣特殊染色を行うことができ, 容器に注入した検体を移し替えずに, 合理的な標本処理を行うことが可能な変法を考案し, 602件の診断成績は, 満足すべきものであった.