血液透析患者における皮膚掻痒症は患者のQOL(quality of life)を低下させる合併症の一つであり,現在のところ主として抗ヒスタミン薬が皮膚掻痒症の治療に用いられている.今回,われわれは塩酸フェキソフェナジンを血液透析患者に投与し,透析患者の皮膚掻痒症に対する有効性を自覚症状に加えてQOLならびに睡眠の面からも併せて検討した.VAS(visual analogue scale)スコアで40以上の掻痒を訴える80例の維持血液透析患者が登録され,77例を解析対象とした.塩酸フェキソフェナジン60 mgを1日2回朝夕食後8週間経口投与し,自覚症状,QOL,睡眠障害ならびに日中の眠気の評価を2,4,8週間後に実施した.かゆみの自覚症状はVASを用いて評価し,QOLはSkindex 29を用いて評価した.塩酸フェキソフェナジンの投与開始2週間後には,かゆみの強さ,範囲,頻度のいずれも投与開始前に比して有意に改善軽快し(p<0.001),8週まで連続して有意な改善を認めた.また,Skindex 29のいずれのスコアも投与開始後には投与開始前に比して有意に低下し(p<0.001),QOLの改善がみられた.夜間の睡眠障害は塩酸フェキソフェナジンの投与により有意に改善され(p<0.001),その結果,日中の眠気も有意に改善された(p<0.001).また重篤な有害事象は認められなかった.以上の結果より塩酸フェキソフェナジンは2週間の投与でも掻痒症状・QOLおよび睡眠障害の有意な改善効果を認め,その効果は継続投与でさらに8週まで改善がみられた.塩酸フェキソフェナジンは安全性も高く,血液透析患者の皮膚掻痒症に有用であることが示唆された.
血中ホモシステイン (Hcy) レベル高値は, 血栓症や動脈硬化の危険因子の一つであることが最近明らかにされた. 腎不全患者にみられる高Hcy血症の原因は, 腎不全による排泄障害と代謝障害がその原因として考えられている. 慢性血液透析 (HD) 患者のHcyレベルを低下させるには, ビタミンB6, ビタミンB12および葉酸の高用量, 長期間投与が必要であるといわれている. 本研究では, そのうち最も効果の著明な葉酸について, 投与方法と, 至適量の検討を行った. 対象はHD患者180名で, そのうち血中Hcyレベルが35nmol/ml以上の患者を, 薬剤, 投与方法の違いにより, 無作為にいくつかの群に分けて検討した. 葉酸5mgを連日投与4週間, 透析日のみに投与4週間, および, 透析日のみに4週間投与した後, 週の最終透析日の後にのみ, さらに24週間投与した群に分けた. 結果, 連日投与群, および, 各透析日後にのみ投与した群では, 血中葉酸レベルは, それぞれ正常値上限の60倍および, 7倍に上昇したが, Hcyレベルの低下はいずれもほぼ等しく, 約57%であった. 予め, 透析日のみに投与し, その後, 24週間, 週に1回のみ投与し, 中止後, さらに16週間経過を観察した群の解析からは, 血中葉酸レベルを正常値上限の2倍から4倍くらいに維持すれば, 総Hcyレベルを低値に維持することが可能であるが, 2倍以下になると再上昇することが示された. 透析によりHcyの約40%が除去されることを考慮すると, 60nmol/ml以下の高Hcy血症の患者では, 上記のような最小量の葉酸投与で, 葉酸レベルを正常の2倍から4倍に維持すれば, 総Hcyレベルを正常値以内に保つことが可能であることが示唆された.
透析時残血発生機序の検討の一つとして再生セルロース膜に吸着されるマトリックス蛋白質の動態および血液凝固反応の関与を検討した. 血液凝固反応に関しては血液凝固亢進の分子マーカーであるTAT複合体の変化を検討した. 合併症のない慢性腎炎より腎不全へ移行した安定した血液透析患者を対象とした. そのうち透析時残血の存する群 (残血群n=4), 残血のない群 (非残血群n=5) に分けてマトリックス蛋白質であるFbg, VNの透析時血漿中濃度の推移および透析器膜よりの50mM Tris HCl-1M NaCl, pH 7.4による溶出分画中の濃度, 分子パターンを検討した. TAT濃度に両群間で差はなくまた正常範囲内であり残血群でも血液凝固反応が進行している所見はない. このことより残血は血小板の膜への接着を中心とする一次止血機構に似た反応が推定された. マトリックス蛋白質であるFbgの血漿中濃度の推移は両群間で差は認められなかった. しかしVNの血漿中濃度の推移は残血群でより高値の傾向を示した. Immunoblotting法による分子パターンは大きな差は認められなかった. しかしながら透析器膜の1M NaCl-Tris buffered saline (TBS) による溶出分画中の蛋白質には他のマトリックス蛋白質に比しVNが多く含まれていた. またそのimmunoblotting法による分子パターンではVN-multimerが残血群でより多く認められた. この溶出分画中にはFibrinおよびFibrin-bound FNは認められなかったことから, このVN-multimerはFibrin由来とは考えられず, 従って残血の結果生じたものではなく, むしろ残血発生の原因の一つと考えられた. これらの結果より透析時残血発生機序の一つとしてVN-multlmerが強く関与していることが推定された.